PandoraPartyProject

特設イベント

ギルドパートⅡ


 善悪の彼岸に在ろう大局。
 特異運命座標としての人生が幕を開けつつある。

 善人も、悪人も。
 純種も、旅人も。

 ともかく向かう先は一つ。
 このギルドローレットのオーナー、レオンの待つ部屋である。

「ざんげが言ってたのはあなたね。
 レオン・ドーナツ……? おいしそうな名前ね」
「ドナーツだ」
「あら、違うの? ねえ、この世界にもドーナツはあるの? プリンは? アップルパイは?」
 割とあったりする。
「ねえ、エリカ、レストランを作りたいの。場所あるかしら?」
 小さくても、ボロでも。彼女にはやりたいことがあった。これは、ギルドを設立すれば良いのだろうか。
 そう。立派な本になるために。

 本になる!
 さすがウォーカーである。

「え? ドーナツ殿なの? ホントにドーナツ?」
(空腹でギルド長殿のお顔がドーナツに見えてきた……)
 え、ええと。
「……申し遅れました。
 ベイ・ハーバー署、地域課特殊班・セクシィー担当!
 オフィサー・ケーナ・ククル・ケレヴであります!」

 自己紹介も十人十色。宇宙。銀河警察。セクシィー担当! そういうのもあるのか。そう、ウォーカーならね。

 宇宙時代から石器時代まで。旅人というのは様々な世界からやってくるものだ。
 ウトゥにとっては目の前の全てがオーバーテクノロジーだったりもする。
「俺、働くぞ!」
 椅子には乗ってもいいのか、机はなんだか便利だ。
 様々な道具にカルチャーショックを受けながらも、懸命に覚えようと頑張る。
 言葉がわかれば理解も早い。崩れないバベルというのは便利な機能だ。
 しかしはしゃげば眠くもなるというもの。
 原初の少年が英雄となるまでの道のりは長いのかもしれないが――

(いいわねえ。これでこの世界がもっと騒がしくなるわ。楽しみね!)
 などと内心想いつつも表には出さず。いつものように泰然と、穏やかな笑顔の活。
 いずれにせよこれから何が起こるのか。楽しみで仕方がないのは事実である。

「バルトロメイさん、よろしくお願いしますっ!」
 きらきらと瞳を輝かせ、勢いよく挨拶したメアリーには好奇心という名の大いなる渇望がある。
(うう、色々質問したいっ)
 目に映る全てが珍しくて。気になって。

「神託の巫女様から御案内を授かるなど望外の喜び。
 わたくしはレーナと申します。
 卑賤なる我が身にも、神の導きを得られますば、粉骨砕身の信条で働きましょう」
 礼儀正しい挨拶とお礼を述べるレーナ。
 ざんげの導きを神の導きと捉える異世界アンドロイドなシスターである。
 それって意外と当たらずとも遠からずという系統な気もしないでもないのだが。

「ほう」
 十二単が良く似合う異界の雪男。銀髪のバテンカイトスが呟く。
 オーナーは中々に良い男のようだ。
 喰い甲斐がありそうだが、今の己では喰らえぬと物騒なことを考える。世界法則LV1があってきっと良かった。

 レオンはこの日、幾度目かのざっくりとした説明を終え、再び辺りは喧噪に包まれている。

「宜しくお願い致します」
 ヴェストベリが述べ。
「特異運命座標……?」
 聞きなれぬ言葉にジュアが目を丸くする。
 その日暮らしには慣れているが、大きな環境の変化は難儀だ。
 他人事のような気さえして、これからのことを思案する。

「なるほどねぇ」
 凉が呟く。ざっと把握出来た程度だが、初手はこんなものだろうと考えての相槌だ。
 この世界で生きるのに必要なこと。己の身の振り方。そういった辺りは周りの人間を見ながらゆっくり学べば良いのだろうが。
 一癖も二癖もありそうな連中ばかりである。
 最も、退屈はしなさそうだが。


 言葉にすれば一様に『飲みこみづらい状況』であっても、その理由は人それぞれだ。

 今日。寝ていたはずのアストレイアが起きたのは、かの空中庭園だったのだ。もちろんそこは彼女の家ではない。
 その。なんだ。起床時の御姿と大和の主砲の関係性のことだとか。
「――あの時はどうなることかと」
 それはちょっと大変だったものだが、ここまでやってきてようやく状況が飲み込めてきた。

