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かいほうかん
登場人物一覧
ダラリ。だら、り。そう垂れたのは汗でも蜂蜜でも無かった。奪われた眼球の行き先は誰も知れず、痴れた演技にも果て果て波が疲れている。憑かれた心臓が脈打っても傷まずに『にく』たらしい誰かを映していく。移動する事も面倒臭くて点で腸は転ばない。恥だけが威張る生涯なんてのは恐ろしい蠕動で、全能感を弄っても自らへは至れないのか。殻々と啼いている貝の内側が、硝子製のおまえが咲いている。裂かれるほどの熱情が反芻されれば『沈む』他歩めず、ずるりと融けた輪郭は本性なのか。べたり。ベ、タリ。誑かすように掌をあげて、舐るように貌を覆う……角が立つほど知はないし、棹なら情に流された。そのふたつのまん丸が、一人勝手にぐんるり遊べば如何だろう。歌い手も鳴らし手も問うに飽きて、貪り散らかった思考の厭妥を嗤っている。なくしたものは大切だったのか。いや。イヤ。そんなに重要な『もの』ならば早々に腐る時もない。あの病的な『くさりかた』は如何にも俺に染み付いて、粘性の脆さは強いる以上なのだ。覚悟して迎えた大渦巻きは『常』も纏めて呑み込んだ。ぬぞり。ヌゾ、リ。凛と微笑んだ彼女は現、何処を眺めて何者を想う。ウンウンと唸りのたうっても、ノウの答えすらも出てこない。ふいた法螺と唾が空間をネリ駆けて、欠ける盲目を透していく。徹した歓びは何時になくツマラナク、踏み絶えたアリンコじみておぞましい。何と呼ばれた? 嗚呼。忘れて破棄きったとも。連続した苦労の鎖が『胃袋』の底を攣っておどる。重すぎるから。もう二度と名乗らないよ……よぅく思ったら体現者だなんて『大言』だろう。大事件の下っ端でおまえは牙を研いだ程度だ。得てして餌を食んだろうよ。見て知れば『絵』に描いた名誉――メイメイ眩んだ胴体も現では『たいだ』に決まっていた。顔色が悪いだって。頭が悪いの間違いだろうさ。放り投げたタンパクの皺が、足元で同じものを這っている。これからどうしようかな――ぼとり。ボ、ト、リ。こぼれた言葉が圧し掛かっても『おもさ』は感じない覚えないオボエテイナイ。壁向こうに影が映っていく……塔々と俺が狂っていたのか。顔だけがヘラリヘラリとワザトラシい……惰性だ。怠けて生きて眺めるのは良い。停滞だ。留まり地獄を啜りながら死を選択しよう。洗濯すべき生皮がヒトリと甘みを調整している。初めまして死にぞこない。こんばんは死にぞこない。そこなった部位は如何やって直すんだい。アハハ――ハ――女王の為に! 足を揃えて万歳だ。万々歳と棒棒と阿呆に視えたのだろう! 重ねてきた勲功も水の泡。人魚姫の尾が霞に視えるほどに……コエ。声を無くして消えたいのだ。魔女が居るならばあわれな俺に……戯ぃ。ギ、イ。ギィ……きしむ戸口は精神の所為に違いない。なんで。どうして。※※ちゃん。こっちへ呼ばれた所以は何だい。かき乱れた紅葉の群れが、ドロドロと痛みを冠して在る。呪縛。解放された触れ具合に枷が必要だと縋っているのか。ズシリと番った『錘』は棘以上に鋭いのだ。おまえ。おまえおまえオマエお前……フヌケタ者にノウ判じても無意味無価値と……ゴソリ。ご、そり――取り出した真っ黒は贈り物か。嗚呼。羊羹でも作ろうか。ぬくもりがなまぬるいのか。なまぬるいのがひえたのか。日常と称される暗澹がズルズルと俺を解かすのだ。枕色の世界が羽毛じみてヤワラカク、今こそ外へと身を晒して松明だ! 嬉しいな。嬉しいとも。家々もイエイエも叫んで回れば火の玉滅裂。燃えろや燃えろ。影も形も無くして蒸発だ。知っているさ。一番ダメな自分が残るね――考える血肉なんてのは活火山にポイだ。槍投げにも使えないオ脳なんぞ悩みを殺す一『頭』もないか。あはは。あはは。あはははは――もう笑うしかないや。もうオカシクて息も出来ない。生も見当たらない。見える。視える。宙から落ちた火の子供が、俺の存在を探している。聞こえる。聴こえた。地から沸き立つ水の子供が、俺の存在を隠している。うとうと、ウトウト……此れが夢だと謂うならば。世の中のニンゲンはクダラナイ。引っ張られた髪からくずおれて、ただの塵芥へと絶えてシマイたいのだ。箒と塵取りを出す事も不可能。この莫迦げた混濁世界で『俺』は腕を側頭部へ――おや。作る方法も要らなかった。黒とも白とも灰とも赤とも……。
――ここにある。そこにある。一番最初にあったのだ。
――叩き付けた。
――叩き付けた。
――叩き付けた!
あーはっは。はっはっはっ……見て見て! そんなフリしたって僕は成り損ないで死にぞこないさ。こぼれたチッポケな肉袋の一欠片! のばしてちぢめて揺さ振っても、反応なんて出来る筈ない。もう苦しむ必要は無い。もう望み絶やす術も無い。ふるえる悪夢も今は『無』い。お世話好きな自分を形成すれば好い。何故かって【考える】のはこのザマ! 薄汚れた床にこすり吐けた、心地の酔い人間音……。