PandoraPartyProject

特設イベント

ギルドパートⅢ


「こんにちは」
「こんにちは!」

「イーリンです」
「ユリーカです!」

「ええ、まぁ。厄介ですが、がんばります。知識は平等ですから」
「あ、えっと。はいっ!」

 多くの方が詰めかける本日のギルドの受付の臨時『記録係』。
「当機体は記録と保全を得意とします。先ほどのざんげ殿の発言を記録したものがこちらです」
 アンケートと同時にファイル34は口からレポートを出力できる。

 という訳で。イーリンとファイル34はユリーカに一言伝え、協力してアンケート用紙を配り、纏め、記録しているのだ。
 内容は『世界情勢』『知識』『文化』『種族』など。
「ここなら私も仕事に困らない、って聞いて来たのだけれど」
 エクリアが金色の髪をなびかせレポートを受け取る。
「お手伝いしましょうか」
 これならあまり体の強くない自分でも出来る気がして、猫の少女は眠そうな表情でふわりと笑った。
「あの、病院のように傷や病気の治療できる場所が確認出来ると嬉しいのですが」
 常用薬を飲みながら周りを観察していたエリアスがイーリンに話しかける。
「はい。この辺りの地図をお渡ししますね」
「ありがとうございます」

 姫仕えの騎士になりたいタマモは姫が依頼主の仕事を探すが当ては無く。異世界から来た姫を探してギルドの中を探して歩いていた。
「さて、私の仕えるべき姫はどこにいるのでしょう」
 タマモが人影の間に見つけたのは高価な宝石類を売りに出していたミーチェだ。
 手に入れたお金で物件を購入し、生活基盤を整えて行きたいと考えているミーチェは、じっくりと物件を吟味する。並行してこの世界の食材も確認しなければならない。彼女にとって自炊は必要不可欠なのだから。

(俺が選ばれたのは偶然かもしれない。……けど、それでいい。それじゃなきゃ、俺の夢はきっと見えない)
 ユリーカ達に今後の行動を聞いてから、トラオムは一息ついた。部屋の壁に凭れ掛かって瞼を閉じる。
(……ああ、誰の夢だろうか、これは。でも、こういうものがあるんだ、戦わないとな)
 微睡の中大きな声で笑う男の声を聴いた。
「ガッハッハ、大船に乗ったつもりで俺らに任せとけェ!  生きるのは俺の得意分野よ!!」
 エリックは腹を揺らし大きく笑いながら自分の胸をドンと叩く。
 少し前まで山賊として生きてきた彼にとって、大きな街は戸惑いも冒険への期待もある。

 サリカは不安そうにギルドの中を歩き回っていた。
 こんな大勢の人は見たことがない。
「あの……」
 小さな声が喧騒に掻き消されそうになるが。
「はは、すごい人ですね」
 サリカの声を拾い上げたのは景だ。
「ちょっと過激なOJTだと思えばいいんじゃないですかね。就職先決まってなかったしちょうど良かったです。海外どころか異世界だなんて親は驚くでしょうけど。こまっちゃうなー」
 景もサリカと同様に異世界からやってきたらしい。
 同じ境遇の人と出会えて少しだけ安堵する少女。
「何かを護る仕事はあるか?」
「うぅむ……仕事をしないといけないのか」
 静かな口調で言葉を紡ぐハクウェルとグレゴドールの呟きが重なる。
 お先にどうぞと譲った男に礼をし、ハクウェルはよく通る声で続けた。
「何処か良い森があれば教えてもらえると助かる。出来るだけ他人に迷惑をかけないで済む、自然の森を。勿論必要以上に荒らすことはしないと誓おう」
 彼女の少し哀愁を帯びた面持ちに、グレゴドールは大変そうだなと思案する。
「俺は、どんな仕事があるか見せて貰いたいんだが」
 単純で分かりやすい仕事が多い方が都合が良いと付け加えてグレゴドールは依頼掲示板に目を向けた。

