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ムラデンの黒歴史の話
登場人物一覧
やめろ、探すな聞くな! と言い残してムラデンはどこかへと逃げて行ってしまった。
さておき、ストイシャより語られた、このお話をここに記そう……。
とはいえ、さほど面白おかしいものではないかもしれません。
子供のころには誰もがありがちで、誰もが通るであろう道を、ムラデンも当然のように通ったというお話なのです。
今のムラデンの精神年齢は小学生高学年から中学生くらいを想定しています(ただし、二次元の嘘でだいぶ大人びてはいます。また余談ですが、身長もだいたいそれくらいの男子の平均身長を参考に決めています。最近はちょっと背が伸びてきているかもしれませんね)。ですので、それよりもう少し幼いころ、ゲーム内設定でもおそらく何十年という単位で前になるかとおもいますが、小学校低学年から中学年くらいの精神年齢のころに、ムラデンが書いていた『小説』が、ストイシャの語るところの黒歴史になります。
小説、と仰々しく言いますが、子供の書いためちゃくちゃなそれに過ぎません。フリアノンから流れてきた『物語』を読んだムラデンが、それに影響されて書いたものとなります。
今となっては本好きなのはストイシャの側ですが、ムラデンも子供ながらに、本の読み聞かせのようなことを、ザビーネにしてもらっていた時期があるわけです。そんな時期に物語を読み、憧れて作り上げた、つたない小説。子供のころに誰もが触れる、ごっこ遊びの延長のようなものです。
とはいえ、中学生から見たら、小学生のころに書いた絵だの小説なんてのは、もう恥ずかしくてたまらないようなものでしょう。それを誰かに、特に好きな人に話されたりした日には、まぁ、どうにかなってしまいそうです。
肝心の内容ですが、ムラデン自信を主人公にした冒険ものでした。
悪い魔王であるハーデス=ザビアボロスを、ストイシャを守りながらやっつけ、お姫さまであるザビーネを助ける、という物語でした。
冒険譚にあこがれていた時期らしく、長い旅を続けるわけですが、あまり覇竜領域の外に出たことのないムラデンにとっては、『旅をする世界』の解像度は低く、どれもヘスペリデス近郊の延長線上に過ぎません。ニンゲンの代わりに竜たちが住み、建物や文化もヘスペリデスの『物まね』に準じます。それ以外の登場するニンゲンは、そのどれもが亜竜種でした。さりげなくベルゼーもでました。いいおじさんポジで。
文章は……ちょっと引用してみましょう。
『ぼくはレガど・イるシオンのありたまでやっきた。
まちは、たくさんの、石のおうちがあって、いんなニンゲンが、野さいをうったり、歩いたりしている。
「にぎやかだね」
と、ストイシャがいったので、ぼくは
「あんまり、はしゃぐなよ」
と、柱いした。ストイシャは、うん、と、うなぢいて
「わかった、お只ちゃん」
といった。』
こういった調子でした。勇敢なお兄ちゃんと、戦えるけどまだまだ守らないといけない妹の冒険。そして守るべき家族であるザビーネというお姫様と、悪い魔王であるハーデス。当時のムラデンの心境が十分にうかがえる内容であったのかもしれません。それは今も変わっていないのかもしもしれませんし、もし今書いたならば、もう一人、守りたい人として、登場人物が増えているでしょう。
きっとその人は、物語の中でも随分と無茶をする人なのでしょうが。