PandoraPartyProject

SS詳細

可愛いロバと奇妙なお茶会

登場人物一覧

月原・亮(p3n000006)
壱閃
マッドハッター(p3n000088)
Dr.
ロクの関係者
→ イラスト
ロク(p3p005176)
クソ犬

 さて、パーティーもお開きの時間!
 アリス諸君は皆、心躍った事だろう。さあさ、そろそろ席を立たねば怒られてしまうからね。
 赤の女王に時間泥棒だと怒られるのは私だって余りに好まないさ!
 嗚呼、君達は今は特異運命座標(ローレット)なのだから、まだまだ君達を待っている人たちが居るだろう?
 次回のお茶会? そんなの決まっている! 明日は君のお誕生日なのだから、お誕生日を祝わねばならないだろう!
 え? 誕生日じゃない――?
 何を可笑しなことを言うんだい、特異運命座標(アリス)。
 君の誕生日は何時だって、『明日』来るじゃないか!

 そう言って、無事にお開きになったDr.マッドハッターのお茶会。
 七彩イモムシの対応を終えた後、特異運命座標達が去ったその場所は余りに伽藍洞としていた。
 彼のプライベートフロアとなっている庭園には季節の花々が咲き誇り、楽しむ事が出来た。
 彼が愛用しているサロンは練達の都市の『ドーム』の中に更に小さなドームを作成した小さな植物園の中にある。それ故に、美しい光景を一目見ようとして訪れる者も少なくないのだが……白いテーブルクロスの敷かれたテーブルには菓子類や紅茶が――色味はノーコメントだ――並んでいることから訪れる者も少ない。
 仕事を終えた特異運命座標達が席を立ち、Dr.マッドハッターの隣には尻尾をぶんぶんと振るロクが残っていた。
「やあ、アリス。時間泥棒と罵られることは怖いからね。
 そろそろ席を立つ時間だ。それにしたって、君は帰らなくていいのかい?」
「え? 何言ってるの? マッドハッターさんが見せてくれた時計って、まだ6時だよ!」
 ほらほら、と前足で時計をたしたしたしたし。
 連打し続けるロクに「本当だ!」とマッドハッターはからから笑う。
「流石だ、アリス。良くそれに気付くとはね。『時間殺し』と誹られる事さえない位に君の言う事は的外れではない筈さ! だって、時計の針が6時を指して居ればそれは決まって6時なのだから!
 さあ、どうするんだい? 新たな物語を紡ぐのかい? それとも、その席へと座ってくれるとでも言うのだろうか。お茶は沢山あるさ。君も席について――おっと、いいや、アリス、君は『着席』には向かないのかな? 君の連れたレディたちもテーブルの上が覗けないだろう。構わないさ」
 ちら、とマッドハッターはファンを見遣った。ファン・シンロンというフィールドワーカーの男はマッドハッターの世話役(いいように)使われているのだが、今回もその悪癖が出たとでも言う所か。
 乱雑に茶器や菓子が置かれたテーブルからテーブル下にそっと開いたレジャーシート。その上に茶器や菓子を並べればロクと彼女の連れている『レディ』達の茶会の準備は整っている。
 レディ――ハイパーメカニカル子ロリババアたちがずらりと着席する中にロクがにこにことしているのは奇妙な光景なのだが、マッドハッターは気にせずそそくさと退散するファンが『やべえ』という顔をしているのも気にならない。
 さて、茶会をするのかと思いきやロクは「あのね!」とすくりと立ち上がった。
「実は、もう一人呼びたい人が居るんだ! 私、うっかり忘れちゃってたみたい!
 でも忘れるってよくあるよね! うんうん、仕方ないと思う! だって、人間って忘れられるからいいんだよね! あ、私は人間じゃなくて獰猛なコヨーテだったわ! わんわん! コヨーテはわんわん鳴かないんだっけ!?」
「さあ、私もコヨーテではないからどう鳴くかは分からないのだが、わんわん! という可能性は無きにしも非ずと言った所ではないかね! さあ、誰を忘れていたのか言ってごらん、アリス。きっと君の望む者が此処には訪れる筈さ!」
 芝居掛った一人と一匹。
 尻尾をぶんぶん振るロクはそれはねそれはね、と楽しそうに身を乗り出し――ファンが撤退した方向、先の依頼で『衣装室』代わりにして居た場所へと視線を向ける。
