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廃墟
相手がどういう経緯でこの空へ、翼へ憧れを抱いたのかは知らない。無理に聞く事でもない。
"見る"事や"聴く"事は、狩猟の為の五感を鍛える一環で人よりも身につけている自信はある。
けれど会って数時間とも経たない相手だ、そこまで踏み込むのも野暮というものだろう。
自分はどうにも、世話焼きの癖が身についていていけない。
それはそうと…随分と熱心に堪能されている。有翼種というものはそんなに珍しかったのだろうか。
例えば目の前の青年の元の世界、そこには翼のある動物は居なかったのか。
――それとも…
思考を巡らせていると、続いた言葉に引っかかりを感じる。
"神官"、"信者"、そして言葉の端々に残る青年の不満に似た何か。先程は不平不満を出していない事から随分と図太いのだと思ったが、今の青年の言葉は裏を返せば「前は好きな事を出来ない、落ち着けない環境にいた」事にも繋がる。
もしそうであるなら、図太い、というのは不正解だ。
"見る"事や"聴く"事は、狩猟の為の五感を鍛える一環で人よりも身につけている自信はある。
けれど会って数時間とも経たない相手だ、そこまで踏み込むのも野暮というものだろう。
自分はどうにも、世話焼きの癖が身についていていけない。
それはそうと…随分と熱心に堪能されている。有翼種というものはそんなに珍しかったのだろうか。
例えば目の前の青年の元の世界、そこには翼のある動物は居なかったのか。
――それとも…
思考を巡らせていると、続いた言葉に引っかかりを感じる。
"神官"、"信者"、そして言葉の端々に残る青年の不満に似た何か。先程は不平不満を出していない事から随分と図太いのだと思ったが、今の青年の言葉は裏を返せば「前は好きな事を出来ない、落ち着けない環境にいた」事にも繋がる。
もしそうであるなら、図太い、というのは不正解だ。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