PandoraPartyProject

SS詳細

何処ぞの涯から、誰そ彼に向けて

登場人物一覧

ロード(p3x000788)
ホシガリ

●きっかけ
 R.O.O、その待機ロビーにて。
 今日はレアエネミーを探してみよう、と褐色の少年――ロードは思い立った。ゲームを遊びに来ているのだし、毎日クエストばかりでは味気ない。
 であれば、ちょっと趣向を変えたって問題はない。今日はエネミー図鑑を埋める日にしよう。
 と、そんなわけで草原フィールドに出ていった。意気揚々とエネミーを探して一時間と少し。ランダムポップも少しだけパターンが掴めてきた頃合い。

「……全然出てこないな。もしかするとなにか条件があったりするのかな」

 しかし手掛かりは特に無い。どうしたものか。もう少し歩き回ってみるとしても、損は…………。そこまで考えたところで、ふと顔を上げる。そういえば、と思い出すことがあったからだ。
 このフィールドのどこかに、隠されたテレポート装置があるとかなんとか。そしてその先には、見る人によって景色が変わるフィールドがあるという。他のプレイヤーの世間話伝いの、根も葉もない噂を。

「いやでも、噂は噂だからなあ」

 刀を支点にくるくると回るついでに、思考も回らせる。単なる噂だったとしても、このゲームの成り立ちからして一笑に付すことはしがたい。あったらラッキー、くらいのものかも。
 そんな折、ぽよんというSEが近くで鳴る。確か近くでテレポート装置がオンになった時に鳴るものだったはず。
 この近くにそんな装置はあっただろうか? 首を傾げるものの、音の鳴った方向へ歩いてみるとすぐにわかった。丈の長い草に、平べったい円形の装置が紛れていたのだ。装置のテレポート先は「???」表記になっていて、少し興味を惹かれる。
 通常こういった装置は待機ロビーや判明済みの別フィールドにテレポートするものになっているのに、今回はそれとは一目でわからない。そこが印象に残る。

「ちょっと気になる。……入ってみようか」

 もしかすると、探しているエネミーがいるかもしれないし。そんな風に皮算用するものの、不安感はなくもない。
 ふわふわと浮きながらテレポート装置が描く円の内部に入り、テレポート機能をオンにする。
 数秒の後に、視界が白く染まり――。

●その場所

 白い光が収まると、真っ先に視界に映ったのは大きな鳥居だった。赤く塗られたその鳥居は、色が剥げているようには見えない。そして周囲でからからと回る黒い風車が、どことなく不気味に見えて……それに惹かれてか、この場所ならレアエネミーもいるかもしれない――ロードはそう思った。
 そうして鳥居のむこうへと踏み込んでみると同時に、景色が変わる。……するとそこは、先程の和風とはとても異なる風景。神聖さすら伴うような、年月を経た焦げ茶色の巨木の目の前に立っていた。
 いよいよ頭上で?マークが浮かび始めるものの、神聖さの余韻に浸る間もなくまたもや景色が切り替わる。気付けば次は、夕日が照り付ける砂漠のど真ん中に放り出されていた。

「なんだ、これ……?」

 ぽかんと口を開けながら、橙色の空を見上げる。少なくともロードには、このような景色に心当たりはない。R.O.Oの実装済みフィールドにも覚えはない。
 全くもって奇妙な場所だが、同時に少しだけ面白さを感じてもいることにふと気が付く。ちょっとした冒険気分と言い換えてもいいだろう。思わず口角が上がる。
 そうした自分に気が付いたところで、また景色が変わる。

 お次はなんだと身構えてみれば、海の上に立っていた。……のも一瞬の間。足をつければ沈むかも、とびっくりしたせいで、急遽刀の鞘の上に座る。むしろ浮いている方が安心感がある。
 頭上で鴎がががあがあとやかましいが、よくよく目を凝らしてみればただの背景らしい。ちょっとがっかりしながら、これはちょっと拍子抜けか――と思ったところで、鼻先に雪が落ちる。
 脈絡もなくまた景色が切り替わっていることに気が付いた。次はどうやら雪の降る荒野らしい。戦車だろうか、大きな車両の行軍の跡が見える。

 景色が切り替わる。無機質な灰色の街並みに、蛍光色のネオンが眩しい。人影が行き交っているものの、それらすべては黒く塗りつぶされて見えた。……けれどエネミーでもないようだ。この場所にはレアエネミーはいないのだろうか。
 景色が切り替わる。――見覚えのある赤茶色の煉瓦の建物のようで、どこか寒々しい気配がする。お目当てのエネミーもいなかったのだし、と。意を決してその扉を開けてみると――。

 AIが喋るような、平坦な音声が鳴る。

「險俶?蠕ゥ蜈?す繝溘Η繝ャ繝シ繧キ繝ァ繝ウ繧堤オゆコ?@縺セ縺吶?ゅ♀逍イ繧梧ァ倥〒縺励◆」

 ロードには、その意味が分かるだろう。その上で首を捻る。もしかして無駄足踏んだかな、と。
 どうしてこんなエリアが紛れ込んでいたのかは……そういうバグだったのか、それとも。
 まあ、楽しかったし。いいかな? バグ報告を一応送りながら、その日の彼はログアウトした。

  • 何処ぞの涯から、誰そ彼に向けて完了
  • NM名コウガネ
  • 種別SS
  • 納品日2024年02月01日
  • ・ロード(p3x000788

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