ラクリマと白くて黒い馬

登場人物一覧

夕暮れ時……

「ここは……どこでしょうか」
「ブルルゥゥ……」
　ラクリマ・イースとその愛馬ゼブライースは道に迷ったいた。なぜ道に迷ったのだろうか。
　ラクリマはこの日を休養日ということにして、ゼブライースに乗って軽く散歩することにした。しばらくはゆっくりと歩みを進めていたラクリマとゼブライースだったが、せっかくのいい天気だということで、周囲に人がいないのを確認した後でゼブライースに乗って全力で走ってもらうことにした。そして横切る風の心地よさに身を任せて駆け抜けていたら、道に迷ってしまったわけである。
「困りましたね。残念ながら地図は持っていないですし……おや、あそこに誰かいますね」
　視線の先に近くに住んでいるであろう人を見つけたラクリマはゼブライースに乗ってその人に近づいた。
「すみません、この近くに村や町はないでしょうか？」
「おう、近くに町ならあるぜ。ちょうど帰るところだから俺についてきな」

　男とラクリマは町に着くまでにその町についていろいろと話をしていた。
「それで、町の名物は何ですか？」
「そうだな……実は明日、町で大きな競馬大会が開かれることになってな。そうだ、あんたも参加してみるかい？飛び入りだって歓迎するぜ」
　ラクリマは、この後も特に依頼は受けていないことから少し考えた後に彼の申し入れを承諾した。
「ところでその馬は何て名前だ？」
「ゼブライースです。友人につけてもらいました」
「ほう、ゼブラか。こりゃおもしれぇ名前だな。猫にキャットって名づけるようなもんだ」
　男は軽く笑った後、ラクリマの方に向いて言った。
「それにしてもこの馬はかなりいい馬だ。もしかしたら一位をとれるかもしれねえな……頑張れよ」
　そうしてしゃべっていると、町が見えてきた。

　こうして町に着いたラクリマは近くの宿屋で一泊した後、競馬大会に参加することになった。ラクリマもゼブライースも、このような馬のレースに参加したことはあまり参加したことのないため、表情は落ち着いているが内心ドキドキしていながら参加していた。が、結果としては他の参加者に圧倒的差をつけての優勝である。どうやら闇市でかなりパワーアップしたみたいだ。
　この結果にラクリマ自身や彼を案内した男もかなり驚いたが、一番驚き、慌てふためいたのは大会の主催者である町長と大会の運営であった。彼らは問題を解決するため、男とラクリマを大会本部に呼んだ。
「あー、すまないな。まさか本当に優勝するとは思わなくてな……それで、優勝賞品の話なんだが……」
　男はラクリマに競馬大会の優勝賞品が町長の娘と結婚できることを言った。このことにはラクリマも驚き、その場を逃げようとする。
「って、いや、なんで逃げるんだ？かなりの美人さんだぞ」
「ですが、俺には恋人がいるので……さすがに恋人を置いてほかの人とは結婚できませんね」
　それを聞いて、男はなんとなく察したようだ。
「仕方ねえな。さすがの俺も人の恋路を邪魔する趣味はないからな。ほらよ、これはここら一帯の地図だ。町長のほうには俺のほうで言っとくから、あんたはその恋人のほうに行ってやれよ」
　こうして男とラクリマは別れ、ラクリマは迷子になった時と同じ夕暮れ時に元居た街に帰れた。そして今は別の場所にいる彼、自身の恋人であるライセルに、複雑ながらも心の中で、想いを寄せながらゼブライースとともに眠りについてのであった。

ちなみにこの競馬大会はその後もう一度行われ、今度は普通に終わったが、ラクリマが参加した大会は町の伝説の一つとなったのはまた別の話。