「なんと! 忘れ物というのは、月原・亮くんでした!」
「ウワアアアアアアアアアアアアアアア! まって、やだ、まって」
 酷い叫び声が上がった。
 それもそうだろう。慣れない女装に必死に着替えて普段の学生服に落ち着いて、やっとのこさでローレットに帰ろうと思って居た亮の目の前にはなぜかレジャーシートで二次会モードのマッドハッターとロクと『得体の知れない生物』がいるのだ。
「待って」
「待たないよ!」
「いや、待とうよ!?」
「どうして!」
「か、帰らないと!」
「大丈夫だよ、亮くん! まだ6時だもん!」
 亮の慌てっぷりとロクのマイペースっぷりに振り回される事無く、尻尾がぶんぶんと振られ続ける。
 6時とは言うがいつだってその時計は6時の儘で止まっている。だから、時間泥棒よなんて怒られるのだが、そうして怒る『赤の女王』もここには存在していない訳で、ここで何かしてお叱りに来るトランプ兵だって居ないのだ。
「大丈夫!」
「大丈夫じゃないよね!!?」
 その様子を見て実に愉快だとでも言う様にマッドハッターは「ははは」と文字通り笑った。
「ちょっ、ちょっと待って、笑ってる場合じゃなくない!?」
「いやいや、面白い事もあるものだ。私たちは『旅人』。その旅人が純種(かのじょ)と共に一同に介して茶会をするだけでも面白いのに、『ハイパーメカニカル子ロリババア』なんていうレディもご一緒できるんだ。その時間を浪費したがるなんて! それこそ正しく時間泥棒ではないか!」
「それ、めっちゃ長台詞でいったけど簡単に纏めたら『お茶会しようよ、お腹空いた』でいい!?」
「ああ、構わないさ」
「構わないんだ! あははははは! マッドハッターさんって面白いね!」
 ロクが前足をタシタシとし続けるその動きに合わせて『ハイパーメカニカル子ロリババア』達も首が揺れている。
 衝撃的な程の光景に亮がこわいよおと小さく漏らした。
 誰だってこの光景は怖いかもしれない。今やローレットでは公然の生物になって居る『ハイパーメカニカル子ロリババア』だが亮からすると奇妙な生き物が楽しそうにしているようにしか見えなかった。
(いや、よく見れば可愛いのかな……いやいや? いや、なんで俺、頑張ってラノベ主人公みたいなこと考えて……ほら、ロクちゃん! ロクちゃん、かわいい……うん、わんわんだもん……わんわんは可愛いよな、そりゃ。じゃあ『ハイパーメカニカル子ロリババア』だってロバだもんな? いや、ロバじゃないな? なんだあれ……? ええと……ええと……?)
 亮がちらと傍らの『ハイパーメカニカル子ロリババア』を見た。
 明らかにロクのような可愛い動物形態ではなく、何と言えばいいものか――サラサラヘアーに無機質な機械のボディをロバ風に見立てた生物。亮はそれに謎の恐怖を覚えていた。彼の誕生日にVRで遊んだ際には『衝撃的な存在』としてロリババア達が現れた事に起因しているのだろうか。一種のトラウマ状態ともいえる。
「あ、ロ、ロクちゃん」
「どうしたの?」
「あのさ、俺とロリババアさんたち離してもらっても……?」
「え? ロリババアたちは亮君が好きって言ってたよ!」
「ありがとう!!!! うっれしいなあ!!!! かわいいもんな!!!」
 ――ヤケクソだよね、とはロクは言わなかった。
 尻尾をぶんぶんと振り続けるロクの隣でカタカタと音を立ててるハイパーメカニカル子ロリババア。
 正直、ハイパーメカニカル子ロリババアに異様な恐怖心を感じている亮にとってはどうしたらいいのかは分からない。顔が怖いだなんてものじゃない、ロバの濁流に飲まれた事ないでしょ――俺はあるよ、とドヤ顔でアルテナに語れるくらいには亮にとっては人生初の経験だったのだ。
「お茶会に、ロリババアは必要だと思って!」
「う~ん、俺はそれには同意しかねるかなあ?
 だって、ハイパーメカニカル子ロリババアって名前からしてロボだし、ご飯必要ないよね?
 ってことはお茶会にいなくたっていいよね?」
 だってロリババアだよ、という亮にロクは意味わからないという顔をして。

