ギルドスレッド
*C'est la vie*
(「…パパ、ここは、なに?」)(いつもどおり、娘と手を繋ぎ、歩いていたある日のこと。不意に問われた彼女の言葉に、男も店を見上げる) …… (中から甘い香りがする。お菓子屋さんかもしれないな、なんて言うと、甘いものが好きな娘は一瞬瞳を輝かせた。けれどすぐに彼女は俯いてしまう。)(おとなしいというか、引っ込み思案というか、我が儘を言わない子だ。男は仄かに苦笑をこぼした。そしておもむろに扉をノックし、ゆっくり開ける。)……失礼、どなたか、いらっしゃいませんか。
(扉を開けると様々で複雑な、けれど不思議と嫌な匂いでは無い空間に沢山の洋菓子がお出迎え。小さな歌声が漏れ聞こえるが店内に人影は無く、開けっ放しの奥の扉の先、緑の庭の方から歌声は聞こえてくる。カウンターと思われる机の上には洋菓子のマスコットで飾られた銀の呼び出しベルがちょこんと置いてある。来店に気付いていないのか呼びかけから少ししても人が来る気配は無い)
(パパ、と娘は少し不安そうに男を見上げる。大丈夫、そう伝えるようにほんの少し、握る手を指先で撫でて) (娘の手を引きカウンターへ。銀のベルは、呼び出し用だろうか。ちりん、と試しにひとつ鳴らしてみせた。)
(ベルの涼やかな音が鳴ると同時に歌が止まり、はぁい。と返事をしながら庭から軽やかな足音と共にお菓子の様に甘やかな色合いを持った少女が顔を覗かせた。)すみません、お待たせしてしまいましたか?
(女が顔を覗かせると同時に、人見知りな娘は大きな父親の陰に隠れる。それからおそるおそるといった風に女の顔を見た。)(男はそんな娘の行動には慣れっこだし、何より男自身もこの幼い娘を庇う癖があったため何事もないように女に顔を向ける。笑顔一つ見せず、眉一つ動かさない。愛想のない男だ。)…こちらこそ、お忙しいところ申し訳ない。こちらの、 (ショーケースに並ぶ菓子に目を向ける。それからまた女を見て)品物は、売り物だろうか。
いえいえ。お菓子は"売り物"では無いですね。(無愛想など気にもせず笑うとカウンターから出て隠れてしまった可愛らしい小さなお客様のためにしゃがみ同じ目線になった。)お菓子は好き?ここ、いっぱいお菓子あるけど、ねぇどのお菓子が好きかしら?果物いっぱいのタルトさん?生クリームたっぷりのケーキさん?あ、それともかわいいマカロンさんかしら? (ムースの様なふんわりとした笑顔と幼げ残る甘やかな言葉で小さなお客様に話しかけた。)
(娘はぱちりと瞳を瞬かせ、戸惑った様子で男を見上げた。)…ヘレンは、何が好きなんだっけ?(男は、その小さな背中を優しく撫でて、幾ばくか柔らかな声音で娘に問いかけた。娘はおずおずと女に向き直り、「………チョコレート、とか、苺、とか…」とたどたどしく告げる。)
チョコレートと苺ね。私も大好きよ!それならこの苺の乗ったチョコレートケーキとかどうかしら?好き?(お返事が嬉しくて喜色を深めショーケースの中の苺の乗ったチョコレートケーキを指し示す。苺だけの洋菓子もチョコレートだけの洋菓子だってあるのに、それを選んだのは彼女が欲張りさんだからなのだろうか。)
(そのケーキを食べたことがないからわからないけれど、チョコレートや苺が使われているのなら多分好きだろう。そういう意味を込めて、少女は小さくこくりと頷く。)
ふふ、じゃあこのケーキにしましょうか!お父さん、で良いんですか?はどうされます?どのお菓子がお好きですか?どれもとっても美味しいんです。あ、甘いの苦手でしたらビターなお菓子もありますよ!(小さなお返事ににっこりと笑うと次は無愛想なお客様だ。娘さんの時と変わらない笑顔でそう訊ねる。)
(娘は小さく、でも驚いたように「え、」と声をもらした。少女が驚くのも無理はない。だって、)…先ほど、貴女は「売り物では無い」、と (言ったはずでは。なのにどうして、いただくような流れになっているのだろう。)
選んだお菓子と一緒に私とお茶でもどうですか?と言う場所なんですよ、お時間が無いのでしたらお菓子差し上げますけれど。差し上げたり食べますし私、お金を取るつもりが無いので"売り物ではない"と言ったんです。(裏の無い笑顔であっさりと言ってしまうとカウンターの向こう側に戻り、先ほどのチョコレートケーキをトレーに乗せてお父さんはどれにします?と再度問いかけた。)
……(微かに眉間の皺が濃くなる。少しばかり考えた素振りののち、男は口を開き) ………、では、そこの生クリームたっぷりのやつを。(冷静な男に対し、ほんとにいいのかな、と戸惑っていた娘は、男の選んだやつを見てまたも瞳をキラキラと煌めかせた。)
はい、こちらですねー。(選ばれたお菓子をトレーに乗せて)それでは、私とお茶をしませんか?(トレーを一度カウンターに置き甘い笑顔で誘う。奥の扉の向こう、見える庭でお茶をするのだろうと何となく予想はつく。)
…貴女がよろしいのでしたら、喜んで。(娘もこくりと小さく頷く。最初の怯えは和らぎ、どことなく興味津々と女を見たり店内を見回したりしていた。)
わぁ…嬉しい!じゃあこちらへどうぞ!(トレーからお皿にお菓子を移し替え、トレーはお盆に変えると二人を迎え店の奥へと導く。視界が広がるとそこには綺麗に整えられたイングリッシュガーデンと白く細身のテーブルと椅子が中央に置かれたお茶会会場があった。彼女はお盆をテーブルに置くと小さな子でも座れる専用の椅子を庭の隅から持って来る。)どうぞ、お座りくださいな。
…ありがとう、レディ。(娘も「ありがとう、」と礼を述べる。娘のための椅子を軽く引き、座らせると、自身も着席し) …私はリェルフ。この子はヘレン、という。…貴女の名前を伺ってもよろしいだろうか、レディ?
