いらっしゃいませ、お困りですか？ 幻想のとある街の片隅。
ひっそりと月とランタン、そして犬の絵が描かれた看板がひとつ。

受付はたおやかなハーモニアの女性。
ごく稀に、白い長毛の大型犬が寝ている姿が待合室で見られるらしい。
肝心の医者は不愛想だが、技術は適確であると評判である。

分け隔てなくこの病院は治療が必要な存在を受け入れる。
それが貧乏人や、はたまた犯罪者であろうとも。
だが万が一法外な値段であっても対価を渋るべきではない。

ふらりと現れたランタンを持つ人間から焼き尽くされ、柔和な笑みのまま黒髪のハーモニアから首を断たれ、医者の硝子玉の瞳に見透かされた挙句、犬に喉笛を食いちぎられたくなければ。