「あぁ、人混みは嫌いだ。なんでこんなにひとが居るんだ……帰りたい。帰って家で金魚を眺めていたい」
 マリウスは部屋の隅で仕事の話を聞いていた。騒がしいのは勘弁してもらいたい。
 レオンの様なタイプも苦手だし、この先上手くやっていけるだろうかと不安な表情になる。
 マリウスの前を通り過ぎて行く勇騎は依頼掲示板の前に立った。探すのは郊外の討伐依頼。
(このギフトがなければ……もっと気軽に依頼を探せたのに)
 勇騎は羅列された文字を見つめて溜息をついた。
 彼の後ろに揺れる白くて大きなウサギ耳。
(ローニャはなんとかっていうのに選ばれたらしいのね。ここにいきなさいって言われたんだけど)
 キョロキョロと辺りを見回して溢れかえった人々に感心するローニャ。
「なんだ! ローニャひとりじゃなかったのね! じゃあ、ローニャ、働くね!」
 なんでもしますからと意気込むうさぎの少女だった。

「イレギュラーズってのが俺達の事だよな……」
 アシュレイは周りの人々と一緒にレオンの説明を思い返す。この世界に来て間もない彼は先行きの不安に少し苦い顔をした。まだ仲間と呼べる人物は一人として居ないからだ。
 シグムンドは難しい話は分からないと肩を竦める。
「けど、ま、生きてく為の仕事っつーのはわかりやすくていいね」
 何よりもそこに楽しさがなくてはいけない。一度きりの命、楽しむ事が最優先なのだ。
 シグムンドの視線が目の前のマヘルへと注がれる。どうやら売値の交渉をしているようだ。
「……はい。じゃあその値段で良いです。ありがとう」
「儲かってんなー」
「あら、今回は対して収入じゃないけど」
「そうなのか? どうだ? 俺と手を組むってのは。なァに、報酬分はきっちりやるさ!」
 今まで見たこがない綺麗な風景や素晴らしいものを共有するために仲間は必要だろう。
「そうだな。まずは仲間を探すところ、からか」
「お、旦那も来るかい?」
 アシュレイの言葉にシグムンドが提案してマヘルが微笑む。
 その先は――また別の話だ。

「ここが、あのギルド・ローレット」
 部屋の中を見渡して、ジェニーがぽつりと呟いた。
 選ばれたからには、踊り子や曲芸師の真似事は終わりにしよう。
(……そして、そうやって、自由に生きるんだ)
 里の年寄りみたいなつまらない人生はうんざりなのだから。

 巫女装束に丸眼鏡を掛けてキスツスはそわそわしながら歩いている。
「困っている人はいませんかね……?」
 キスツスが視線を巡らせると少し迷っている様子の浩美とエイプリルが見えた。
「今の自分に何が出来るのか正直よくわかってないので」
「私でも出来る仕事があれば、教えて下さいますか?」
 浩美が出来そうな事と言えば、植え付けや草むしり等の農業だろうか。住み込みで働かせてくれれば尚良いと付け加えて、隣を見ればエイプリルはお針子や掃除が良いのだと言う。
「そう。三人ならプライマリーカラーズ。お使いでも無限の色彩が生み出せるのよね?」
 プルーはキスツスと浩美とエイプリルの3人に簡単な買い出しをお願いした。
 巡り合わせとは時に強引に訪れるものだろう。それを拾うも捨てるも、また人次第。

 レッドとレジーナがプルーを見上げる。
「ねぇ仕事って汝に聞けば聞けばいいのかしら? 召喚されたはいいけれど、ここでの生活基盤がまったくないわ」
「もしかして、町の清掃、とか……配達とか、でしょうか?」
「そう、ロッソパープルが好み?」
「あ……色はよくわからないです」
 書類の中からレッドが提示したものを探して2人の前に広げるプルー。
「世界を救うって話なのに。街の清掃って……暢気な話ね」
 容赦の無いレジーナの言葉に、吃驚して彼女の横顔を見つめるレッド。
「え……そうでしょうか?」
 少し離れた場所で3人の様子を見つめる捨久万。
 突然の召喚に右も左も分からない状況ならば、情報収集が最善策と考えギルドが斡旋する仕事を観察している様だ。
「知りたいことは聞いた方が早いけど、情報に聞いた人の色が付くのは嫌なのよね」
 捨久万がぽつりと呟いた言葉に、色彩の魔女が小さくくしゃみをした。

