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僕から見たニルのこと
登場人物一覧
●まずは
――こっちだよ。
終焉の動きが活発になってきた頃。だが休息も必要だと雨泽が手招き案内するのは、練達のオリジナルパフェ専門店。
連日若者たちで賑わうその店は、メニューからパフェを選ぶのではなく、自分で内容を選んでパフェにしてもらうのだ。例えばクリームは何味でどれくらいとか、アイスクリームは何味でどれくらいとか、ソフトクリームは、果実は、フレークは……と、様々なパフェを作ることが可能だ。
「お菓子も選べるんですね」
「そうだよ、上に乗せるクッキーとか、クルクル巻かれたチョコレートとか」
最近は『推しパフェ』なるものが流行っているらしいと笑った雨泽は、真剣な表情で考えているようなニル(p3p009185)をジッと見つめた。食べるのも楽しいけれど、きっと組み合わせを考えることだって楽しいだろう。雨泽は好きな子たちの楽しそうな姿を眺めるのが大好きだから、ニルに尋ねられた『雨泽から見たニル』の話はニルが注文を終えるのを待ってからにする。
●君のこと
ニルの思うニルってどういう感じなのかが僕にはわからないけど、どうなんだろう? 同じなのかな? 違うかな? 違ったら教えてね。なんて、僕もニルにどう見えてるのかな? って気になってしまいそう。
僕から見たニルは『すごくいいこ』かな。良い子で優等生、真面目。あと、心の形と美味しい食べ物への好奇心が強くて、自分の内面よりもどちらかというより他者の想いの方を気にするタイプかなって思っているよ。ニルはいろんなことを聞いてくる――あ、僕は全然負担とか思ってないよって一応伝えておくね。知りたいって思うことは良いことだと思うし、君は僕が答えに窮すると引いてくれるでしょ? だからこれからも答えられる範囲で答えるから、気軽に聞いてくれて大丈夫だよ。……愛はもうわかった、かな? なんかね、最近のニルを見ているとそんな感じがした。
●君の強み
ニルの僕がすごいなぁって思うところは、真っ直ぐなところ……かな。キラキラしてる感じがする。……わからない? ふふ、そうだろうねぇ。だから、キラキラしてる感じがするのだろうね。例えると……そうだな。海辺の白い砂浜とかをブラブラ歩いていて、そこで綺麗な貝殻だったり丸くなった硝子を見つけて拾い上げて、太陽に翳したみたいな感じを覚えるんだ。君を見ていてそういう風に思う人、きっと僕以外にもいると思うよ。……そういう面をかつて持っていたとしても、失われちゃうんだ。僕もそうだと思うし、失くしちゃったからもうニルみたいにはなれない。だからすごいなって。
あと、ニルはすごく優しいね。
●君の弱み
さっきの反対になるかな。優しさは弱さにもつながるよね。躊躇っちゃったりとか、悩んじゃったりとか、自分が傷ついたりとか……ニルもそうなのかなって僕は少し心配になる。ニルが僕や皆が悲しまないようにって思ってくれてることを知ってるし、僕もニルに悲しい思いはしてほしくないんだ。あ、何か僕の弱みみたいになっちゃった。まあ、えっと……優しいと誰かの痛みを貰ってしまうことも多いし、優しい君が誰かを思って悲しくなるように悲しくなった君を見て悲しむ人もいる。……難しいね。辛かったら泣いてもいい。でも僕は君が笑顔の日がたくさんあったらいいなって思っているよ。
●君の食事
僕、ニルとのご飯って大好きなんだ。誘うといつも頷いてくれるから安心して誘えちゃう。それにニルは好き嫌いがないし何でも美味しそうにニコニコ食べてくれるから、僕はニルの笑顔を見ながらの食事も好きだよ。だから余計に誘っちゃうかも。……あ、忙しい時はちゃんと断ってね。僕が君を誘うのをやめることはないし、事前リサーチしておこってなるだけだから。
今日のお店はどう? 気に入ってくれた? うんうん、いいよね。そういえばニルのそれは何がモチーフ? ニルだと水色と黄色かなって思っていたけれど、それは緑と黄色だね。 ……ああ、友人の。大好きなんだ? ついその色を選んじゃうんでしょ? いいことだと思う。料理は五感全てで楽しむものだし、見た目の好みだって大事だよ。ニルの好きが見つかってよかったね。
●おしまい
「僕が思うニルのことはこんな感じかな」
ありがとうございますと頭を下げたニルは、先刻から気になっていたことを口にする。
「雨泽様のは猫なのですね」
「うん。ココアみたいでしょ?」
翼型のクッキーに少し悩んでいたようだったけれど、ニルの気の所為だったようだ。