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廃墟

【RP】贄神は星を見る

 夜空が見たい。
 思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
 格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
 もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
 太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。

「……星。月。……空、広い」

 人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
 広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。


・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎

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 だって、空が見られる。木々に触れられる。太陽の温もりを感じて、風を感じて、好きな時に好きなだけ眠れて、何をするのも自由で自己責任だ。
 何より。どうしようもなく邪魔で仕方がなかったこの体質が随分と弱まっただけでなく、誰にどう付与するかの指向性が与えられた。これが一番大きい。

「ない。この世界の金銭は、持ってない」

 ふるふると首を横に振って、素直に返す。
 物々交換で今の服を貰った。ぼろ布同然だった服を買ってくれた商人は、多分同情したのだと思う。金銭の類は持っていないから食料を買う訳にもいかないし、そもそもこの世界の食材はよくわからない。
 仕事をするにも、自分には知識も力もないし身元の保証もない。特異点の仕事もまだない。

「特異点だからと、たまに食材や食事をくれる人はいる。他は、採ってる」

 細いと言われても、自分にとってはこれが普通だ。
 淡々と端的に話す中身は、単純に言えばお布施とサバイバルだ。

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