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Migrateur

《第1章》こもれび

レガド・イルシオン某所、町外れの小高い丘の上。
嘗ては人々の憩いの場所だったのだろう。
石造りの朽ちた東屋には時期を迎えた蔓薔薇が咲き綻んでいる。

生い茂る木々から零れ落ちる陽のひかりを受け乍ら。
ちいさな冒険者は目を細め、待ち人の姿を思い描いていた。

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おきゃくさま:蜻蛉
https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3p002599

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極東には『ニッキあめ』っていうシナモンの飴玉があるんだって。
蜻蛉のせかいにもあるかなあ?
ふしぎだよね。同じ材料でも、お菓子が違うとこんなに味がちがうんだ。

(曰く、ちいさな冒険者はあんまりかかっていない方が好きとの事。まだまだ子供舌であるらしかった)
(尖った耳を褒められれば悪い気はしないのか、えへんと得意げに胸を張り)

えへへ、心配してくれてありがとう。
だいじょうぶ!はやくおとなになりたいなって思うことはあるけど……。
いっぱい友だちと遊んだりしたいし、子どもで居られることを諦めたりもしないから!
僕ってばとっても欲張りで、それにとっても、『わがまま』なんだ。

(『英雄』で、『王子さま』で、『おこさま』)
(二兎を追う者は何とやら、それがどうした三兎全部捕まえてみせる!)
(けれど、不意に)
(鼻先を擽る花の香に。そろりと視界に影がさし――其れが何であるかを理解すれば、)

ひゃ、わわ……!

(ひかりを反射する長い睫毛を間近に見て、触れる額同士に、頬をばら色に染め乍ら)
(其れでも突っぱねる事はせずに、彼女が祈りを捧げる間、ちいさな冒険者は照れに照れていた)

び、びっくりしちゃった。
……うん、うん!こちらこそ、よろこんで!

(傍でちいさく鳴いた黒猫の声に、ふふ、と笑みを零して)
(先に立ち上がったなら、傍のひとを促すように手を差し伸べ)
(なるべく花を踏まないように、軽い足取りで花畑へと足を踏み出した)

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