(紅茶を二人の前に置き、自分も苺たっぷりのフルーツタルトを持ってくると二人の前の椅子に座る。)リェルフさんとヘレンちゃんですね、私はパメラです。さぁどうぞ召し上がれ。(ヘレンちゃんに紅茶熱いかも知れないから気をつけてね、と声をかけながら甘くて優しい笑顔で二人の様子を李色の飴玉の目に映す。)
素敵な名だ。(変わらず表情筋は仕事をしていないが男はそう言った。)(娘ーーヘレンはもう一度お礼を言い、いただきますと挨拶してから、おそるおそるフォークをケーキにそっと差し込んだ。ヘレンがケーキを一口食べるその傍ら、リェルフと名乗った男はヘレンからパメラに視線を向け) …レディ・パメラはいつもこのような催し物を?(リェルフも、いただきますと挨拶してから熱い紅茶に口をつけ)
(二人が口をつけてくれた事に安心すると自分もタルトにフォークを入れてひと欠片口に運ぶと、美味しさに溶ける幸せいっぱいの笑顔を浮かべる。紅茶で口の中をリセットしてから返答を) えぇ、開けてる時は必ず。私、お菓子が大好きで皆さんにもお菓子食べて貰いたいって思っててやってるんですよ。
…成程。(相手の笑顔こそその最大の証拠だろう。菓子への愛がこちらまで伝わってくるようだ。)(一口食べ、飲み込んだらしいヘレンは少し頬を高揚させ、「おいしい」と呟いた。瞳を宝石のように輝かせてパメラを見、「お姉ちゃんが作ったの?」と問いかけ)
美味しい?そうよーお姉ちゃんが作ったのよー。良かったー美味しいって言ってもらえて私、とっても嬉しいわ!(ヘレンちゃんの言葉の嬉しさに綻ぶ笑顔を浮かべてからリェルフさんもお菓子食べてみてくださいね、と笑いかけた。)
(「すごーい…」とヘレンはきらきらとヒーローを見るような眼差しでパメラを見た。そして手元のケーキに視線をうつし、もう一口食べては、美味しいと頬を緩ませる。そんな娘の姿に、微かに、けれどたしかに優しげに目を細ませたリェルフも、ではと促されるまま一口食べ)…ん、(おいしい、と口にし。爽やかでしつこくない生クリームと上品な甘味。たしかにとても美味しい。) これだけの腕なら、菓子作りの世界で名を馳せましょうに。(今からでも遅くないのでは?なんて言ってみて)
お口にあった様で良かったです!あくまでお菓子は食べる専門なんです私。だから普段は色んな洋菓子店の美味しいお菓子を食べ歩いているんですよ。(自分もタルトを口に運び幸せに頬を染める。美味しそうに食べてる様子を見れば食べる専門は本当だと思う。)
(へえ、と相づちを打ちながらケーキを食べ。生クリームを使った菓子も好きな娘に皿を少し寄せてやると、ヘレンは嬉しそうにはにかんで。「はんぶんこ!」と自分のチョコレートケーキが乗った皿を寄せてきた。) ……この庭もとても綺麗だ。貴女が整備を? (嬉しそうにケーキを頬張る娘を横目に尋ね。途中でヘレンの口許に生クリームがついているのを見つければ、仄かに目元を和らげ優しく拭ってやり)
(その様子を微笑ましそうに眺めながらタルトをまた一口。)この庭は大変な時は専門の人にお願いしちゃってますけど……ヘレンちゃん良い子ですねーヘレンちゃんはおいくつなんですか?
