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****写本~鳳圏~

登場人物一覧

加賀・栄龍(p3p007422)
鳳の英雄

 普天斑鳩弥栄。
 普天斑鳩弥栄。
 普天斑鳩弥栄。

 以下に国史を詳らかにする。
 異説を唱える者あらば、忠君愛国の精神足らぬ者と見做してよい。境を接するすべてと闘う我ら鳳圏の臣民は世界に名だたる勇猛果敢な民族であり、これを受け入れぬ者は惰弱貧弱無知蒙昧な忌むべき存在である。臣民は「忠君」「愛国」「挺身」「信義」「礼節」の五か条の徳をこの世に生まれしその時より、普天斑鳩鳳王陛下より賜っているのである。今日鳳圏という国が成立しているのは、全臣民が父祖にして慈母たる陛下の詔を賜る光栄に浴しているからに他ならない。たとえ病床、老齢、三途間近、刀折れ矢尽きようと、忠君がすべてに優先されるのは、我が国の歴史を考えれば自明であり疑うべくもない真実である。櫻都へ異動するその日まで臣民皆火の玉となりて陛下を御守りすべきであり、お国のために戦う事は鳳圏の民としても最も名誉なことである。

 我が国の歴史を学術なる臣民のknifeにて分類することが許されるのであれば、高祖斑鳩時代、前普天斑鳩時代、現普天斑鳩時代とに分けられる。
 高祖斑鳩時代とは、陛下の御父上の時代である。当時の鳳圏は名もなき荒野であり、命をつなぐための水源は穢れた沼地であった。当時の鳳圏はただ蹂躙されるためだけに存在しており、人々は互いに相争い、食糧を奪い合っては猿のように日々を送っていた。ここへ理性の光をもたらしたのが、先代普天斑鳩王こと高祖である。荒地へ入りあそばされた高祖は、裸へわずかにぼろをまとった獣のごとき我らの先祖をご覧になられて哀れに感じ入られ、その広大なる慈愛でもって御自ら荒れ地を開拓なさることを御決めあそばされた。
 高祖はまず荒れ地を七日七晩かけて行脚され、比較的温暖で土地の肥えた場所を選り抜かれた。そこへ『旅人』の英知を持って屋敷を御建てになられ、沼地から水を引かれ、田を開墾なさった。この田はわずか十畳に満たぬ広さではあったが、そこからは季節を問わず瑞穂が垂れ、収穫しても次の日にはまたぎっしりと実っているという奇跡の現れであった。高祖はこの実りを屋敷を訪れる者すべてへ分け隔てなく下賜なされた。このようにしてやっと我らの先祖は飢えから解放されたのである。高祖はただひたすら人が助け合うことの大切さを千の言霊を駆使して説きたもうた。その心根の深さに打たれた我らの先祖は、少しでも高祖へ返礼せんと、屋敷へ住まい、開墾の手伝いをした。瑞穂の田は日に日に広がり、噂が噂を呼び、高祖のもとへはひっきりなしに宿無しが押し寄せる結果となった。彼らは我がことしか考えず、実りを奪い、蔵へ火を放ち、暴虐のかぎりを尽くした。しかして高祖はくじけるということなく、眠る時間を削られてまで教示と開墾にあてられた。いつしか、高祖の教えに感じ入った者たちが、屋敷を中心に家を建て、荒くれものから高祖を守るために柵で囲い、村が生まれた。これが鳳圏の始まりである。
 このようにして見ると、鳳圏という国はもともとが高祖の御為に身を粉にすべく生まれたと言える。その子孫である我々もまた、開闢の祖である高祖の恩恵に応えねばならない。そのためにはいかにすべきか。簡単である。高祖の子たる普天斑鳩鳳王陛下へ忠を尽くすのだ。すなわち、いかに苛烈な戦線といえど嬉々としてこれへ赴き、撤退の二文字なく最後の一兵に至るまで闘争へ身を投じるべし。それは偉大なる祖国への十全にして最高の貢献である。
 さて、高祖斑鳩時代は高祖と村娘の婚姻によって終わりを告げる。より正確に言及するならば、後の普天斑鳩鳳王陛下がお生まれになった時点をもって前普天斑鳩時代の始まりとする。いかに高祖開闢の地といえど一介の村であった鳳圏が、国家としての道のりを歩み始めたのが前普天斑鳩時代である。
