PandoraPartyProject

SS詳細

計画的犯行

登場人物一覧

月待 真那(p3p008312)
はらぺこフレンズ
真道 陽往(p3p008778)
双銃の狼

●提案は突然に
「なあ真那! 村で祭りがあるんだ、一緒に行かねえか?」
「ん? お祭り?」
 陽往と真那。いつもの二人。
 今日も喜々一発で集合、どこかへ特訓に行こうと誘い誘われ話し始めた開口一番。陽往の口から飛び出たのは彼の故郷の祭り――彼曰く、『七彩の祝祭セブンス・ハーベスト』と呼ばれている、収穫祭へと招きたいのだそうだ。
「んー、行くのはいいんやけど、なんで私なん? たぶんごはんのお店とかあったら絶対そっちいくで?」
「ああ、それは俺もなんだけどさ……いつも一緒にいて、背中を任せて、俺に銃だってくれた真那のことを。
 ……俺は勿論、村のみんなが来てほしいって言ってたんだよ。あとじいちゃんも」
「わしもか」
「うん」
「……私はええよ! おじちゃんも行くんやろ?」
「まあわしが行くならたぶん飯屋として出店じゃがのう……」
「じゃあ決まりだな! でもじいちゃんも行くなら俺達も手伝ったほうがいいよな」
「人手はあって困らんからのう」
 ふむ、と頷き考え込む店主。彼の顔を覗き込みながら考える陽往。
「あ! わかった、閃いた!」
 真那はテーブルの上に完食したどんぶりを置いて、『ごちそうさまでした!』と手を合わせ、そして靴を脱ぎ椅子の上に立ち腰に手を当ててびしっとその『閃き』を告げた。
「私ら三人でお店やって、人の少なそうなときにお祭り見て回ったらいいんちゃう?
 お祭りって名前つくくらいやし、村のお祭りやし、たった一日で終わるなんてことはないやろ?」
 ふふん、と得意げにそのアイデアを話す真那。
 『ほう』と店主は感心し、陽往は『ああ』と頷いた。
「三週間後、三日間に渡って行われる結構大規模な祭りだぜ」
「ってことで、こんな感じはどうやろ!」
「俺は賛成! 普段から世話になってるじいちゃんにもお礼ができるし、みんなにも紹介できるしな。
 じいちゃんの売り上げにもつながるし、うちの村の飯とか、特産品とかでうまいメニューを作ってもらえたら俺にとっては一石二鳥どころか一石六鳥くらいいいことづくめだぜ!」
「はは、まあそれはわしもじゃな。うまいものを色んな人に提供できるチャンスがあるなら、乗らん手はないのう」
「じゃあ!」
「「行こう!!」」
 こうして、三人の七彩の祝祭セブンス・ハーベストへの参加が決まったのだった。

