PandoraPartyProject

SS詳細

戦う少女達に未来を

登場人物一覧

レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
レイリー=シュタインの関係者
→ イラスト


 影の領域(ラスト・ラスト)。
 魔種の本拠地へ、イレギュラーズは踏み込み、死力を尽くして戦った。
 この戦いに参加していたのは、イレギュラーズだけではない。
 パンドラの加護を受けた友軍も多数参加していた。
 その一つがニコラ小隊だ。
 不気味な人の部位型終焉獣との戦いは死力を尽くす戦いとなり、小隊員の中にも傷つき一時撤退を余儀なくされた者も。
「無事か?」
 全てを撃退したのを確認した小隊長ニコラ・フォーリーンは傷ついた小隊員を気遣う。
「はい……」
「なんとか」
 傷もそうだが、何より対面するだけでも気が狂いそうになるような敵。
 体力以上に精神を削られそうになるのは、何よりも恐ろしい。
 それでも、二コラ小隊の面々はこの闘いを潜り抜けて。
「え……」
 何処からともなく伝わってくる聞く魔種イノリ討伐、イレギュラーズ勝利の知らせ。
 あちらこちらからそれが伝わり、ニコラや彼女の部下達にもその知らせが届いた。
「勝った……んですの?」
 ニコラは長く続いたこの戦いの終わりを、部下達と共に祝う。

 影の領域をワームホールより無事に脱出したニコラ小隊。
 そこは幻想、王都メフ・メフィート近辺の地下、巨大渓谷だった。
「はあ……、はあ……」
「も、だめ……」
 異質な空間、そしてその環境の中、終焉獣という悍ましい存在との戦い。
 心身共に疲弊しきった小隊員は座り込み、完全に横になってしまう者も。
 ニコラはそんな部下……仲間達を労い、無事なメンバーと共に手分けして治療に当たる。
 そんな中、ニコラ達を発見したレイリーが駆け付けて。
「影の領域を出ていたとは思わなかったよ」
 普段、元騎兵隊の人達と共に行動することもあるレイリーだったが、あの戦いの後、ニコラ達のことが気になって1人、彼女達の姿を探していたのだ。
「お疲れ様、ニコラ殿」
「はい、お疲れ様です……。レイリーさん……」
 知っている顔を目にし、ニコラの顔が綻ぶ。
 ここまで、張り詰めた空気の中で戦い続け、仲間達のことを気がけながら戦い、その無事を願って力を使い続けたニコラは緊張の糸が切れて。
「今は、少しだけ……」
 成長したとはいえ、まだまだニコラは10代の少女。
 心身共に限界を超えていた彼女はしばし、レイリーの腕の中で眠りにつく。
「おやすみなさい」
 ニコラの寝顔を見つめ、レイリーは小さく頭を撫で、改めてお疲れ様と声をかけていた。

 その日は、ニコラ小隊は王都のホテルへと留まって一晩明かす。
 彼女達は体力が戻るまで幻想に滞在の後、天義へ戻っていった。


 あの戦いからしばらく。
 レイリーは領地での仕事などをこなしつつも、スケジュールの合間を縫うように時間を作り、天義へと出向く。
(元気にしているかしら)
 あの後、レイリーも鉄帝へと戻っており、語らう時間があまり無かった。
 先にニコラ達へと連絡を送り、互いの予定が空いていることは確認済み。
 今日はゆっくり交流を深められるはずと、レイリーは馬車の中で再会を待ち侘びていた。

 聖騎士団の詰め所の一角。
 ニコラ小隊は変わらずそこに詰めていた。
「久しぶりね、元気だった?」
「はい、お陰様で」
 ニコラは皆と顔を見合わせ、笑顔でレイリーへと返す。
 天義を中心に活動していたというニコラ小隊。
 心なしか、その姿は以前と違って明るさが感じられた。
 幾度も世話になり、こうしてわざわざ会いに来てくれるレイリーに、小隊員達も嬉しそうだ。
「ふふ、足を運んだ甲斐があったわ」
「それはもう、アナタと再会できて皆嬉しいのですわ」
 レイリーは此処までニコラ達とは幾度も共闘しており、小隊員の名前も覚えているほど。
 そんな彼女達をしばらく見ていたレイリーだったが、明らかに変わった印象を受けていた。
「皆、吹っ切れたようね」
「はい、あの戦いの後、皆に余裕が生まれた気がしますわ」
 これまで出会った子供達はどこか鬼気迫る印象を受けた。
 半ば傭兵のような仕事を受けていたニコラ達は、次から次に舞い込む終焉獣へと対処もあり、一息つく暇もなかったのだろう。

