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星と竜の指輪
登場人物一覧
名称:星と竜の指輪
設定:水天宮 妙見子とムラデンの結婚指輪。青と赤のグラデーションは、夜と明けの空を。妙見子のリングの赤石とムラデンのリングの青石は、お互いを。それぞれ思わせませす。
いわゆる結婚指輪。婚約指輪でもある。
普段使いを意識しているため、装飾は最小限。リングのデザインは一緒で、妙見子には赤の、ムラデン側には青の石(デザストルで採掘される名もなき宝石のようである)がシンプルに飾られている。
……指輪そのものに特筆すべきエピソードは(無論、竜からの贈り物であるので、何らかの魔力は込められているとしても)ないので、ごく普通の結婚指輪。でも、そのごく普通、という所に、少なくともムラデンは価値を見出しているわけである。
そう、特筆すべきエピソードはない。
二人で、どんなデザインにするか悩んで。
ムラデンに引っ張られて、実際に、デザストルで石を採掘するちょっとした冒険をして。
少しばかり亜竜に追っかけまわされながらもちゃんと帰ってきて。
不器用な二人が、お互いの石を職人に指導されつつそれらしく加工し。
ようやく渡せるくらいの綺麗な指輪になって、笑いあった話などは。
特筆すべきエピソードでもあるまい。
何故なら、それはこれからも、そしてこれまでもあった、
あまりにも普通な、二人のにぎやかで大騒ぎの、でも幸せな。
特筆すべきことではない、ありふれた、当たり前の日常、であるのだから。
お互いの宝石が別のカラーなのは、お互いをいつでも想えるように。
いつでもつながっていられるように。
それはさながら、運命の赤い糸のように、二人を永久に繋げ続けるのだろう。
辞めるときも健やかなるときも。
ちょっと喧嘩したときも。
辛い時も。泣きそうなときも。
元気な時も、笑っているときも。
春の暖かな日差しの中でも。
夏の激しい暑さの中でも。
秋の涼しい寂しさの中でも。
冬の厳しい冷たさの中でも。
常に二人は、愛し合うことを誓ったのであるから。
これからの二人の物語を語ることは、もうないだろうが、
それでも、もし彼らの物語が紡がれることがあるならば、
そこにどんな驚くような冒険があったとしても、
その最後に記される言葉は、常に同じであるはずである。
すなわち、
『それから二人は、末永く。
いつまでもいつまでも、幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし』
である。