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廃墟
「枝葉は陽射しや雨風を凌ぐ為のものだからな」
星が見えては元も子もないだろう、と軽口を叩く様に。
翼に浴びる視線を感じ取るも気にした様子は無く、幾度か羽ばたきを繰り返しながら樹に近付けば葉に当たらぬように広げた翼を徐々に狭めていく。促された枝へと鉤爪の足を掛けるも大柄な自分が乗ってもびくともしない太い枝に、この樹の頑丈さが伺い知れた。
足場を落ち着けた事によって相手をしっかりと見ることができるようになると、よりその白さが目につく。そしてそれと合わせて、身体の細さに僅か目を見開いた。
「……よく、ここまで登ってこれたな」
いったい、この身体のどこからそんな力が出てくるのか。
星が見えては元も子もないだろう、と軽口を叩く様に。
翼に浴びる視線を感じ取るも気にした様子は無く、幾度か羽ばたきを繰り返しながら樹に近付けば葉に当たらぬように広げた翼を徐々に狭めていく。促された枝へと鉤爪の足を掛けるも大柄な自分が乗ってもびくともしない太い枝に、この樹の頑丈さが伺い知れた。
足場を落ち着けた事によって相手をしっかりと見ることができるようになると、よりその白さが目につく。そしてそれと合わせて、身体の細さに僅か目を見開いた。
「……よく、ここまで登ってこれたな」
いったい、この身体のどこからそんな力が出てくるのか。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