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Never say see you never again.
登場人物一覧
●Get the fuck out!
『激しい炎……市民ミュージアム全焼 「熱い、助けて」の声 雪の中の消火活動、間に合わず』
「昨夜未明、××市民ミュージアムにて火災が発生。
近隣住人の通報で駆けつけた消防が消火活動を行い、午前四時に鎮火しました。
当時、建物内からは「死にたくない」と助けを求める声が聞こえたが、消防車が到着する頃には聞こえなくなったと第一発見者は証言しており、焼け跡から男性と思われる遺体が見つかりましたが、損傷が激しいことから警察は殺人の可能性が高いと見て身元の解明を急いでいます」
――ピッ。
カーテンを閉め切った日の差さない暗い部屋。煌々としたテレビに依って浮き彫りになるのは、羽毛布団を被って丸々と膨れた陰だった。リモコンを手繰った細指が、そんなテロップと共に流れる感情の籠もらない流暢さで『此の世の何処かの誰かの悲劇』を報せるニュース番組からチャンネルを変える。
ちっとも笑えないコメディ、随分と昔の火曜の夜8時台の刑事ドラマの再放送。高級そうなスーツを身に纏った有識者がしたり顔で偉そうに弁論を繰り広げるワイドショー。映っているスウィーツこそ美味しそうと思えるのに、歯切れの悪いコメントで全てが台無しな売れない女子アナのグルメリポート。
そう云えばあのニュースキャスターも。以前には不倫疑惑で週刊誌に取り上げられて――梲が上がらず、テレビ局に飼い殺し状態だなんて実しやかに囁かれてたっけ。
――ピッ。ピッ。
窶れて疲れた貌をしている男性が司会を勤める児童向けバラエティ。胸焼けする程、過剰に盛った事実無根のドキュメンタリー。気の利かない甘ったるい恋愛ソング特集。
――ピッ。ピッ。ピッ。
『速報 n市の公共施設火災 遺体の身元判明、役者を志すも――』
「朝のニュースでもお伝えしました××市民ミュージアムの痛ましい火災について、当局にも新たな情報が入りました。
発見された遺体は『空樹麻資郎』さん、十八歳のものである事が判明。
麻資郎さんは事件当日は朝、家から出た後は連絡が取れなくなっておりまして、行方を案じた父親が本日捜索願いを警察に提出。その後DNA鑑定を行い、麻資郎さんのものと一致したそうです。
また、司法解剖の結果、直接の死因は腹部の刺し傷による出血死であると判明。
警察の発表によると、麻資郎さんの遺体は気道の熱傷が見られた他、『
付近の防犯カメラに本人以外の映像は残されておらず、捜査は難航している模様です」
「……、……あれれぇ? おかしいですねぇ? 亜心ちゃんは只、――
●Shut the fuck up!
「聞いた? 彼処の染物屋の息子さん――亡くなったって」
「ええ、聞いたも何も! 殺人事件なんでしょ?」
「彼処、正直な話……お父さんも息子さんも態度悪かったじゃない? こっちが挨拶しても、ぺこりともしないで」
「バイクを乗り回して、危ないったらありゃしなかったし……柄の悪いのと付き合ってるって専らの噂だったもの」
「殺されたって聴いて納得しちゃったって言うかあ……」
「でも良かったわぁ、あの家! 朝から晩まで毎日大喧嘩してたじゃない。
こう言っちゃ悪いけど、此れで漸く静かに過ごせそう」
「ご立派な献花台が作られてたけど、誰が花なんて供えるのよ。あんなの、置くだけお金の無駄なんじゃないの?」
「死んで、悲しんでくれる人なんて居たのかしら?」
「でも女の子がひとりお供えしてるのをテレビで見たわ」
「息子さんと同じ学校の制服の子?
彼処、ここら辺じゃあ部活動なんかにも力を入れてる良い高校なんですけどねえ」
「ひょっとして、さっきあのお家に向かってた子がそう?」
「嗚呼! そうだわ、あの子よ。どう云う関係だったのか気になるわあ」
「彼女とか? 随分と良い子そうなのに、人は見掛けに寄らないってやつ?」
「お葬式もお父さんだけで済ませたとか……何せ、焼け死んだんでしょう。
お別れを、なんて云われても困っちゃうわ」
「そう云う遺体って、臭いも酷いんですって! 其れに……」
「其れに?」
「四肢が捻じ切れてたってニュースでやってたじゃない、心臓も無くなってたって云うのが私、気になって……」
「出たわあ、貴女、本当にドラマが好きなんだから。
にしたって、死に顔も見せないなんて親不幸にも程があるってものよ」
「でも、本当は此れでお父さんも、内心じゃ清清してるんじゃない?
後継が居なくなってしまったのは可哀想だけど」
「抑も、お店を継ぐ気なんて無かったんでしょ。喧嘩も大半は其の事だったみたいだし」
「『役者を目指して居た青年の悲劇』なんて特番やってたけど、どうだか。家の子はああはならないで欲しいわ」
「役者なんて売れなきゃ一銭にもならないものねえ」
「本当に――……」
「