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廃墟
今の状況が以前の環境よりもいいものなんだとしたら、青年の発言は全て本当の事なんだろう。今のこの環境が大分マシなのだと言ってしまう程に。
いくら考えた所で本人に聞かない限りは憶測でしかない。
しかしそこで踏み込めるほどの猪突猛進さと熱意は、生憎と過去に置き去りだ。
考えている間の長い間を取り繕う様に「そうか…」という生返事だけが返された。
「ここ、食い物はあるのか?」
話を食べる事のみに限定して切り返す。
普段は何を食べているのか、言葉にそういうニュアンスも含めて問い掛けた。
自分の翼に触れるあまりにも細すぎる手首を視界に捉え、何気なしにその手首の横に自分の手首を近づけて。
「…細すぎる」
僅か眉間に、皺が寄る。
いくら考えた所で本人に聞かない限りは憶測でしかない。
しかしそこで踏み込めるほどの猪突猛進さと熱意は、生憎と過去に置き去りだ。
考えている間の長い間を取り繕う様に「そうか…」という生返事だけが返された。
「ここ、食い物はあるのか?」
話を食べる事のみに限定して切り返す。
普段は何を食べているのか、言葉にそういうニュアンスも含めて問い掛けた。
自分の翼に触れるあまりにも細すぎる手首を視界に捉え、何気なしにその手首の横に自分の手首を近づけて。
「…細すぎる」
僅か眉間に、皺が寄る。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