そっかぁ8歳かーお姉さんねー。(にこにこと可愛いなぁ、と思いながら自分のタルトのまで手を付けていない部分の苺を見せて、苺さん食べる?と声をかけてみる。)
(ヘレンがおろおろとリェルフを見上げ、彼が せっかくだからいただいておいたら、と答えると、娘はおずおず頷き)(そしてヘレンはパメラを見上げ、「お姉ちゃんはいくつなの?」と問うた。)
んーお姉ちゃん?お姉ちゃんは18歳だよーヘレンちゃんと10歳違いだねー(苺さんをヘレンちゃんにいくつかあげながら笑顔で答える)
(18。まだ十にも達していないヘレンには未知の世界だった。)(ありがとうと、お礼を言って苺を一つ頬張り。貰ったそれを当然のように、半分の数はリェルフのために残した。)(というのをリェルフはわかったから。自分も二人に礼を言って苺を一つ口に放る。…18。その数字を若く感じるのは、己が年を取った証拠だろうか。) …何か、将来の夢、とかあるのか?
夢ですか?(意外な言葉に行儀悪くフォークに唇に乗せたまま考える。余り考えた事が無かった事だ。) うーん、美味しいお菓子をもっといっぱい食べる事、とかもっと色んなお菓子を沢山の人に教えたいとかですかね?あれ、これって夢でいいのかな?
(彼女とは今日会ったばかりだ。だが、今の答えをきいて、『彼女らしい』と感じた。)……ああ。(それも立派な夢だ。どうか彼女の夢が叶うといい。) (それからしばらく。どのくらい話していただろうか。ふと空を見れば、もう日が傾きはじめていた。) (もう帰るの?という娘の視線に軽く頷き。)……レディ・パメラ (名を呼ぶと同時に、貴女の手をそっと片手で取ろうとし)
(楽しいお茶会も綺麗なオレンジの幕が空を覆うとおしまいの合図。不意に呼ばれた自分の名前と、取られた手をそのまま大きなその手に委ね甘やかな笑顔を浮かべ、お別れに気付かないフリ。)何でしょう、リェルフさん。
(パメラのその手の中に落とされたのは数枚の金貨。そのまま彼女の指を優しく畳み、もう片方の手をその上から重ねて) …娘の笑顔と、何より貴女のような素敵な淑女と共に時を重ねることが出来た礼がしたい。ですが、今の私には女性へ捧げる花も持っていない身。…ですから、どうか、せめてものこれを受け取っていただけませんか。(金貨の量は、ご馳走してもらったケーキと紅茶の分を差し引いても余る程のもので)
(その言葉と手のひらの中の硬い感触に目をぱちくりとさせ、手のひらを開くとそこに乗った金貨の存在にもそして金額にも驚き声をあげる。)その、お金は気持ちで受け取とりますけど!けどこんな金額貰えませんよ!このお金でヘレンちゃんにもっと美味しいものとか、可愛いお洋服とか、そういうのに使ってください!(慌てて差し引きした金額を返そうとする。)
(そんなパメラの様子に、ヘレンはふるふると首を横に振り、見上げて。「もう充分たべてるし、もらってるから、だいじょうぶ!」だからそれはお姉ちゃんの分、そう言って)(リェルフはさらに追い撃ちをかけるように、娘に続き) ヘレンもこう言ってますし。…ですから、どうか。(私たちのほんの気持ちです、と)
(ヘレンちゃんにそう言われてしまうと次ぐ言葉が出ずに詰まる。諦めたのか軽く溜め息を一つ。)……分かりました。ではお気持ち有り難く頂きます。でも頂いたお金分サービスしちゃいますから、また遊びに来てくださいよ。
ええ、そのときはぜひに。(パメラから手を離し。ヘレンも、うん、と微笑んで) ……それでは、私たちはそろそろ。突然訪ねてきたのに、その上長居してしまい申し訳ない。(綺麗に食べ終えた皿やフォークなどの食器を片付けやすいようにそっとまとめ。椅子から立ち上がり)ああ…そうだ。この椅子は、どちらに?(そういえばヘレン用にと椅子をもって来てもらったはずだ。それくらいは片付けたいと思い、パメラに尋ね)
いえ、沢山リェルフさんやヘレンちゃんとお話出来てとっても楽しかったです。あ、椅子はそこの隅に置いておいてくだされば!(お金を服のポケットに一旦仕舞うとお見送りのために立ち上がる。気持ちは有り難く受け取る事にして、庭の隅に設けられた椅子やテーブルを置く所を指し示した。)
了解、(簡潔に返事をするや否や、示された通りに軽々と片付け。それから少し言葉を交わしながら店内を潜り、玄関につくと改めて向き合い) …レディ・パメラ。今日はご馳走さまでした。(ヘレンも続いて「ごちそうさまでした」、と告げ。最初に会ったときの怯えや不安は、今はなく。) (それではまた、巡り合わせがあれば。リェルフはそう言い、来たときと同じようにヘレンを手を繋ぎ、店をあとにしたのだった。)
はい、また来てくださいね。(二人が仲良く帰る姿を見送ると何だかほっこりした気持ちになる。大きく伸びをすると食器の片付けと店仕舞いの準備に取り掛かるのだった。)
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ショーケースに並んだ色んなお菓子たちが貴方にこんにちわ。
開け放たれた庭へ続く扉の向こうから来店者に気付かない
跳ね軽やかな少女の歌声が控えめに聞こえた。
*お招きした方と。