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ランドウェラ=ロード=ロウスの夏支度
登場人物一覧
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)。彼は今、運命に出逢っていた。
黒地に虹色の円が広がり、中央で酔った鳥が目を回している。そんなTシャツを見つけてしまったからだ。
「ごめんな、月末に移転するから今日はその準備だけなんだ」
「えぇえ……」
がっくりと肩を落として次の店へと歩み出す。なぜこの青年が平日の商業施設にいるのか。
今年は暑くなるとニュースで聞いたからその前に夏服を買いに来たのだ。
隣の店先にやたらと厚いブーツが置かれていた。パンク系の店らしい。覗き込めば店員の明るい声が届く。
「いらっしゃいませ」
「お願いしても良いですか」
声に誘われてオススメを聞く。店員が持ってきてくれたのは黒の上下だった。
深いVネックのTシャツで正面は飾りの十字架、背中には筆で描かれた棺と聖句。
袖は取り外し可能なタイプで安全ピンが列を成す。
下に履くパンツは赤く染めたガーゼや鎖が飾りついたワイドパンツ。
合わせる小物は二重巻きのスタッズベスト、指ぬきグローブ。
「なるほど。袖が取り外し出来るから包帯を巻かなくても良いやつ」
厚底靴も買いたかったが右腕に止められた。
包帯を巻く手間が省けるのが良いとTシャツだけ買ってさらに隣を歩き出した。
すぐ隣の店も覗くと少し趣が違う。自分から店員を呼んで選んで貰う。
「ファンタジー風はどうでしょう?」
黒の詰め襟シャツは胸部にヒダの装飾があり、裾にレースが広がっている。
その上にジュストコート風のロングベストはダークグリーン、そこには風をイメージした模様が背と胸元に浮かぶ。
黒のスラックスはタイトなシルエットから裾に向かう途中で広がるワイドパン。
小物はカービングベルトとハーネスブーツ。
「このブローチを詰め襟の所につけますと、より高貴な雰囲気になるかと」
悩んで詰め襟シャツ以外を購入した。
幻想のショッピングモールは大きく広い。目的もなく歩き回ると一日いることになる。
だからランドウェラは男性向けの衣料品フロアーを狙ってきていた。
エスカレーターを挟んだ反対側の店を覗く。
「あれ、良いな。試着お願いしよう」
視線の先にいたのはマネキン。
六分丈のリネンシャツは生成色の地に青のストライプ、ミルクティー色のスキニーパンツ。
マネキンの足元にあるキャンパス地のシューズは所謂フラットシューズで歩きやすそうだ。
「小物もオススメありますか?」
「では、ラブラドライトが埋め込まれたバングルとかは?」
じゃあそれもと一式に追加して貰って会計を済ますと次の店に足を向ける。
隣には普段は聞かない音楽が流れていた。蛍光色や目立つ色を使った服が多い。
そこで目に入った服は半袖のパーカーだった。
丸と三角の図形が不規則に配置されただけで、色も白と黒だけというシンプルさだ。
「そこら辺はストリート向けなんで、シンプルなのが多いっす」
店長らしき男が教えてくれた。確かに激しく動いても目立ちそうなデザインが多い。
合わせるならコレが良いと渡されたのは長袖のTシャツにポリエステル素材のジョガーパンツ。
ラフィアで編んだブルトンハットを見せて貰った。
「なら、帽子とパーカー、あとズボンをお願いします」
手持ちにありそうなもの以外を買い店を後にした。今度はスポーツメーカーを中心に歩き出す。
雨も増えるだろうとレインコートを見て、そのうちの一着を身体に宛ててみる。
白の半透明で袖は二部式で長袖にも半袖にもできるものだ。
「合わせるならこういうの、良いっすよ」
話しかけてきた店員が見せてくれたのはメーカーのロゴが大きく入ったオレンジのTシャツ。
下は横に三本線のスウェットパンツだが全体的に細身でスキニー風のシルエット、色は黒白。
これにゴツい腕時計を合わせるのが今風のなのだと言う。
スウェットが履きやすかった為、レインコートと一緒に購入。
次はどんな店があるかと見渡せば店先で商品を陳列する店員が目に入った。
「あの、お兄さんが今着てるのってありますか?」
「ありますよ。揃えますね」
彼を遠目から見て動きやすそうだと思ったのだ。
それはUネックのキャップスリーブTシャツで薄灰。上に天竺編みでレグホーン色のオープンカラーシャツ。
「サルエルパンツの膝下丈なんでビーチでも穿けますよ」
ベビーブルーのそれを受け取り、まとめてカゴへ入れて薄黄色のシーグラスのネックレスを入れる。
「買い込んだな。次を見たら帰るか」
最後に入ってみた店は服より靴に力を入れてるのか、かなりの種類がある。
目に止まったのは菫色のポロシャツで胸元だけロゴが入っている。店員に合う服をお願いし、用意してくれた。
下はアンクル丈のストレートパンツで白、ローカットスニーカーはパステルトーンのマルチカラー。
一式を買って、ようやくランドウェラは商業施設を出た。足は弾み、青空に笑いかけた。