 こてん。

「首傾げただけ!? ロクちゃん! 分かってよ!」
「え?」
「わかって! 俺が何言いたいかを! ぼやかしてるけどさ!」
「……分かってるよ?」
 だって可愛いコヨーテだもの。分かんない事は首を傾いでへっへと舌を出せばオールオッケーなのだ。
 青色のケーキに顔面を突っ込んだだけのハイパーメカニカル子ロリババア。
 正直サラサラヘアーに青いクリームがついて奇天烈極まりないのだがロクがかわいいねと褒めたたえるのだからロボでもちょっぴり嬉しいのだ。ロボでも。
「いやはや、素晴らしいじゃあないか。ハイパーメカニカル子ロリババア達がこうして喜んでいる。実に愉快だ。私とて、生物と無機物の違いについて考えないことはないさ。そう、心とは何かという所から始まってしまうね。心とは何か。人はどうして何かを考えるのか、例えば特異運命座標(アリス)――いや、亮(アリス)が彼女たちをハートの女王が赤薔薇でない事を叱るかのようにどうして同席するのかを叱咤するのと同じことさ。私達には心が存在している! 気紛れな猫達だってきっと君の事を笑うだろうね、こんなにも素直な心で話すだなんて赤の女王の用じゃないか! ああ、噂をしていれば私達は首を刎ねられてしまうかもしれないね! さあ、楽しい茶会を続けよう。何せ、今日は『君』のお誕生日なのだから!」
「え? ロクちゃん誕生日なの?」
「ううん! 亮くんじゃないの?」
「いやいや、俺はまだだよ。ロクちゃんでしょ」
「違うってば! あ、じゃあ、ハイパーメカニカル子ロリババアかな?」
 マッドハッターにとっては毎日が誕生日なので余りに気にすることはないのかもしれない。遠慮なしに長台詞をしゃべり続けるが、言いたいことはきっと『あんまりハイパーメカニカル子ロリババアのことなんて気にせずにお茶会楽しもうよ』程度なのかもしれないが。
 ある意味で彼は狂っている。それも、真っ当な方面に。Dr.マッドハッターは確かな賢人ではあるのだが彼が『物語の世界から来た旅人』であることからその発言は可笑しさを極めるのだ。誰かの描いた物語――それが彼の居た世界の『アリス』達ではないとしてもだ、彼を描いた物語は多岐にわたる以上彼が『どこの世界の帽子屋であるかは分からない』――でのマッドハッターが『こう』であったが故に、彼はこうした狂った発言を続けているのだろう。
「マッドハッターさんってとっても面白いね!」
「ああ、光栄の極みだよ、特異運命座標(アリス)」
「その、アリスっていうのはみんな揃ってるけど個人名は呼ばないの?」
「勿論呼ぶときは呼ぶさ。例えばミサオやファンなんかは私は個人のネームで確りと呼ぶ。
 ただ、亮(アリス)やロク(アリス)の様に、私にとっては大切な少女(アリス)と同列である相手にはやはり、その名を呼ぶのは礼儀だろう。『大切な少女(アリス)』である以上君達はアリス出し、それ以上でもそれ以下でもない」
「すごいアリスの大暴走って感じの文字列なんだけど、何となくわかったわ!
 うん、分かった気がするからそれでいいの。そういうことよね? あ、でも、それ以上にもそれ以下にもならないの?」
「さあ! そう言った存在を私は持ったことがないからね。何せ私は帽子屋だから!」
 からからと笑うマッドハッターにロクは「ふしぎー!」と前足をたしたしとさせながら笑った。
 レジャーシートの上に置かれたケーキをばくばくと食べながら、「それって犬OKなの?」と聞いた亮に「OKみたい!」とロクは笑う。