 斑鳩様(最上級の礼と親しみを込めて)の起こした奇跡に関しては枚挙にいとまがない。まだいとけない赤子であったころから、斑鳩様は常人とは大きく異なっていらした。泣かず、笑わず、生後三月にして言葉を理解し、一年もすれば少年のごとくに御成長あそばされた。細腕でありながらその膂力は並みの大人でもかなわず、時に手を触れることなく自在に物を御操りたもうた。またこのような話もある。高祖と共に領地をご覧になられた斑鳩様は、雁の群れと出会われた。戯れに高祖が渡した弓を斑鳩様はびょうと撃ち、一矢にて三羽の鳥を落しあそばされた。その御業の不思議に皆魅せられ、誰もが道ですれ違うたびに座礼をしたという。先祖のもつこの真摯なる忠君の意は、現在に生きる我々にも脈々と受け継がれている。今でこそ御簾の向こうの殿上人であらせられるが、斑鳩様は常に我々を見守り支えてくださっている。ゆえに我々はその御心に恥じることなく、日々五か条の徳に生きることが肝要なのである。
 **年8月のことである。斑鳩様は矛をお持ちになられ、邪魔な沼地をかき混ぜられた。するとなんたることか。矛の先から滴り落ちたしずくが、沼地を更地に変えていくではないか。汚れていた水源は清浄な水の湧く泉に変わり、先祖は喜びに打ち震え深い感謝を抱いた。奇跡はこれだけに留まらなかった。斑鳩様がおみ足を地へ触れさせるたびに御足元には花が生え、荒野が花畑に変わった。このようにして、斑鳩様は目の上の瘤であった荒地沼地を豊穣な地へ変えていった。臣民は喜び、より一層日々の仕事へ邁進した。村が街になり、国と呼べる広さになった頃。かつて高祖斑鳩時代、荒くれものが押し寄せてきたように、豊かな土地を妬みそねむ卑しい者どもが戦を仕掛けてきた。
 かの有名な徒爾間の戦いである。三国が包囲網を作りて鳳圏へ襲い掛かるという卑劣な作戦であった。斑鳩様は自ら武器を取りて戦い、その不思議と奇跡とを惜しむことなく下賜されたもうた。ある時には傷病にあえぐ者らを訪われ、その御手をかざして苦痛を取り除かれた。加護を受けた者はそろって、安らかに永久の眠りへついたという。またある時には虚弱ゆえにお国の役に立てぬと嘆く若者へ力を与えたもうた。その若者は三面六臂の姿となりて、炎と毒を吐き獅子奮迅の活躍をした。その咆哮は五里先まで駆け抜け、敵軍を怯えさせたという。臣民は皆よく戦い勇気と勇敢の限りを尽くし敵を退けた。かくして斑鳩様自ら指揮を御取りになられた初陣は、大勝利に終わった。この業績を以って斑鳩様は崩御間近の高祖より王の称号を譲り受け、国を正式に『鳳圏』と称した。これが現在の国体であることは言うまでもない。同時に「忠君」「愛国」「挺身」「信義」「礼節」を五か条の徳を定めたもうた。これにより我ら臣民は心の安寧を得ることができ、一寸先の闇に惑うことなく未来への道を突き進むことができるようになったのである。
 かくして、時代は我らの現普天斑鳩時代へと移る。斑鳩様はその不老と長寿を以って、今この瞬間も臣民の戦勝を御祈願なされている。その御美しきまなざしは臣民すべてへ注がれている。鳳圏におけるありとあらゆる規律は、なべて栄えある斑鳩様からの詔である。ゆえに我ら臣民は七生報国の決意を抱きて規律に従い、兵役という大役を喜んで拝受すべきなのである。

 最後にこの書の取り扱いを此処へ記す。
 一、誤読せし者。
 一、汚損せし者。
 一、暗誦できぬ者。

 上記の者は忠君の精神足らずとして切腹を申し付ける。

  • ****写本~鳳圏~完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別SS
  • 納品日2020年08月11日
  • ・加賀・栄龍(p3p007422

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