PandoraPartyProject

SS詳細

Hey, my best companion!

登場人物一覧

札貫 リヒト(p3p005002)
タロットも任せとけ
札貫 リヒトの関係者
→ イラスト

●Are you my "buddy"?
「――ということで、今回の依頼では二人にバディを組んでいただきたいのです。
 運命的といいますか、何と言いますか。ほら、お二人、使われているカード? も同じみたいですし。運命じゃあないかと思いまして。あ、もちろん無理にとは言いませんが!」
「……別に俺は構わない」
「ああ、私もだ。宜しく頼むよ、リヒトくん」
「こちらこそ」
 固く、固く。握手を交わす。
 情報屋も笑みを浮かべ満足そうにうなずき、『では頼みましたよ!』と告げてローレットへと帰っていった。
「……さて。今回の依頼の内容はどんなものだったかな」
「ああ……事件は子供を対象にした人さらい。簡単に言うと誘拐だな。
 身代金目的じゃあなさそうだな。依頼主達に送られてきたからすると、屹度中身の――臓器やらのほうが目的と見た方がいいだろう」
「まったく、こういうのの被害にあうのが小さい子供だというのは心が痛むものだねぇ……」
「……で、此処からは個人行動でいいか」
「何を言っているんだい? 私と君は『バディ』じゃあないか。せっかくの機会だ、一緒に行動したほうがお互いの中も深まるとは思わないかね?」
「……ったく、そうだな。んじゃあおっさんはそっちで聞き込みを。俺は向こうで聞き込みをしてくる」
「あ、こらこら、それじゃあ個人行動と変わらないだろう! ……行ってしまったか」
 札貫リヒトとアサド・ガンディロフは、一時的なバディを組んだ。
 聞き込みを行うリヒトの表情は真剣で、手にしているメモは絶えずその色を黒に染め、そしてペンは動くことを止めず走り続ける。

  ◇
「…………札貫リヒトだ」
「私はアサド・ガンディロフというよ。噂はかねがね。宜しく頼むよ、リヒトくん」
「噂……そりゃあ俺も同じだな。宜しく頼むぜ、『先輩』?」
(……わざわざ困っている村の依頼を受けるなんて。噂とはなかなか違う一面がありそうだな。
 どれ。せっかくの縁だ、この目であの噂を確かめてみるのも悪くはないだろう)
「……そういえば、この依頼を受けたのはどうしてかな? 君のレベルならば、もう少し楽な依頼もあっただろうに」
「あ……? んなもん俺の勝手だろう。まあ……しいて言うなら、金のためってことだ」
「……そうか。わざわざ済まなかったね、有難う。それでは改めてよろしく頼むよ」
「あ、お二人とも集まってくださっていたのですね!
 其れでは今回の依頼の内容、こちらの紙にまとめておきました。それでですね、少しお願いがあるのですが――」
「おねがい?」
 そして、冒頭に戻る。
  ◇

(……案外根は優しい男なのかもしれない。私も頑張らなくてはいけないな)
 カーマインの瞳は未だ光を宿し煌めいて。
 こちらの世界に来てから行われた悪事――イカサマ。その噂は、同じカードゲームプレイヤーであるアサドの耳にも届いている。
 そして、彼が受けた誹謗中傷や、貼られたレッテル、その結末も。
 だからこそ、この目で確かめると決めたのだ。

 札貫リヒトという男が、どんな男であるかを。

●Do you have to force a laugh for you?
「――んで。だから同じ場所、同じ時間帯で連れ去られてる可能性が高い」
「そうか……こちらの聞き込みでは不審な男の影を見たと聞いた。すべて午後の六時付近、曲刀を持った男だと言っていたよ」
「近接か……アンタは近接はできるのか?」
「護身術程度なら、多少はね。君は?
「……そこそこだな、俺も同じくらいだ。だから、そうだな、俺達のデッキをみて――、」
「あ、あのう! もしかして、アサドさんですか?」
「あ……?」
「私かい? ああ、そうだよ。私がアサド・ガンディロフだ」
「わ、やったぁ! あの、ええと、その、わたしのカードに、サインしてほしいんですけど、いまって忙しいですか?」
「少しだけいいかい、リヒトくん」
「……ああ」
「とのことだ。カードを貸してくれるかい、かわいいお嬢さん」
「は、はいっ!」
 手渡されたペンできゅっきゅとサインをしてやると、ぽんぽんと頭をなでてやり家族の元へと背中を押してやるアサド。大きく手を振った少女は振り返ることなく家族の元へと駆けて行った。
「完璧超人だな……アンタ」
「そんなことはない。もしも私が君の言う完壁超人ならば、離婚なぞしていないさ」
「……」
「仕事ばかりの私に妻が愛想をつかしてね、出て行かれたのさ。もう長い間、子供の顔は見ていないよ。
 ……それでも、ファンが居てくれるから寂しくはないさ。はは。それよりもさあ、事件のことを追おうか」
「……ああ」
(……大切な子供の顔一つ見られないのに、どうしてこの人は笑っていられるんだろか)
 どこか、歪んでいる。
 浮かんだ笑顔は平静そのもので。
 リヒトは深く帽子を被り直し――直後。