「仕事は斡旋してくれるんだろ? 具体的にはどういう仕事になる? 何でも屋みてーなイメージか?」
「まぁ、だいたいそんなもんだ」
 ルシウスの予測はおおよそ正しいのだろう。
 怪物退治だの、用心棒まがいの仕事だの、そういうものだろうか。
 どうせなら未知の遺跡の冒険で、一攫千金など狙いたいものでもあるが。

「ふむ……後ろ楯が用意されているのはありがたい話だ」
 神託が告げた滅亡を防ぐのが役目だというなら、それを成すまで。決意を呟いたのはアオイが自身に言い聞かせる為でもある。
「……きっと、母様もそうするであろう。向かうところが同じであれば、出会えるかもしれぬし……な」
 人にはさまざまな事情がある。
 誰も彼も。これからを生きる為の知識を身に着け、寄る辺を探し、仕事をする。そのための検索でも斡旋でも、ローレットが手を貸してくれるとは言え、新生活というものは大変だ。

 何はなくともまずは食い扶持。
『武者ガエル』河津 下呂左衛門。剣の腕には覚えあり――と言っても。ここにいる者達とは横並びであるからして、弱ったものである。
 やはりローニンとして傘張りの内職など、この辺りでは珍しいのではないか。

「任せておきたまえ! このバラード=バランシェが、必ずや世界の運命を救ってみせようではないか! はっはっはっは!
 大言壮語に聞こえるかもしれないが、彼自身は本気も本気。何せ鍛え抜かれた『フラッパー』の威力を、ついに見せる時が来たのだから。
 そう。彼こそペンギンで勇者なのである。

 ビスコ想う。ゆえにビスコあり。

 ビスコはビスコである。
 にんげんさんがいっぱいおり、びっくり仰天している。
 両手をぴこぴこしている。可愛い。
 ビスコは実はお菓子である。美味しそうである。
 がんばれば、にんげんさんになれるかもしれない。だからがんばるのだ。えいえいおー。

 カエルが居ればペンギンも居る。
 にんげんさんが居れば、お菓子も居る。
 勇者が居れば魔王も居る。てか、魔王様。けっこういっぱい居る。

「ちょっと何を言ってるのか分からんのじゃが!?」
 どうも他にも居るらしいのだ。魔王が。それも沢山。
「わらわが唯一無二の魔王様ですし?」
 ほかに魔王が居るとか認められないシロン。
 絶対におかしい。間違っている。
 その感覚は正しい、この世界はきっとちょっとおかしいのだ。なんかロリになっちゃってるし。
 ともかく悩ましい。どうしたものか。魔王として一番目立てばいいのだろうか。
 大魔王からは逃げられない。そう。自分が。

 困惑もあれば受容もある。
「ドーナツ……じゃなくてレオンの大将。これからお互い大変だろうが、よろしく頼むぜ」
 ひとしきり聞き終えたテレシアが率直な言葉をつぶやいた。
「人手が足りなきゃ手伝ってやっからよ。これでも腕っ節には自信あったんだぜ?」
「ああ、そんときゃよろしく頼むわ」
「……言っとくけど、給仕はやらねーからな。いや、でも、本当に困ってるってなら俺も考えるけどよ……」

「お手伝い、できること……聞いてみよ、かな」
 もしもあったなら、チックのこれからはきっと凄く楽しいものになるのだろう。
 それに。依頼と冒険を通して、治したいこともあったりもして。

 さて。
 それなりに意地汚く、この混沌を生きてきたと。カヴィンは自認している。
 ただ流れに任せてギルドへ足を踏み入れたまでのこと。今更神託がどうのと言われた所で、強く思うこともない。
 適した狩場がここに移ったというだけのことなのだろう。
 だが郷に入っては郷に従え。この場の掟は重要なことだ。

「まだちょっとピンと来てないけど、あたしたち『特異運命座標』ってやつは、何をしててもいいわけ?
 ルーラが問う。
「……たとえば、法に触れるようなこととか」
「なんでもって訳じゃないが」
「もちろん、そのあたりの情報はレオンが教えてくれるんだろう?」
 アルベルトが歩み寄る。
 この世界でも傭兵として働くのであれば、各国や有力組織の情報は把握しておかなければならない。
 先方のルールを知らずに痛い目を見るのは間抜けであるとは、傭兵の知恵である。

