ギルドスレッド スレッドの一部のみを抽出して表示しています。 元集会場 【PPP四周年記念】焚火の前で 【神殺し】 リュコス・L08・ウェルロフ (p3p008529) [2021-07-30 18:00:09] お借りしたキャラ…フラーゴラ・トラモント(p3p008825)さん 常々思う。傭兵の仕事は過酷だ。 故に心を病んで過剰に甘えたがる事も仕方ないのだ。多分、おそらく、きっと。 しかし、頭で理解できても対応する身としてはどうか。疲れないはずがない。そんなわけでフラーゴラは焚火の前でぼうっとしていた。 手元にはカップ。中には温かいドリンク。看病疲れと砂漠特有の急激な温度変化の中では有難いもののはず……なのだが、いまいち喜んで飲む気になれない。疲れのあまり何もしたくないという気持ちが先立っているのだ。 意味もなく遠くを見つめていた。のだが、ふと視界の端に誰かの頭がひょっこり映った。 光を鈍く反射する、くすんだ鏡のような印象の頭髪――見覚えがある。「……リュコス、さん?」 仕事仲間の一人、リュコスだ。フラーゴラより幼いが、幼いなりに野戦病院でも甲斐甲斐しく働いている所が印象に残っていた。 リュコスは慌てたような様子で、「Ah、urrr……ずっと……顔、見て……しつれい、だったかな?」「顔……?」 言われるまで気づいてなかった。それぐらい周囲に注意を払えなくなっていたという事か。「ううん……大丈夫、だよ……。……ワタシの顔、なにか、ついてた?」 空いている手で頬に軽く触れる。ゴミがついている、というわけではなさそうだが。「あの……ね、耳が……」「耳?」「うん、そう……耳……」 いまいち、歯切れが悪いというか。確かにフラーゴラは獣種特有の獣耳がある。しかし、それが珍しい事かと問われれば「NO」だ。殊更気にする理由が思いつかない。 リュコスも疲労でお腹を空かしているのだろうか。手元に目を落とす。少し冷えた、がまだ温いドリンクが入っていた。「リュコスさんも……これ、飲む?」「……飲む!」 その瞬間、リュコスが何故耳を気にしていたのかわかった気がした。喜んで首肯した瞬間、髪の隙間からぴょこっと耳が飛び出した。 耳と言っても人間種の形ではない。獣種――それもフラーゴラのように、狼の形状に近い。「もしかして……『仲間』って、思った……?」 「耳が出ているよ」と示すように自身の側頭部を軽く撫でる。それに気づいて、リュコスは慌てて頭を抑えた。「あ……泣かないで? 怒って、ないよ……」「Uh……シツレイじゃ、なかった……?」「そんな事ない……。ワタシはね、これをきっかけに『仲間』……とか『友達』……と思ってくれたら……嬉しい……」「ともだち……」「親睦の証……飲もう?」 気を取り直して、とマグカップをもう一つ差し出す。 対して、リュコスは先程よりも強く、二回も頷いた。 →詳細検索 キーワード キャラクターID 検索する キャラクターを選択してください。 « first ‹ prev 1 next › last » 戻る
常々思う。傭兵の仕事は過酷だ。
故に心を病んで過剰に甘えたがる事も仕方ないのだ。多分、おそらく、きっと。
しかし、頭で理解できても対応する身としてはどうか。疲れないはずがない。そんなわけでフラーゴラは焚火の前でぼうっとしていた。
手元にはカップ。中には温かいドリンク。看病疲れと砂漠特有の急激な温度変化の中では有難いもののはず……なのだが、いまいち喜んで飲む気になれない。疲れのあまり何もしたくないという気持ちが先立っているのだ。
意味もなく遠くを見つめていた。のだが、ふと視界の端に誰かの頭がひょっこり映った。
光を鈍く反射する、くすんだ鏡のような印象の頭髪――見覚えがある。
「……リュコス、さん?」
仕事仲間の一人、リュコスだ。フラーゴラより幼いが、幼いなりに野戦病院でも甲斐甲斐しく働いている所が印象に残っていた。
リュコスは慌てたような様子で、
「Ah、urrr……ずっと……顔、見て……しつれい、だったかな?」
「顔……?」
言われるまで気づいてなかった。それぐらい周囲に注意を払えなくなっていたという事か。
「ううん……大丈夫、だよ……。……ワタシの顔、なにか、ついてた?」
空いている手で頬に軽く触れる。ゴミがついている、というわけではなさそうだが。
「あの……ね、耳が……」
「耳?」
「うん、そう……耳……」
いまいち、歯切れが悪いというか。確かにフラーゴラは獣種特有の獣耳がある。しかし、それが珍しい事かと問われれば「NO」だ。殊更気にする理由が思いつかない。
リュコスも疲労でお腹を空かしているのだろうか。手元に目を落とす。少し冷えた、がまだ温いドリンクが入っていた。
「リュコスさんも……これ、飲む?」
「……飲む!」
その瞬間、リュコスが何故耳を気にしていたのかわかった気がした。喜んで首肯した瞬間、髪の隙間からぴょこっと耳が飛び出した。
耳と言っても人間種の形ではない。獣種――それもフラーゴラのように、狼の形状に近い。
「もしかして……『仲間』って、思った……?」
「耳が出ているよ」と示すように自身の側頭部を軽く撫でる。それに気づいて、リュコスは慌てて頭を抑えた。
「あ……泣かないで? 怒って、ないよ……」
「Uh……シツレイじゃ、なかった……?」
「そんな事ない……。ワタシはね、これをきっかけに『仲間』……とか『友達』……と思ってくれたら……嬉しい……」
「ともだち……」
「親睦の証……飲もう?」
気を取り直して、とマグカップをもう一つ差し出す。
対して、リュコスは先程よりも強く、二回も頷いた。