 ラサを経由しゼシュテルへ水晶を売りに来たオロディエンは迷い込んだ幻想の首都に圧倒されていた。
「へぇ、このギルドってとこで支援してもらえるだか」
 辺りを見渡して魔術用の素材提供等、己に出来る事なら手伝うと意気込んだオロディエン。
「なるほどなのね。あたしの知的探求心がムズムズしてくるのだわ!」
 聞き覚えのある声に視線を上げれば、大きな学者めいた帽子をクイッと上げてドヤ顔をしているサエルミアを見つける。
「あ! サエ! いとこのサエルミアだに!」
「た、他人の空似かしら!」
 訛り全開の従姉に挙動がソワソワしだすサエルミア。
「おや? 君の名前はたしかサエルミア・フォレレと言ってなかったかい?」
 ショウの問いかけに応える間も無くサエルミアは恥ずかしさで逃げ出した。

 アリエスと悠凪は【空犬探偵事務所】の所長であるところのモーリスの為にキャンディを探していた。
「買った、キャンディ」
 十数人分相当にも及ぶ大量のキャンディを手に、アリエスはモーリスの座るテーブルの上に並べる。
 それは、レモンやライムの甘いというより酸っぱいキャンディたち。
 相方が酸っぱいキャンディを用意することを見越していた悠凪は持っていた袋をモーリスに差し出した。
「はい所長、パインアメです。」
 彼女はパインアメが大好きなのだ。しかし、飽きが来ないようフレーバーを用意するのを忘れてしまっていた。
「褒めても、いい」
「どうぞ、パインアメです。」
 アリエスのドヤ顔と悠凪の笑顔にモーリスは声を荒らげる。
 モーリスのギフトはセンス=キャンディ。
 彼の前で隠し事をしている人が居たら舐めてる飴が酸っぱくなる能力。
 助手達が買ってきたのは酸っぱいキャンディ。
「嫌がらせか!?」
 彼のギフトはセンス=キャンディ――舐めてる飴が酸っぱくなる能力。

(随分目立つ情報屋だな。)
 リュグナーは色彩の魔女を引き留める。まずは明日を生きる為に。より良い情報を求めて、手っ取り早く情報屋を活用したい。
「我はリュグナーと呼ばれる者だ。今は何も持たざる無知の情報屋だが、いずれ多色が混ざり合い、黒く染まる程の情報を貴様に提示すると約束しよう!」
「ふふ、楽しみにしているわ」
 喧騒に耳をそばだて部屋の隅で手帳に書き記しているのはカタリヤだ。
 大召喚に神託。歴史の転換点に己が当事者として在る事実。仕事は一般人には知らされない秘匿の情報もあるのかもしれない。
(……この『特異運命座標』の肩書き、最高に使えるじゃない!)
 これからの予感にクチナシの白き花は美しく笑う。
 カタリヤの近くにはアルバートが本を開いて、流れゆく情報を耳で集めていた。
(聞いたことはあったけど実際来るのは初めてだ。それにしてもこの人だかりじゃなぁ)
 ある種祭りの様な熱気に気圧されてギルドの隅で知識を増す為の本を捲る。

「江渡城とか松平……つっても知ら、ないよね」
 銅がぽつりとつぶやいた言葉に耳を動かしたのはチエだった。
「何か知ってる響きの様な? 気のせい?」
「どうだろ?」
 銅とチエの異世界が全く同一か等、確かめる術は無くて。しかし、学生制服を着ているという事は同年代だろうか。
「とりまウチもドコになんて国があるがか全然分かんないんで」
「私は賑やかな街や、楽しそうなギルド! 逆に、治安の悪い街や危険なギルドの情報も欲しいです!」
「治安の悪い所って、大丈夫なの?」
 チエの言葉に心配そうに眉を下げるプルー。
「いえ、君子危うきに近寄らずみたいな?」
「ウチは浪人なんで、仕事先として良さげな国とか勢力とか教えて貰えれば」

 先ほどコメット・ブルーの未来とプルーは言った。
 そしてマグナは口の端を上げた。
「オレはそうは思わねーけどな」
 破滅への先行きが澄んだ青空の様に綺麗な訳がない。
「どう考えてもクリムゾンでクレイジーな未来が待ってるようにしか思えねーぞ」
 嵐の如く荒れ狂う闘争の日々を思い描けば感情も昂ろう。

