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シキアの樹

Aug.昼

陽の照りしきる夏の日。
青く澄みわたる空に、恵みの雲は見えず。
時折に吹き抜ける風だけが、僅かな涼を与えてくれる。



穏やかに揺れるシキアは、今日も憩い人を歓迎していた。

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(ありがとう、という小さな声が届くもそれに返されたのは僅かな羽の一振り。翼の端が少しだけ上がったかと思えばすぐにまた草の上へと投げ出される。礼を貰う程の大層な事はしていない、だからこそその言葉は不要だとでも言いたげに)
(シキアの葉が風に揺らされ木の葉の影から偶に差し込む陽射しが心地よく肌を撫でていく。葉のあたる音が話し声の様にも聞こえて、シキアの言葉が聞き取れない自分にも寄り添ってくれるかのようなこの大樹の存在がなんとも心地良い)

流暢に語らぬ事を不快に感じる様な奴は、そもそもこの樹の元には集まらないだろう。

(静かな場を求めるにしろ、偶然迷い込んだにしろ、テンポの良い会話を一番に求めるならば其れ相応に人の出入りの多い所に行くはずだ。そう考えながら言葉にした一言。どちらにしろ、自分が与り知るところでは無いが。そう結論付け緩やかに襲い来る眠気に身を委ねようとした所で不意に思い至る)

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