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『亲一个』

【RP】五百二《〇》

 其処は、〇.〇三平方km未満の土地に、上へ、上へと積み上げられた、まるで砦であった。
 魅入られた者は二度と還って来ないと謂れた其処は正しく最果て。悦びと愛しみの骸。
 崩れ掛けた壁の内側に打ち寄せるのは、人々が吐いた曖昧な嘘と胡乱な愛。要らなくなった凡ゆる言葉の奔流を堰き止めるだけの棺の様。

 嘗ての其処に、法は存在せず、正義は存在せず、在るのは其々が掲げる矜持と身勝手な秩序。
 たった一つのルールは、十四階以上を造ってはいけない事だった。
 何故なら、翼の生えた者以外は空を飛べないと云う事である。そして、自死にぎりぎり足り得ない高さ、其れが十四階だった。或いは、猫であれば無傷であるかも識れないが、人は愚かだから。

 まるで子供がそうする様に、ブロックを積み上げられたかの様な世界には日が差さない。何時もが夜の帳に包まれていて、然して本物の夜が来れば犯罪が横行し、暴力は百の言葉に勝る。
 口にするのも悍ましい薬物が盛んに取引され、男も女も春を売った。其処彼処に舞う名残の紙幣は今は何の意味も持たない紙切れだ。メモ代わりにすら使えやしないだろう。

 ――そんな失われた場所で、彼女は目覚めた。
 
 ――そして満月の夜には、月長石を浸した清らかな水を口に含んで、月にこう尋ねるのだ。

 ――『他喜欢我吗?』だなんて。

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(建物にはパイプが無秩序に伸びていた。まるで、軀の隅々の、末端まで複雑に張り巡らされた血管の様だ。
 けれど、其処を流れる汚水は既にカラカラで、脈打つ事を止めている。
 死んでしまったのだ、全て。人々の生活の欠片を、凡ゆる所に遺して)

んんんんっんっん、んー

(縺れた動脈を辿った果て、不意に夜が晴れた吹き抜け。
 ギィ、ギィ、と云う音と、調子外れな鼻歌が聴こえただろうか。
 やけに野太い物干し竿にロープを結んで、板をぶら下げただけのブランコを漕ぐ姿があった)

んんんんんっんっんー。

(其処にはフェンスも、何も存在しない。手を離すなら先は、『空』が在って。
 そして其の華奢な体躯にも、掛かる重力は等しい)

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