 地域毎の常識や法律。ローレット自体にも『ハイ・ルール』が存在するから制約がない訳ではない。
 だが危険なことや、後ろ暗いことをやるか、やらないか。仕事を選ぶのはあくまで冒険者自身の意思である。
 選択如何によっては、まさに自由と呼んでも差し支えないだろう。
「実際にやるわけじゃないから安心して。
 あたしゃ確かにそっちの方が詳しいけど、あたしにしても今回のはまっとうに生き直すチャンスってやつだしね」
 ならばルーラのように生き方を変えようとするのも、一つの手だ。

「うーん、なるほど……困ったわねぇ、『ばいきんぐ』さん達の所には帰れそうにないし、まずは住むところを探さなきゃいけないのかしら……」
 理屈は分かった所で、具体的な行動を始めなければならない訳だ。
「ねぇねぇレオン君、どうせならこの綺麗なおねーさんと一緒に住んだりしたくなーい? 今なら家事もしてあげちゃうわよー?」
「男やもめ前提かよ。まぁ、魅力的な提案だとは思うがね」

 マーキスが頭を悩ませる。
「滅亡の危機というのは正直未だにあまり実感が持てぬでござるが……平和は大事でござるし」
 そうは言ってもともかく生活基盤を作らねばならない訳で。そのためには金だって必要になるだろう。
「ギルド長殿、出来れば警邏などの治安維持に関わる仕事はござらんか?」

 滅びゆく世界。
 呼ばれた自身。

「能書きは不要だ、依頼を寄越せ」
 R.R.は早速レオンに詰め寄り言い放つ。
「アンタもまた破滅に抗う者なら、俺はアンタに力を貸す。故に、俺に滅ぼすべき破滅に至る道を示せ」
 自身が滅びを滅ぼす存在であるならば、その為の最短距離を取りたい。
「オーナー、俺にも取りあえず。すぐにできるような仕事と宿を紹介してくれねぇか?」
 早速オーカーも仕事の斡旋を願う。いくら異世界に飛ばされたとしても、悩んだって仕方がない。そんなものは『ナンセンス』だ。

「ヒャッハー!」
 もうなんかすごく勢いがいい。
「何でもいい暴れさせろ! 誰かをぶち殺して金になる仕事はねえのか? 怪物退治でもいいぜ!」
 血気盛んなリチャードは雄たけびを上げる。
 とにかく早い所、戦いたくて仕方がない。

「ギルドマスター、お前に聞きたい。私のような者に見覚えがあるだろうか。あるいは、決して外せない仮面の話などは……」
「そりゃどうだろうな」
 顔を覆う仮面を撫でながら訪ねるジェーンだったが、案の定答えは芳しくなく。
「私は……一体誰なんだ……?」
 その答えは己が手で見つける他ないのか、と。

 矢継ぎ早に繰り出される言葉に、レオンは苦笑一つ。
「いくらでも案内するがよ、お前等。今日の所はゆっくりしとけって」
 のんびりとした回答に聞こえるが、実際はどうか。
 特異運命座標とは、その行動そのものが世界に可能性を与え、破滅を遠ざけるとされている。
 故にまずは英気を養ってもらうしかない。
 どうせ、いざという日は遠からずやってくるのであろうから。


 そんな喧噪の渦中、落ち着いている人達も居る。
 ユ=ウルの場合は記憶もなければ、戸惑う材料すらそもそもないという事でもあったりするが。
「……ねぇ。げーむおーばー、って、何?」
 彼女の素朴な問いに、レオンは先ほどより少々かみ砕いた説明を述べる。
「お仕事すればいいのね。わかった」
「頼んだぜ」
「……なんでも言って。出来ることなら、頑張るから」

「レオンさん!」
「聞こえてるよ」
 今のルトラカルテに出来ること。
「何人かにこのセカイのこと、説明をしたらいいかしら?」
「そりゃ助かるね」
 朝から雰囲気がおかしいとは感じていたのだ。
 それでも純種である彼女等のサポートがあれば、事は円滑に進んでいくであろう。