 彼女達はかつて、独立都市アドラステイアにて、マザー・マリアンヌの下で働き、イレギュラーズと敵対していた。
 結果、慕っていた姉を亡くし、マザーの暴走を止められず。
 独自に活動を続ける彼女達はアドラステイアで修めた武力で戦い、しばらくは天義の為に尽くした。
 これまで、何かに追われるように戦っていた少女達だったが、今回の決戦をきっかけにようやく年頃の少女に戻れたのかもしれない。

 楽しそうに語らう小隊員をしばらく見つめていたレイリーとニコラ。
 レイリーは個別に話し、アドラステイアで初めて出会ってからの事、これまでの共闘、そして影の領域での戦い。
 それらを思い返しながら楽しく語らう面々。
 笑いもこだまするその部屋で、話題はあの戦いの後の話へ。
「私は騎士とアイドルの真似事。皆、知っての通りよ」
 名声、とりわけ鉄帝での知名度の高いレイリーだ。
 誰かの助けとなるべく、各地へ出向いて活動を続けている。
 ニコラ達と会うのも、彼女達の力となりたいからだ。
「私のことはいいでしょう。貴方達はどうなの?」
「こちらも変わりませんわ」
 ニコラ達も聖騎士団の手伝いを続けている。
 少しずつ戦火が収まってきていたことで、戦後処理のような仕事も増えてきていた。
 今後、こうした仕事は少しずつ減っていくと思われる。
 だからこそ、レイリーも尋ねてみたかった。
「これからも戦い続けるの?」
「どうでしょうか……」
 これまで、アドラステイアで犠牲になった子供達の為、生き残った自分達は得た力を使って戦うべきだと考えていた。
 それが何よりの供養になるのではないか、と。
「でも、争いのなくなる世界で、それは必要とされなくなるのではないかと、私は思うのですわ」
 小隊メンバーも色々な場所を回り、個々でやりたいことが芽生え始めている。
 例えば、聖都フォン・ルーベルグで店を開きたいという者、または本当の神の教えについて説いてみたいと思う者、
 贖罪の為に戦うといった思考から、これからの世の中の為に何をすべきかという前向きな思考へと切り替わるメンバーが増え始めていたのだ。
 この戦いの中で、少しずつ変わってきていた彼女の……、彼女達の心境。
 レイリーはニコラの独白を黙って聴く。
「私、孤児院を開きたいと考えておりますの」
 この戦乱で、自分達のように親を亡くした子供達はまだまだたくさんいる。
 自分ならば、同じ目線で彼らと接することができる。
「もう2度と、私達のような想いをさせないように……」
「ええ」
 この状況が落ち着けば、ニコラ小隊は解散することになるだろう。
 それは小隊員達の総意でもある。
「もちろん、私達のアドラステイアでの行いは忘れてはなりません、なりませんが……」
 年に一度、アドラステイアへ出向いて、亡くなった子供達の為に供養も考えている。
 過去は変えられないからこそ、未来の為に。
 ニコラ達は前へと踏み出すことに決めたのだ。
「そう……そうね」
 それがあなた達の決めた道ならば。
 レイリーも彼女達の決断を尊重する。
 平和な世界で大きな一歩を踏み出すことに決めたニコラ達。
 その行く末がどうなるのか、レイリーは見守り続けるのである。

おまけSS『新たな門出を祝って』


 ニコラ小隊のメンバーが語ったのは、現地点ではそれぞれの夢。
 もちろん、それに向かって各自は歩み出す。
 戦後処理などがある程度片が付いたらとなるので、少し先の話となるものの。
 その意志を示し合ったニコラ達は、レイリーを交えて少し早い門出の式をこの場で開く。
 まだ20歳にならない少女達は、用意したジュースを分け合う。
 もちろん、レイリーもニコラから受け取ったグラスに注いでもらって。
「それでは、皆の行く末を祈って……乾杯!」
「「乾杯!!」」
 その日は夜が更けるまで、この場の面々は思う存分互いの話を語り、大いに盛り上がるのだった。

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