 依頼を終えて報告に戻ったシェラは酒場に入り浸る見習い兵やゴロツキに眉を顰める。
「喧しいだけなのは嫌いなんだ……」
 だが『微睡みの夜』があればすぐに平穏は取り戻せる。
「俺が出て行けば起きる。それに……」
 これで寝ぼける様な奴等はこの先簡単に倒れるだろうと付け加え報酬を受け取りその場を後にした。


 確かに僕らはこの世界を知らないし、何の伝手もない――
 衣食住もなく救世を果たせと言われたら、大概は納得しないだろう。

 そんなセルウスの考えは尤もだ。
 神の命だろうが、なんだろうが、休息と安心が出来る場所がなければやっていられない。

 だから宗教施設以外で安く住める場所があると嬉しいなあ、

「ないかなあそんなとこ!」
 と。そんな訳で。
 成すべき大局は見据えた。
 ならば新米イレギュラーズ達にとって目下、最大の問題とは何か。
 それはこれからの日々をどう過ごすかということ。
 具体的には、住居を探すという問題があるのだ。

(滅びを防ぐために、かあ)
 ネルコにとっても、必要な事態は変わりない。
 イレギュラーズとなったことそのものは、実感がないとはいえ、選ばれてしまった以上は仕方ないのだ。
 だからなんとかなるよねと、気楽に構えてはみる。
 おいしいリンゴの樹だとか、緑の多い所が見つかれば良いのだが――

(まずは足元を固める事から始めるとするかのう)
 こうなってしまったからには、まずは故郷への知らせが必要だろうと潮は考える。
 己の状況、留守になること、心配を抱かせぬこと。そうした手紙をしたためた後には、当面の仮住まいを探さなければなるまい。
 そうなればローレットの近くに丁度いい住宅が欲しくなるというものか。
 そんな彼が程よい和風の家を見つけるのは、今からほんの少しだけ先の話になる。

(ここがギルド……今までのボクには縁のなかった場所か)
 仕事は必要だが、おいおい探していけばよい。だが一番重大な問題を解決せねばならない。
「お願いしてもいいかな? 希望は高くなければ1人用でもシェアでも。とにかく、住める場所が欲しい」
 そう考えたサヤは、とりあえず手近にいた情報屋のショウに話題を投げかけた。
「そりゃあそうだ。レオンもそんなことを心配していたっけ、ちょっと待っていてね」
 まあ……今回の場合、最近勤め先を追い出されたから、風雨を凌げる場所が欲しいという切実な悩みもあった訳だが。

 さて、話を聞いた後のこと。まずはどこか住居を探さねばなるまい。
 例えるならば水槽のような。いい水場があればよいのだが。
 人気がないところなら尚良いが。
 そう思って訪ねてみれば。
「そういえば、先ほど水気のありそうなギルドの申請が。あっ、でも人はいるのです」
 そりゃギルドならそうだろう。はてさて。
 いずれにせよ、こうした場面では案外都合の良い答えが見つかるものだ。

 ギルドの中を心許なげに彷徨うメイは不安げな表情で辺りを見渡していた。
「これからどうしたら良いのか分からないよ……わぅ」
「あなた、平気?」
 いかにも困った様子のメイを見かねて声を掛けたヤスミン。
 住まいや立場が変わっても彼女の成し遂げる事に変わりは無い。見上げる空が変わらないのと同じ様にヤスミンは正義の味方なのだ。
 彼女の逞しさにメイの心は安堵を覚える。嬉し気にメイの尻尾がパタパタと揺れていた。

「わぁ……お兄さん、そこのカッコいいお兄さん。ブルーブラッドの、ネコ科……だよね? 僕もなんだぁ」
 ラズワルドが情報屋として働くショウへ憧れの眼差しをむけていた。
「やあ、何か用かい?」
「ねぇねぇ、どうしたらココでうまくやってける?」
「そうだな――」
「すみません、まずは住むところをご紹介いただけません? 動くにしてもまずはそれからだと思いますのよ」
 側に居るラズワルドにも聞こえやすい様にミーティアが声を上げる。
 迷っているならば、拠点となる場所を確保するのが先決だろう。ミーティアの導きにラズワルドも頷いた。

「レア・アイテムや遺跡についての情報が欲しいわ」
 果ての迷宮からの発掘品。未だ踏破されていない未知の道筋の先、財宝が待ち構えているに違いないとティシェはショウに尋ねるのだ。
「どうだったかな? 少しまっておくれよ」
「ね、可能性って……度胆を抜くような事だと想わない?」
 探し当ててみせると、ティシェは強く意気込む。