 どうしたものか、犬だろうがそうでなかろうがとりあえずなのだが混沌世界は『何となくOK』になるのが凄いのだと亮は「はえー」と小さく呟いた。
 マッドハッターの様な旅人にとってロクのような純種でありながら世界によってえらばれた存在は大変興味深い。
 旅人たちの国家、練達。皆が皆、元の世界へと戻る為の探求を行っているのだから、元の世界に居ながらも使命を科された彼女たちの事を考えるのもまた必要な事なのだろう。
「こうして、茶会の席を設けて呉れた事には感謝しかないさ、特異運命座標(アリス)。
 私は君達と共に会話することが非常に好ましい。何せ、君達はアリスだ。世界に紛れ込み、世界を楽しみ、そして、大いに世界を狂わせる存在なのだ。私もそれでいけばアリスなのかもしれないが可能性には劣る。
 何せ、ミサオや私のような存在は『全てを放棄した』かのように研究へと没頭しているのだからね! 君達の様に何かがあればすぐに駆け付ける。物語があればその物語の登場人物になる『物語に飛び込む者(アリス)』が私は実に、大いに、心の底から好ましいのだから!」
「大好きっていってる」
「うん! それはなんとなくわかった!」
 長台詞はとりあえず『翻訳』可能であることがロクにも亮にも分かってきた。
 コミュニケーションをとる上でもマッドハッターの『一々長いうえに、何を言ってるか分からないセリフ』は2度くらい読まないといけない気さえするのだが、実際の所はそんなことはない。何だかそれっぽい事を言ってるだけなんだなぁと思えばいいだけで――実際彼の日常を振り返ってみてもそんなものなのだろう。
 そもそもにおいて研究者肌ではなさそうに見える彼が『気狂い』研究をしているのもすべては面白いからなのだろう。
 彼という奇天烈なキャラクターがドクターと呼ばれる所以。ひょっとして、私と同じ世界から、なんて疑う事も出来ない程に彼は『物語の登場人物然』としている。
 だからだろうか、彼の傍に居ると妙な程に奇天烈な空気に巻き込まれるのは。
 しかし、そんな空気でもロクは大変心地よかった。何せ、ロクも『奇天烈』だ。
 マッドハッターが『外部から持ち込まれた奇天烈愉快な生き物』とすればロクは『混沌世界が生み出した奇天烈愉快な生き物』だ。寧ろ、その両者だからこそ楽しいお茶会に興じられるのかもしれない――マイペースという意味で!
「俺は!」
 地の文章に思わずツッコミを入れる亮。
 ロクが「んー?」と首を傾げるその愛らしいしぐさに「いやいやいや」と彼は立ち上がる。
「待って! 個性と個性の対決じゃん!?
 ロクちゃんと、ロリババアとマッドハッターって! 俺は!? 俺埋もれちゃわない!?」
「亮くんどうしたの? 面白い!」
「お、面白がってる場合ではなく!」
 慌てる様な亮にロクは前足をタシタシとさせながら笑い続ける。その犬(コヨーテ)仕草をまねするようにロリババアたちもたしたしと動き続けている。
 正直、亮はそれが怖かった。

 亮の脳裏には思い返された――あの恐怖。
 そう、それは彼の誕生日の出来事だった。

 ―――
 ――
 そう、其処にいたのは顔が幼女で身体は老婆のロバモンスター!
 こわい。
 1ターン毎に生み出される子ロバ。しわがれた声で鳴いた子ロバが一斉に鳴き声あげる。
 母胎たるロクからもぼこぼことロバが生まれ続ける。一定数増えた子ロバたち。
 しゃがれた声で鳴いたと思えば――一斉に子ロバすら出産を行う! 怖い!
「楽しい出産シーンをぜひ見てみてね!」
「やだっ!?」
 叫ぶ――月原・亮。お誕生日様。
 ――
 ――――素敵なメモリアルだ。

