ＳＳ詳細
【Pan Tube】山口さん大突撃！結局あなたは誰なのさ
登場人物一覧
- キャロ・ル・ヴィリケンズ(p3p007903)
P Tuber『アリス』
アリスの『ワンダーランド』という文字の隣には銀髪の髪の少女が微笑んでいる写真が張り付けられている。指さす仕草で指し示すは『山口さん大突撃！ 結局あなたは誰なのさ』というポップな文字だ。
10分後にライブ配信という文字の隣にはリマインダー登録機能が躍っている。流石は練達の叡智――動画投稿サイト「Pan Tube」だ。それが常の事、今日はといえば――
時間になったのか軽快なＢＧＭが流れ出す。P-Tuber『アリス』の配信時間が来たのだ。
動画説明欄には『気づいたら傍に居る……山口さんって！？ インタビュー大突撃！』という説明と共にサムネイルには『山口さん大突撃！結局あなたは誰なのさ』という文字が並んでいた。
「はいどうもこんにちはにゃー♪ 皆のフリータイムのお供、アリスの配信『ワンダーランド』始まるにゃー♪」
にっこりと微笑んだアリス。ソファーが置かれたポップで可愛らしい部屋でひらひらと手を振っている。
「今日はみんなが気になっている『アノ人』にインタビューにゃ！
あ、『アノ人』って喋れるの……？ って疑問はー
＞1:10 流石運営さん！
＞1:11 山口さん期待
「それじゃ、ゲストさんをお呼びするにゃー！ ゲストさーん、いらっしゃーい！」
楽し気なアリスの声と共に扉が開かれる音がする。現れたのはイレギュラーズ達ならばよく見るだろう、そう――『山口さん』だ。
４人の山口さんと、そして『私が考えた最強の従者』達は皆、ゆっくりとソファーへと腰かける。
「今日は来てくれてありがとうにゃ。それじゃ、ゲストさん、自己紹介お願いしても良いかにゃー？」
４人の山口さんと『私が考えた最強の従者』が顔を見合わせる。アリスがにんまりしていればゆっくりと『私が考えた最強の従者』は立ち上がった。
「やあ、リスナー諸君。アリスのワンダーランドへ、アリスの頼みがあったから来ただけだ。
俺こそが『私が考えた最強の従者』だ。よろしく頼もう」
「おおー。流石は『私が考えた最強の従者』にゃ！ えっとー……ここにカンペがあるにゃ。
何々……？ 『私が考えた最強の従者』とは……
『クールなのにアツい一面を持つイケメン。群れるのが嫌いな一匹狼で敵には冷酷。
ヤンデレ属性もあってあと闇の天使で、正義感強くてそれから誰にも負けなくて最強でちょっぴり優しくて私（神）にベタ惚れしていてとにかく一途……という完璧設定の山口さん』らしいのにゃ」
＞2:25 キャラ濃いｗｗｗ
＞2:25 これはｗｗｗ
＞2:26 結局山口ｗｗｗ
そう、結局は山口さんだが、便宜上『従者くん』と呼ぶこととなった。
「じゃあ、ほかの山口さんは？」
「あ、イオ＝ン＝モールで働いてる山口です。今日はＡ君って呼んでください……」
「じゃあ、A君！」
「拙者は山口で候。そうじゃな……便宜上、
「あ、あ、ぼ、僕は、じゃ、じゃあ、Cで……あっ、山口です。何時もアリスちゃん見てます、ファンです」
「わー、ありがとにゃー♪」
＞2:50 俺ら
＞2:50 俺らキタ
「じゃあ、残る山口さんはー？」
「ああ、はい。私はDで構いません。山口と申します。視聴者の皆さんも今日は楽しんでください」
「真面目さんにゃー♪」
従者くんとAからDまでの個性豊かな山口さんがそろった所で、アリスはさっそく、とフリップを取り出す。
山口さんへと聞きたい質問テーマを今回は準備してきたのだという。
「それでは、第１問にゃー♪
『山口さんと一緒に居ると体の力が抜けて失敗が減る（神秘/物理攻撃-15、FB-1）って聞くけど、何かしてるのにゃ？』」
「ふむ。確かに拙共事をそのような願掛けで連れ歩くものが居るというのは聞いておる」
「成程、成程、Bくんもその経験はあるにゃー？」
大きく頷いたBくん。どうやら山口さんたち自体はどうしてなのかは分からないらしい。Aくんに至っては微笑んでいるだけなのだという。
いわゆる
「むむー。これは謎の儘なのかにゃー？ それじゃあ、第２問にゃー♪
『ローレットの初心者向けハンドブックのあるページに動物は依頼中に戯れたりサイズによっては跨って移動できるって書いてあります。
その少し下に騎乗戦闘の効果が無い動物の例として山口さんも挙がってるんだけど……つまり何？ 依頼中にイレギュラーズと戯れたりしてるのにゃ？』」
「あ、あ、そ、それなんですけど……戯れる事も、で、でき……」