「私でもお役に立てそうな仕事はございませんか?」
 確かに。先ほどのレオンの言葉通り、セルビアにもこの世界での生活基盤がない。
 こういうものは『習うより慣れろ』で、何か出来ることがあれば良いのだが。
 元の世界でシスターを務めた経験と、手にしたギフトがあればきっと様々なことが出来るであろう。
 とりあえず先ほど大変そうだったユリウス辺りも、ものすごく助かることになるのかもしれない。

「人々に教えを説く為の場所を探しているのだがね。どこかいい物件は無いかな?」
 ローブを纏ったワルゼー。新興宗教『アルティラ教団』の教祖を名乗る女性だ。
「ああ、神に祈ったりはしない。私の教えの中に神は居ない。あえて言うならそう、自分の中の神に祈る。そんな宗教さ」
 ならばそういうギルドを立ち上げ、『人生謳歌』を掲げるのが一興か。

「そこのカッコイイお兄さん? 今いいかしらァ?」
 リーシュは艶やかな笑みを浮かべている。
「俺か?」
 彼女(彼?)はギフトの使い方を相談ついでに。今夜のお酒のお誘いをとも思ったのだが、どうにもこうにも忙しそうであるからして。
「あらァ…ダメなのォ? 残念ねェ」
 連れない返事は、仕方がないんだッ!

「よぅ、オーナー。景気はどうだい?」
「御覧の通り」
 まあ。盛況ではあるのだろう。
「俺は最悪さ。なにせこの世界に来たばかりだからな。だもんだから一銭もありゃしねぇ」
 レオナルドが肩をすくめる。
「……一杯奢ってくれてもいいんだぜ?」
「考えとくよ」
 この問いが後の歴史を紡いだのか。今はさておき。
「まず何より船だ。船がいる。何せ俺は海賊だった。そしてこれからも海賊だ。それ以外の生き方は知らねぇ」
 売っているかはともかく、お買い物ならショップだろうか。

「……こんにちは。といいたいけれど何だか忙しそうね?」
 最早雑踏と化したギルドを歩くレオンに、ナズナサスが微笑みかける。
「市場の店主にでもなった気分だが、そういうアンタは?」
「私? いえ、今日は何だか違和感をとても覚えるから、ギルドに何かあるのかしらと思っただけよ?」
 入ってみたら違和感などというレベルではない事態で。
「で、結局これは大規模な召喚ってことでいいのかしら?」
「まぁそうなんだろう」
「成程……これから大変になるわ」
 なぜって。そりゃあ召喚された方にも愛を満たさなければならないだろうから。

「まぁ、猫の手も借りたいって状況じゃなきゃ私みたいなのを呼んだりしないわよね……」
 世界からの最後通告を前向きに考える者も居れば、キュウビのような見解もあった。
 そう愚痴りながらも掲示物に目を通していたのだが、ふとその場に座り込んでしまう。
「仕事より先に住居か病院の確保ね……まったく、はた迷惑な」
 貧血はなかなかつらいものなのだ。


 ローレットの待遇に甘え続ける訳にはいかないと考える塁だが、今は利用させてもらう他ない。
 必要なのは生活基盤である。
 ヒトを恨み。世を恨み。辿り着いた先。
 味方に引き込めそうな人を見繕い。必要なものを調達し――
 って。
「あれ、炬燵じゃね?? この世界で初めてみた!!」
 しかも蜜柑。
 同胞もこの世界に呼ばれていたとは。
 魔力に引き寄せられてしまった蛇紋天。優秀な忍者、だったはずである。
 これはもう、お邪魔するしかないではないか。
 夏だけど。
 え、まって。ちょろくないすか。
 いやいや、これからが期待されるのだ。

 しかしこの『こたみか』は、どうなってしまうのか。

 らしくなく落胆したのがエリアである。
 追い求めるものがあったなら当然であるとも言えようが。
 とはいえこれはこれで、元の世界にはない技術、力、概念の塊。
 それらを理解し、身に着ける魅惑しかないとも言える。
 少女か、それ以外の何かなのか。年齢さえも定かではない旅人が見せる無邪気な笑顔は、何を孕んでいるのであろうか。
「ならば彼の地で属していた場が必要ですね」
 これもやはり。
「らしく無いですが、自ら立ち上げるのもまた一興……ですか」
 それは『結社』志しが集いし場。
 その名も『生命の樹の契』
 ここも本当にどうなってしまうのか。

