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野営地

真剣素振り場【SS】

文字通り、ちょっとしたSSを置いてある場所だよ

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高天京にも人が寄り付かない場所というのは存在する。
穢れという概念を忌避する豊穣の民は、辻陰陽――流れの陰陽師が立てる卜占に従う信心深い住民が少なくない。貴種たる歴々も言わずもがな。
卜占という日々の生活で生じる諸々の『責任を押し付けられる』存在はとても使い勝手が良いからである。無論、本当に信じて行動している民も居ない訳ではないが――
そんな信心に逆らう形で歩いていくと、自然と人は少なくなっていく。人気は薄れ、何処か薄ら寒さを伴う場所へと到達すると、伏見は立ち止まり、首肯を一つ。

「ここなら大丈夫かな。まあ、取って食おうって訳じゃあないんだ。」

そう言って振り返った伏見は目を緩める事をやめていた。
腰に挿した剣を鞘ごと抜き、左手は柄へ、右手は逆手に柄を握り。臨戦態勢を取った伏見は笑いながら、常のに言い放つ。
多少なりとも戦闘に身を置いている恋屍は、気の興りを感じ取れず、ふん、と鼻を鳴らす。数メートル程離された距離で臭ってくる体臭に変化が無かったからだ。

「あまり好きじゃあないけども、やるからには手の内を見せて欲しいと思う。」

抜いたチェーンソーに火が入る。どるん、どるん、と規則正しい音に鋭敏な嗅覚が示す刃が空気を焦がす匂い。使い慣れた武器をだらり、と下げるように持った彼女は、見知ったようで印象が変わった男と相対する。

「合図は無くて良いだろう。そっちから来てくれ」

じゃり、とつま先で地を詰り、ほんの少しだけ鞘から剣を覗かせ。『己が得意とする待ちの形』へ持ち込まんとする男は微動だにせず。
しゃらしゃら、とチェーンソーが動く音だけが、響き――

――シャァッ!

その環境に異物が混じったのは、音無く一足の元に飛び込んだ恋屍が切り上げるように振ったチェーンソーを横から叩きつけるように受け流さんとした伏見が抜剣した瞬間である。
互いに近接を得手とする同士、戦うのならば一挙手一投足の間合いであるが――ふぅん、と。予想を越えては来なかった相手をみやり、つまらなさそうに横を叩かれた勢いをそのままにぐるり、と周り、左手で殴れるように調整された篭手の先端を叩きつけんと振りかぶる。が――

がつん、と鈍い音がした。
刃を流し、ぐるりと勢い良く周りながら拳を振りかぶった相手が遅い訳ではない。戦場で磨かれたそれは十二分に通用する速さであり、並の兵士ならばそれだけで終わっていただろう――伏見の頭突きが早かった。それだけの事である。

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