PandoraPartyProject

SS詳細

無礼千万必滅の理

登場人物一覧

ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘



「……神様は居るよ? 私の存在がその証拠」
 『鋼のシスター』ンクルス・クー (p3p007660)。
 彼女は今日も微笑みながらそう説く。



 ──秘宝種レガシーゼロ
 『果ての迷宮』で発見された。恐らくは何らかの遺失技術によって作成された機械体。人型を模しているが、デザインは様々。男女や老若も存在し、生身ではないが意思を持ち、自律行動する『ほぼ生命体』。身体の一部にコアが露出しており、コア部分が本体。
 それがこのシスターの装いで佇む少女、ンクルスの元となるものだ。
「今日はいつもより遅くなっちゃったな……」
 無辜なる混沌フーリッシュ・ケイオスでも最も長い伝統を誇る大国、幻想レガド・イルシオンも初夏この頃。
 日は長めに昇るようになってきたが、それでもこの夕焼け空には少し不安が煽られて。橙に染まる西空を目を細め眺めながら、彼女は帰り足を少し早めた。

「ックソ! あともうちょっとだったのにッ!!」
「?!」
 ンクルスが近道をしようと路地裏へ曲がった時だった。地下へ続く階段の傍、蹲るような体勢で叫ぶ男と目が合ったのは。
「……よォ、お嬢ちゃん? その服……聖職者? なぁ神の使いなら俺ちゃんにお金貸してくんなァい?」
 瞬間ニタリと笑む男に彼女は嫌悪感を抱く。
「……今、初めて会ったあなたに何故?」
「冷たい事ゆーなよォ、俺ちゃん困ってるんだって」
「私も必要資金以外は持ち合わせてないよ、他を当たって」
「ちぇ、聖職者なのに湿気てんなァ! それでも神の使いかよォ」
「今この場に創造神様は関係ないのでは?」
 この人は酷く酔っている。
 果たしてそれが自分になのか、酒になのかは一先ず置いておいて。ンクルスは直感で、と言うよりも顔を近づけられた時に匂ったお酒の強烈な匂いで確信した。
(酒に酔った人は面倒くさくて変な人が多いと巷で聞いていたけどなるほど。……これは確かに面倒そう)
 彼女はいつでも逃げられるように体勢を整え、フラフラしている相手の男をチラリと見た。
「クソォ……どいつもこいつも冷てェぜ……俺ちゃんに神様は居ないのかなァ」
「神様は居るよ?」
 そう言って『あ』と、ンクルスが気づいた時には遅かった。
「神は居るって? ハハッ! そりゃお嬢ちゃん、さすが神の使いの言葉だとは思うぜェ? だがなァ……俺ちゃんはそうは思わないのさァ」
 酔っ払いはわざと酒の匂いを嗅がせるように、またンクルスの顔へ近づく。そんな距離の彼に彼女は少し噎せそうになりながらもグッと堪えた。
「っ、神様……創造神様が居る証拠は私……私と言う存在よ」
「んあ? お嬢ちゃん人間種カオスシードじゃないのかい? 通りでなァんか人間離れしてると思ったぜェ?」
 きっと酔っ払いの戯言でしかないのだろうが、男はそう言って得意げにフフンと鼻を鳴らした。
 その様子を見たンクルスは大きなため息を着く。
「はぁ……そう。まぁこれで神様は居るって解ってくれた?」
「まさか! お嬢ちゃんがどんな存在かは知らねェが、俺ちゃんにとっちゃァ神を信じる材料にはならねェな! 俺ちゃんにとって信じるに値する神は。この目の前にあるカジノで一儲け出来ていたら、その創造神様とやらも信じれたかも知れねェなァ? なんてな!」
「……はぁ」
 ンクルスはと言う言葉にピクリと反応する。神を信じない者はきっと五万と居る、彼女はそれを理解し始めてはいた。理解し始めてはいるが、自分の信じるものを存外に扱われて温和で居れる程、大人にはなりきれてもいない。
「人は自分に都合の良いものしか信じないのさ! 神ならば尚更、創造神様とやらも所詮その程度の神というわけよォ」

「……人の言葉は分からない」
 アッハッハッと嘲笑する男性にンクルスは静かに呟いた。
「アン? なんだって……ぐはっ?!」
 ──瞬時、ンクルスは目を鋭く細め特殊システムsystem:Ellieを発動し、男性を組み付いた。
「私が証であるというのに、神はいないなんてどうかしている。でも信ずるものが違うだけ。そう思うことにした」
 その言葉に続けて男を掴みバックドロップ二連から飛び上がり、パワーボムを決める連続大技を繰り出す。その痺れる痛みに男は声にならない声を上げ悶え苦しんだ。
「……したけれど、私の神様を貶めようとするのなら、容赦はしない。無礼千万必滅の理」

 ──組み付き、抱え、二撃。
そしてトドメ。脊髄を砕く、天罰の爆撃を

 信仰してやまないかの創造神様への侮辱とあらば、力を持たない者一般人でもンクルスの激情に触れてしまう。
「ああ、いけない。こんな所で道草食っちゃったな」
 帰ろう帰ろう。ンクルスは男をその場に残し、何事も無かったようにその場を後にする。

 神様は創造神様はいつだってンクルスの心の中にいる。心臓の位置にある赤色の丸い宝石のようなコアが──



 ──私と言う存在が絶対的ななんだから。

  • 無礼千万必滅の理完了
  • NM名月熾
  • 種別SS
  • 納品日2020年07月06日
  • ・ンクルス・クー(p3p007660

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