「待って! 俺の誕生日の思い出が―――!!!」
 その時よりももっとメカメカシイ・ハイパーメカニカル子ロリババアたち。
 可愛いだろうと何だか『煽るようなことを言っている』マッドハッターに亮は「そもそもさあ!」と立ち上がった。
「マッドハッターの中ではみんな可愛いだろ!」
「当然さ」
「ひゅー!」
 囃し立てたロクの後ろでハイパーメカニカル子ロリババア達も囃し立てている。
 がしゃんがしゃんなんていう音を立ててる気がするのは気のせいだろうか。
(絶対俺、ハイパーメカニカル子ロリババアと戦ったら負けるよなあ……)
 そんな気持ちになりながらもケーキに顔面をバシバシ埋めているハイパーメカニカル子ロリババアを見遣る亮。
 もしもこの場でケーキを食べたハイパーメカニカル子ロリババア達が分裂して一斉に鳴き声を上げて襲い掛かってきたならば、亮は悶絶して白目を剥いた事だろう。
 しゃがれた声をあげて、一斉に子ロバ(しかもババア)を出産す様子を見れば誰だってトラウマになるだろう。
「可愛くないだなんて言葉、レディに失礼だろう? 彼女立だって可愛らしい生物でしかも少女(アリス)さ。
 何事も柔軟性を必要とするよ、特異運命座標(アリス)。私がこうして練達で科学者をしているのと同じことではないか。何かを成すなら柔軟に物事を考える。考えた結果――ハイパーメカニカル子ロリババアたちは、かわいいのさ」
「い、いや、ほら、可愛いけどさあ……。いや? うん、か、可愛いけどさ……そのロバは増殖しない?
 ほんとにほんとに、なんかぽんぽん生んだりしない? 大丈夫? 子供だよって鳴きながら産まない?」
「え?」
「え? ――って」
「え?」
「いや、う、産まないよね?」
「え?」
「ま、まって、ロクちゃ……」
「え?」
「えっていわないで!」
 亮の恐怖心を大いに煽るハイパーメカニカル子ロリババア。
 ロクの深い笑みを受けながら……亮は待ってと何度も繰り返したのだった。

「マッドハッター! どこですカ! マッドハッター!」
 何処からか聞こえた声。ファンがそろそろ仕事しろとでも声をかけに来たのだろうか。
 顔を見合わせた亮とロクはマッドハッターをちらりと見遣る。
「ああ、そろそろ終わりの時間のようだね。残念ながら……時計の針がいかに6時を指そうとも『時間泥棒』だと罵る女王は何時だってやってくる。ああ、けれど彼は女王とは言えないかな! トランプ兵士が白薔薇を赤に塗り替えるように、きっと誰かが私を呼んでいると伝言を伝えに来たんだ。首を刎ねられないうちに君達も早く『ローレット』へお戻りよ。幻想国にはただのひとつ、実に楽しいじゃないか!」
「そういえば、マッドハッターさんもワープでちょちょいのちょいだよね!」
 ぶんぶんと尻尾を振ったロクにマッドハッターは「次は諸君らの所へ行くのも実にありじゃあないか。何せ私も旅人、否応なしに『特異運命座標』なのだから」とにやりと笑う。
「何を話し続けているんですか!」
 叱る声が聞こえ、ロクと亮はそそくさと退場していく。
 この場でずっと居ては又何かに巻き込まれるからだ。
 勿論、その後ろには可愛いお友達、ハイパーメカニカル子ロリババアもご一緒だ。

 そうして楽しい茶会は御仕舞い。
「亮くん! また遊ぼうね!」
「うん! 次はその可愛いお友達置いてきてね?」
「え? なんて?」
「なんてって言わないで!! ロクちゃん!!!!」
 ――残ったのはしゃがれた声の大合奏だけだった。

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