「うっ、あ、だすけ、てっ――――――!!!!!!!!!!」

「?!」
「行こう!」
「ああ」

 駆けつけた二人の元にあったのは、事件の新たな被害者の亡骸だった。

●Hello hero. I reviewed you!
「おいおい……なんつうだ」
「同感だね……まさか犯人に会えるとはね」
 子供の悲鳴に駆けつけた大人と二人。『おい、犯人が見つかったぞ!』なんて叫びだすものがいる。犯人ももう逃げられまい。
「皆さんは下がっていてくれるかな……戦いづらくなる」
「ああ……それじゃあ、行こうか」
 構えたカードより生まれる炎をまとった狸と狐。アサドも水で植物を形成し、周囲の被害を押さえながらパワーを充填する。
「く、くっそおぉぉぉぉぉ、お前たちさえこなけりゃ、餓鬼どもみんな売って金持ちになれたのによお、なんでだよお……せめてその餓鬼だけでも、殺してやるううううう!!!!!」
「ひぃっ?! ぱ、ぱぱ、ままぁ!!」
 くしくも。その餓鬼と呼ばれた子供は――先日、アサドがサインを渡した少女だった。
 リヒトの目に映ったのは、アサドが築いたバリケードの外で蒼白な顔をした、少女の両親。
「畜生――ッ!!!」

 ぐしゅ。

「り、リヒトくん!!」
「逃げろ……離れろ!! 子供を連れてる親は、家に……」
 悲鳴。
 腹部を深く貫かれたリヒトは、立つことも儘ならず膝から崩れ落ちる。
(……私のデッキでは充填にはまだ数ターンかかる)
 ならば。
 この命を捧げてしまえばいいのではないだろうか。
(私を待つものなどいないだろう)
「さあ……かかってこい、殺人鬼。私が最後の相手だ」
「ジジイなんて殺す趣味はねえけど、相手してやんよ……そのあと皆殺しにすればいい話だ。そうだ。ひひ、殺す!!!!!!」
「おい、待てよ……」
「大丈夫だ。若い者だけが傷ついていい理由には……年上が傷つかなくていい理由など、ないのだよ」
「待て」
「大丈夫」
 浮かんだ笑みは誰が為か。
 悲壮感溢れるラスト。飾られる笑顔。
 これが映画ならば、きっと素晴らしいラストシーンだっただろう。
 けれど、これは現実で、今起きている只の事件だ。
「――無理に笑うんじゃねぇ、生きて帰って息子に会いに行け!!」
「……ッ」
「それができねえんならここでくたばっちまえ」
「……はは、酷いじゃないか。
 嗚呼。嗚呼。頑張って見せよう。生きて帰ろう。それが答えだ」
 よろよろと立ち上がり、リヒトは腹を押さえながらアサドの背に凭れ掛かる。
「くそがあああああ……みんなここで死ね!! 殺してやる!!!!」
「それはどうかな?」
「俺たちが、そんな未来をぶっ潰してやる……!」
 戦いの狼煙は上がった。

 さあ、決闘をはじめよう。



●Have a nice day. Dear my "buddy".
「やあ、来たかい。席はこちらだよ、同じものでいいかな?」
「ああ……ったく、ぴんぴんしてるな」
「息子に最近あってね。私のことを覚えていてくれたんだ。これ以上の幸福はないね」
「へぇ、そうか……」
 ことりとウィスキーの注がれたグラスを置いて、アサドは語る。
 懐から取り出した息子とのツーショットを見る限りは、少しずつ良い方向へと進展しているようだ。
「……はぁ。まあよかったな」
「ああ。あの依頼では世話になったから、今回は私の奢りということで。好きなだけ食べたまえ」
「懐が広いな……じゃあ遠慮なく。えーと、この本日の日替わり串を」
 店員に注文をするリヒトを横目に、アサドはグラスの中の氷を揺らして。
「……ふふ、君はやはりイカサマなどする人間ではないようだね」
「……は?」
「何、あの依頼で同席したときはついでに君の人間性も知ろうと思っていたんだ。私が救われてしまうのは、想定外だったけれどね」
「……」
 暗い噂は人に伝わるたびに伝染し、仄暗い影を一層濃くし、そしてまた誰かへと伝染し、止まることを知らない。
 噂を知っていたうえで。変わらず接していたアサドに、リヒトは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
「……お、おう。そうか」
「……っと、そろそろ依頼の時間だ。これだけあれば足りるだろう」
 余分とも言い難い金をリヒトに渡すと、アサドは立ち上がった。
「それじゃあ、また会おう」
「もう会うことはないといいな」
「……それは悲しいね」
「なんて冗談だ。……仕方ないから、また会おう」
「ああ。だろう? ふふ、じゃあその時に。
 ――それでは、また。相棒リヒトくん!」
「ああ……また。相棒アサド

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