(ふむ、さすがに古くから異界の者を受け入れてきたギルドだけあって、手続きも扱いも軽いものだ)
 重厚で誇り高い生き方から導き出された答えなのだろう。
 といっても、彼自身も気を使わず済むのだから、気楽に出来るとも言える。
 そうして威風堂々とした巨躯、そのたくましい拳を顎に当てたゴリラ――もといローラントはひとしきり思慮を重ねた後、一つ尋ねた。
「ところで尋ねたいのだが……
 この世界に、私と同類、あるいは近い種族の者たちが住む土地はあるだろうか?」
 尋ねるローラントに、ショウは思案する。
「見た目……あるいは単に旅人としてなら簡単かもしれないが、そこに生き方のようなものは含むべきかい?」
 ここか、練達か、あるいは新緑などか。
 旅人にとっての土地探しというのは、中々に難問なのかもしれない。

 こちらは二次元の世界から飛び出してきたようなフキダシが頭上に浮かんでいる。
『あの、住み込みで働けるようなところはありますか? 住む場所は欲しいんですけど……』
「え、あ、ああ」
 一瞬戸惑いを見せたショウだが、小さく手をあげる優馬の表情から、何かを理解したようである。
「あっちにまとめた冊子があるんだ。行こうか」
『よかったあ』

「ま、とりあえず当面の寝床を紹介してよ。できれば何もしないで三食付いてくるトコ」
 腕を組み、眠たげな目で言葉を投げかけるクィニー。
「そんなに広くなくていいから寝る場所と、大きめの窯というか鍋を置けるスペースがある物件がいいな」
 クィニーの言葉に続いてテテスもショウに要望を立てる。
「住むところを用意してくれるってえなら、有り難く厄介にならせて貰おうかね」
 陽気な笑い声を上げるヴァレリアにショウがこくりと頷いた。
「まあ、仕事はしてもらった方がいいね。今後の為にも」
「働かざる者食うべからずって事? ……意外とめんどくさいとこに来ちゃったかなぁ」
 クィニーが頭を掻いて小さく呟く。
「ま、難しく考えずに俺たちそれぞれがやれることをしていけば、自ずと何とかなるんじゃねえか?」
「できればいろいろな所に行ける仕事がいいな」
 ヴァレリアがテテスに視線を向けて、彼女もそれに応えた。
(さぁ、この世界には何があるのだろうか)

 影丸も彼なりの思考で生活基盤を整えようとしている。
(そう住む場所は……例えば、18歳以下の娘がよく観察できる高台とかがいいでござるな!
 いや……仕事なら、女湯の番頭か掃除などはなかろうか……?)
 目の前を通りかかったプルーと目が合う。
「この際19歳以上の女性には目を瞑るでござるよ!」
 なんという欲望。

 まあね、異世界にね、来たらね。やっぱりそういう、ね。

 寝ずとも、何を食わずとも。リドツキは住居、より具体的には研究所を欲している。
 それになにより、ここには綺麗なおちびちゃん達がいっぱいで、天国のようではないか!
「ええと……君、名前……は何て言う、のかな?」
「はいっ、ユリーカなのです!」
「僕君……と友達に、じゃなかった……人が居なくて静かな森って、あるかな?
 そこにボロい一軒家が、あれば教えて?」
「は、はいっ!」
 感じるのはただならぬ視線か。
 その家がDr.リドツキ研究所と呼ばれる日は近いのであった。
 ユリーカの。そしてアルエットの運命やいかに。

 家と仕事――そしてロリ。
 それは永遠の命題である。

 立地。日当たり。向き。治安。家賃。

 近隣住人の動向。

 給与。
 年間休日。
 福利厚生。

 平 均 勤 続 年 数。

 見た事も無い世界で仕事を探すΔ、はたして好待遇の仕事を見つけられるのか!?
 あるいは運命には逆らえずブラック一択なのか!?
 どうせなら優しくてスタイルの良い主人を見つけたい、そんな煩悩まみれのペンギンの様なナニカの明日はどっちだ!

 次回『Δの大冒険』第0話。
「はじめてのお仕事」

 君は――新たな世界のΔを目撃する!




 リプレイ:pipi
 監修:YAMIDEITEI

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