●作戦会議
「ってことで」
「じいちゃん気合入ってんなー……」
「やなぁ、こんな朝早く起こされるって思ってへんかったわぁ……」
 現在早朝。だいだい朝の五時くらい。
 『動きやすい服装で武器を持って喜々一発に朝四時集合。泊まり込みにするので二週間分の着替えを持ってくること』と書かれた手紙が真那と陽往の家に届いた。
 こうして二人は喜々一発の前にいるのだが。
「……遅刻じゃの」
「寝てた」
「でっかいハヤシライスの海を泳ぐ夢みててん……お腹すいた。ふあぁぁぁ」
「寝てたのは知っとる。真那は寝てても食い意地が張っとるのう……聞く前からあくびをするでない。あとハルは嫌そうな顔もやめい。
 とりあえず朝ごはんにしようかの……荷物は適当なところにおいて構わん、何にする?」
「「カハレヤーシうラどイんス」」
「ひとりひとり言わんか??」
「俺はカレーうどん」
「私ハヤシライスがいい。大盛りで!」
「あっ俺も大盛り! カレーは中辛がいい。余力があったら焼き鳥……」
「朝からよおけ食べるのうこいつらは……ちょっと待っとれ」
「「はぁーい」」
 厨房に店主が入るのを横目に、二人はぼんやりと考え込む。
「なぁハルー……」
「んー……?」
「なんでおじちゃんはこんな眠い時間に私らを呼んだんやと思うー……?」
 ぐつぐつと煮える音がする。
 鼻孔を擽るのは食欲を誘うスパイスの香り。鳴る腹の音。ぐう。
 寝ぼけ眼を擦り尻尾をゆらゆら揺らして、陽往は指を立て誤答を自信満々に語る。
「朝ごはん奢るためじゃね……?」
「ああ、そっかぁ……それなら納得やなあ」
「だな……」
「そんなわけなかろう祭りの相談じゃ!!!!」
 どんっと勢いよく皿を二人の前に置き、自分は二人のあまりのカレーとハヤシライスを皿によそって二人の前に腰掛けた。陽往の注文にこたえて三人分の焼き鳥も用意して。
「まあ半分は作戦会議ってのもあるのう。ハル」
「んー?」
「食べたままなら飲み込んでからにせい、のどに詰まっても知らんからのう!?」
「んっ……っし、なんだ?」
 つるんと吸い上げ噛んで飲み込んで。そのころには目もぱっちり開いた陽往が店主の問いかけに応じる。
「まずお前の好みと、村でよく食べたものを言ってみい」
「えー……っと。スパイスのきいたやつとか。肉もそんな感じ。
 あとは果物も野菜も多かったかな。魚はあんまり」
「……だいたいは予想通りかのう」
 いつのまにやら用意していたメモを取り出し、さらさらとメモを取って頷いて。
「はふ、あっつ、うー……んま!! おいしい……で、何が予想通りなん?」
 あつあつのハヤシライスにはふはふと暴れていた真那が問う。
 メモと現行の予定の紙を手繰り寄せながら、皿を置いていないテーブルに広げた店主は二人にそれを見るように促す。
「おお……」
「これおじちゃんが考えたん?!」
「まぁのう、これでも60は生きとるからの」
「まぁでもじいちゃんなら死ななさそうな感じするわ」
「うるせえわい。……それで、真那。いい質問をした。この部分を見てみい」
 店主が指をさした紙、の上に貼られた付箋と、メモを見比べた真那。
「あ?!!!!」
「うわっ?! な、なにが書いてあるんだよ」
「これ!! ハルの言ってた村のことと、おじちゃんが事前に書いてたやつ、ほぼ内容が同じやねん!!!」
「ええ!?? じいちゃんエスパーか?! それか事前に調べたとか……」
 その内容は酷似していた。
 『ふっふっふ』と得意げに店主が胸を張る。で、とまじめに話を区切り、店主は続けた。
「まぁ簡単なことじゃのう。ハル、おぬしが普段頼んでるメニューはなんじゃ?」
「え? 焼き鳥だろ、ラーメンだろ、あとカレーとスパイシーチキン……」
「それらの特徴はなんじゃ?」
「ラーメンはまあメニューにもよるけど……スパイシー?」
「そうじゃ。スパイスのきいたものが多いのう。じゃあ次。そのメニューは肉か魚、どっちが多い?」
「お肉!」
「正解じゃ、真那。反対に魚を見せたハルはどんな顔をする?」
「なんか……苔食べたあとみたいな顔」
「形容の仕方が独特じゃな? まぁそうじゃのう、あまりいい反応はせん。じゃあハルに野菜や果物を見せた時はどんな反応をする?」
「あんまり好き嫌いしてへんなぁ。果物とか野草になるとじいちゃんも知らんやつ持ってきたりしてた気がする」
「そうじゃ。まさかヨモギを餅にしろと言われるとは思っておらんかったわ。ヨモギは知っとったが……。
 まぁそんな感じじゃ。普段好むものから割り出すことは簡単じゃな」
「じいちゃんすげえ……探偵みたい」
「覚えれば簡単じゃ。まぁつまり、若いお主がそういうものを好むということは、大人もそういうものを普段から食べているし、子供にも与えているということじゃ。つまり」
「「つまり?」」
「……ここまで勘が悪いとすぐ詐欺にひっかかりそうじゃのう」
「じいちゃんもったいぶんなよ!」
「せやせや! 答え教えてや!」
「わかっとるわかっとる。つまりはこういうものがハルの村では好まれる傾向にあるんじゃよ。じゃからこういうもんを出そうと思ってな」
「じいちゃんって案外打算的なんだな」
「うるさいわい! まあこんな感じでええか?」
「私はおっけーやで! でもじゃあなんで武器持ってこいとか言ってきたん? 葉っぱとるだけならいらんやろ?」
「肉じゃ」
「肉?」
 店主は二人の後ろに回ると、その肩をポンと叩いて笑顔を浮かべた。
「村の近くのモンスターの肉や野草を取ってきてほしいんじゃ。わしも老いぼれじゃ……試作と期間中の三食保障、しかも無料でどうじゃ?」
「「のった」」
「話が早くて助かるわい。とはいってもヒーラーのおらんパーティじゃ、ケガをしたら適当なとこで戻ってくるんじゃよ」
「うん! じゃあ朝ごはんも食べたことやし行こか、ハル」
「おう! いってきまーっす!」
 元気よく駆け出した二人。
 店主はその背中を見送ると、またメニューを考え始めた。

● ▽ マナ と ハルキ と ジイチャン の レベル が 3 あがった!
「はぁ……はぁ……」
「こんなもんだろ……いったん帰ろうぜ、真那」
「うん……まさか群れやなんて思ってへんかったぁ」
「俺も。太陽が真上だし、そろそろ飯だろ。じいちゃんにこいつらを渡したらたぶん試作もはじまるぜ」
「やな。帰ろ!」
「おう」
 二人の周囲には空の薬莢と魔物の羽が散らばっている。
 はぁ、と疲れた様子で息を吐いた真那に銃を託し、陽往は一度に五匹すべてを抱え背負い歩き始めた。
「あ、ちょ、ハル! 私もちょっと持つから貸してえや」
「うっせ、女にこんな生臭えもん担がせてられっかよ……銃を持って帰ってくれりゃあそれでいい」
「……うん」
 小さくうなずいた真那。
 一歩先を歩く陽往に渡されたのは、あの日プレゼントした二対の銃。少し傷も入っているものの、しっかりと手入れされていることがわかる。
 胸の奥が、あたたかい。
 真那は先を歩む陽往の背中を追って駆け出した。

 つづく。

  • 計画的犯行完了
  • NM名
  • 種別SS
  • 納品日2020年09月21日
  • ・月待 真那(p3p008312
    ・真道 陽往(p3p008778

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