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街のどこかの寝床

【PPP3周年記念SS置き場】


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「——大規模召喚の日?」
 普段は鋭く刺さるような紫色の瞳をきょとんと瞬かせて鸚鵡返しに問うた褐色肌の少年。知らないのか、と聞かれればその意思の強そうな風貌に反して素直に頷く。
「俺は特異運命座標となってまだ日が浅い。深緑から出るまで外の歴史にも疎かったからな」
 空中神殿へ呼ばれたのは里から傭兵の地へ流れ、ザントマン事件と呼ばれた騒動も運よく逃れたその後だ。
 不器用な質から人付き合いは苦手だと賑わうローレットにはあまり近寄らない。それが無知の原因だろうと自らの行動を省みる。
「手間を取らせてすまないが、ご教授願えるだろうか」
 真剣な顔で頼む彼を無視するならば初めから話しかけてなどいない。
「こちらも待ち人が来ずに暇を持て余していたところです。私で良ければ、是非」
 物腰柔らかな青年は海のように深い青色を細めて笑う。
 薄布越しの唇が紡ぎ出すのは始まりの日の物語。混沌の各地から、異世界から、気がつけば集められていた遥か空の上の神殿。顔を突き合わせては惑う見知らぬ者同士は同志であると告げる神託の少女。
 かくして世界は動き出す——



「——などと語ったところで、私もつい最近まで一般の海洋民でしたのであくまで伝聞ですよ?」
 そう締め括った青年に、幻想種の少年は礼を言う。その時、ギルドの出入り口の方から誰かを呼ぶ元気な声が響いた。
「お待たせお待たせ! 街角もお祭りみたいな騒ぎであちこち流されちゃったっ」
 特徴的な帽子を被った青年が駆け寄ってきたかと思えば、見た目にそぐわぬ子供のような話し口で次々と捲し立てていく。どうやら親切な青年の待ち人らしかった。
「無事に着いただけ良しとしましょう。ほら、もう間も無くですよ」
 壁の時計に向かう視線を追いかけて赤と紫が針をなぞる。

 4、3、2、1——

「——大規模召喚から3周年! 今年も張り切って世界救っちゃおうっ」

 一斉に弾けるクラッカーとグラスを打ち合う音。まだまだ道の半ばにある者達の、束の間の祝宴の始まりだ。
 交わされる「おめでとう」と「おつかれさま」の声の波の中でひとりひとりが思う未来が、どうかどうか訪れますように。
 願わくば、もう誰ひとり欠けることなく辿り着けますように。


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