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廃墟
なら良かった、と声にほんのわずかな安堵を見せ、反面、表情筋が仕事を放棄した表情はあまり変わってくれない。けれど、仕草や態度には出ている分、相手のように聡い者ならなんとなく雰囲気を察することは出来るだろう。
痛みや傷に無頓着になっている上、本人はこれでも好きなことが好きなだけ出来る現状にじんわりとはしゃいでいる。ゆえに、危険もあまり気にしない。
結果、恐らく、登った時のことを聞いても呆れるような話しか出て来ない。
「いぬわし。見たこと、ない。どっちも。……!……わ」
言い慣れぬように繰り返し、この世界の図書館で調べたらその鳥が分かるだろうかと考える。ワシ、と言うから、きっと猛禽類だ。
高さも飛行時間も気になると言いながら、不意に広げられた翼に一瞬だけ分かりやすく瞳を見張った。
いいのか、と聞き返すことすらしなかった。思わず、といった様子で相手の翼へ宝玉で出来た爪を持った手を伸ばす。もふり。
痛みや傷に無頓着になっている上、本人はこれでも好きなことが好きなだけ出来る現状にじんわりとはしゃいでいる。ゆえに、危険もあまり気にしない。
結果、恐らく、登った時のことを聞いても呆れるような話しか出て来ない。
「いぬわし。見たこと、ない。どっちも。……!……わ」
言い慣れぬように繰り返し、この世界の図書館で調べたらその鳥が分かるだろうかと考える。ワシ、と言うから、きっと猛禽類だ。
高さも飛行時間も気になると言いながら、不意に広げられた翼に一瞬だけ分かりやすく瞳を見張った。
いいのか、と聞き返すことすらしなかった。思わず、といった様子で相手の翼へ宝玉で出来た爪を持った手を伸ばす。もふり。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