 そんな危険な香りがするギルドもあれば、そうではない場所だってある。

「まったく、奇特な縁もあったものだね」
 木材を扱う工房を持つ創が、依頼先として関わっていたはずのローレットだが、まさか所属するとは思いもしなかった。
 数奇なものである。
「さて……早速だけど、僕の工房をギルドとして登録したい。いいかな?」

 海で生きることしか知らないノリアだが。突然陸に呼ばれてしまったのだから心細さは頷けるもの。
 けれど彼女は考える。同じ思いを抱く同種も居るはずだ。
 だから勇気を振り絞り、海種のための互助ギルドAquariumの設立を申請するのだ。
 彼女自身が、海が恋しい仲間たちの海となることを願って。

 早く足をしまいたいルル=ディーは、つい苦い顔をしそうになってしまう。
 海種ならではの苦労だろう。
 拾い上げられてしまったという現実は覆らない。だからまずは安心できる場所が欲しかった。
「海に半ば沈んだ物件はあるだろうか、いっそ全部でも構わない
 サンゴやフジツボはオーケー、崩壊はノーで。
 プライバシーは大事だろう?
 あぁ、あと望むなら、夕陽が拝めたら幸せだね」
 望むなら、罪を埋められる場所を――見つけられたろうか。

(……嬉しい時間、か)
 アウセルはふと、先ほど聞いたユリーカの言葉を思い出し、皮肉気に笑う。
 ああ、まったくその通りだ。
 ――あの<生活>から抜けられるんだ。感謝しか無いね。

「これから、どうしよう……。ん、これは……?」
 シーザは足元に落ちてきたチラシを拾い上げる。【明けの明星】というギルドのメンバー募集だ。
 彼女の斜め後ろに居たアヤトは眉根を潜める。
(どうにも胡散臭いが、なんとなく祝福されてる気はするし)
「1つ聞きたいんだけど、緩い感じでやってる旅人って心当たりないか? 熱い志とかと無縁なやつ」
 プルーに尋ねたアヤトには帰路に路銀も無く、当面の生活費もままならない。ならば多少変でも情報屋に頼るのもありだろう。
「プリズムからもカラーのスペクトルは取り出せるんじゃない?」
 プルーの指さす方向に二人は居た。
「俺は十束・僉獅子・唯織よろしくな。もし、ギルド探してんなら俺んとこはいんね?」
「シーザ・アスタラクといいます。えーと、そうですね、はい、よろしくお願いします」
 微笑ましい二人の会話。プルーはアヤトの背をそっと押した。
「チラシを一枚お願いできる?」
「おう。良いぜ。将来的には茶屋兼万屋してえなと思ってんだよ。よろしくな」

「レオンって人」
 キャロロがツンと述べる。
「レオンって人、これから起こる事にずいぶんビビってるのですね。ざっこ、これだから弱い人間種は嫌いです」
 さすが幻想種。っょぃ。
「きゃー、キャロロおねいちゃんってば、サイコパスに歪んだ性根がステキなのです!
 悟りを開いた高僧でも助走を付けて殴るレベルなのです♪」
 さすが旅人。なんというか。つよい。
「大規模召喚は凄かったですが、やはり最後に頼りになるのは幻想種ですね」
「でーもー、人間は嫌いでも、世界一かわいいビスキュちゃんは大好きなんでしょー?
 やんやん、ビスキュちゃんってば可愛くってごめんね?
 ちゅーしてあげよっか?」
「って、なんですかビスキュさん、その可哀想なものを見る目は!
 一番解せないのは貴女の、否、ウォーカーの存在ですからね!」

 嗚呼。
 グランセフト――熱海!

 ――

 ――――

 ……えぇ、いましたよ。
 さっきからずっと。

 夜風は存在感が希薄なのです。

 人々が次の目的地へと大移動を始めた後、ぽつりと残った少年(あるいは少女)が呟いた。

 ここに所属すれば皆の役に立てるのだと理解した。

 元の世界では、姉のように人を支える資格がなかった。
 でも、きっと今なら。
 力になれると思うから。




 リプレイ:pipi
 監修:YAMIDEITEI

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