Cくんはおどおどしながらそう答えている。成程、とアリスは頷いた。確かに、山口さんもれっきとした動物みたいなものだ。犬や猫とは種別は違うだろうが、ドスコイマンモスとやらが許容される混沌世界なのだから山口さんも種別的には戯れる枠なのかもしれない。
「戯れていただくことは出来ますよ。ほら、膝枕とかでもよろしければ――ね？」
眼鏡をクイッとする仕草を見せたDくんにアリスは「にゃっ」とびくりと肩を揺らして見せる。
＞4:20 美少女同士の膝枕じゃないとNGです
＞4:20 そういえばアリスのゲストはみんな♂の山口さん？
「あっ」
＞4:30 ♀とかいるの？
＞4:31寧ろ山口さんってなによ？
流れるコメントを見ながらアリスは「そうにゃー！」と頷いた。ソファーから立ち上がりびしりとモニター方面を指さすアリスのある意味リスナーに対するサービス精神豊富な動きにコメント欄が激しく動く。
＞5:00 真実は何時も一つ！
――揶揄われているかもしれないが、山口さんの真相に踏み込める素晴らしい質問が流れてきたのだ。
アリスは「リスナーからのコメントだにゃー」と４人の山口さんと１人の従者君に向き合う。
「今、無作為に集めて来て貰った山口さんたちはみんな個性的だけど男の人だにゃー？
コメント欄では『山口さんってみんな男なの？』っていう質問が来てるんだけど……」
「ああ、これについては僕が。プレーンタイプの山口さんは基本的には男性です。
それに、黒髪で眼鏡をかけていてちょっぴり華奢で優しい雰囲気の男性像になるのではないかと……」
やけに詳しく詳細を教えてくれるAくんにアリスは首を傾げる。勿論コメントも『？？』の乱舞だ。
アリスは「それって現実的に誰かモデルがいるのかにゃ？」と首を傾げる。
「
Aくんの答えにアリスは「ええ！？」と大仰な仕草を見せた。イオ＝ン＝モールではないが、そういう所でレジ打ちをしてそうな素朴そうな青年がモデル――！？
新たな事実なのにゃ、とアリスが大仰な仕草を見せた所で、次の話題へ。
「次の質問にいくにゃー。『『従者くん』の方の山口さんは、マジで依頼中そういう風に振る舞ってるの？』」
「勿論だ」
頷く『私が考えた最強の従者』くん。アリスは「じゃあ、この場合アリスが主にゃー」とジョークを交えて笑って見せる。
「ああ、君が俺の主である事には違いない。そうじゃなかったら、こんな所で群れてなんていられるかよ……」
ふい、と視線を逸らす。その様子は正しく説明文の通りの従者くんだ。彼らはアイテム、正直そのフレーバー文章に大きく左右されているのだが、最後の方の文面が引っかかるリスナーは居る。
『ヤンデレ属性もあってあと闇の天使で、正義感強くてそれから誰にも負けなくて最強でちょっぴり優しくて私（神）にベタ惚れしていてとにかく一途……という完璧設定の山口さん』なのだ。
従者くんにとってはアリスが神であって、彼は闇の天使でヤンデレ属性もあって正義感も強くて誰にも負けないくらいに最強でちょっぴり優しくて――そういう仕草を見せて来るのだ。
「乙女ゲーか！（エコー）」
思わず叫んだアリスに従者くんは「君がそう望んだんだ」とシニカルな笑みを浮かべて見せる。黒髪を掻き上げた彼の額には何かの紋章が存在している。
「そ、それは何にゃ？」
「これは……
しかし、いいさ……ほかならぬお前の為ならば、闇の天使と呼ばれようが構わない」
「乙女ゲーか！？（エコー）」
一番ツッコミどころが多いのはやはり従者くんなのかもしれない。
「これが最後の質問にゃー。『ていうか君達戦闘中はどこ行ってるのにゃ？』」
首を傾げてフリップを手にしたアリスが顔を上げれば山口さんたちは笑っていた。勿論、素敵在微笑を浮かべて。
「え？ どこって――。そりゃあ、何時も、傍に――」
４人の山口さんがそう言って立ち上がった後、画面が暗転する。撮影スタッフによる映像の差し込みがあったのだろうか。
ザザーーという音をさせた後、少しの後、Pan Tubuの画面にはシステム的な文字が躍っていた。
――この配信は終了しました――
＞ええええええ！？
＞アリス！？
＞とりあえず乙！
＞アリス無事でいろよ！
画面は切り替わり軽快な音楽と共にアイキャッチが流れる。チャンネル登録はこちら！ とにっこり微笑むアリスと『おすすめ動画』として『【Pan Tube】30万GOLDを闇市に投入してみた！！』『【Pan Tube】宝探しはロマンだにゃん』のサムネイルが表示されたのだった。
