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とある万愛器と青なる貴方

登場人物一覧

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

●ご挨拶
 貴方とこのような機会を持てるとは。嬉しく思いますよイズマ。
 季節はもう年の瀬ですか。道理で練達も寒いわけです。
 おや、ご注文はまだなので? 今の時期はケーキの種類も様々ですが……ここの所の連戦でお疲れでしょう。温かいジンジャーチャイなど如何です?
 甘い方がお好みでしたら、たっぷりのクリームとキャラメルソースのラテでも。
 わたしは、今日はダージリンでも。何だかそのような気分ですので。

●貴方の強さ
 さて。貴方と初めてお会いしたのは……ラサの吸血鬼の一件でしたか。『彼』が反転した、まさにあの依頼でしたね。それからは、遂行者サクの件で長くお付き合いを。思い返せばなかなか、お辛い役回りも多かったのではないでしょうか。
 我が同道する依頼では強固な壁として前に立つ姿が印象に残っておりますが、聞けば貴方の本分は音楽だとか。音楽とはまさにアイ感情表現であると理解しております。機会があれば是非、この目と耳で貴方の音をアイして感じてみたいものです。
 貴方がこれまで、どのようなアイを奏でてこられたのか。大変興味がありましたので、勝手ながらローレットの記録をいくつか拝見致しましたが……かなり沢山の依頼に出向かれておいでで。目的も忘れてしばらくアイして読み耽ってしまった事は、どうかここだけのお話に。未知への興味もまたアイですので。
 鋼の盾としての貴方と、音楽家としての貴方。共通する強さがあるとすれば、折れないところ……でしょうか。もちろん良い意味で、ですよ。
 鋼のごとく、譲れず揺るがぬものをお持ちなのだと感じましたよ。気持ちや矜持だけでなく、それを実現するための力もある。ただ、『折れないもの』はいずれ疲れてしまうことが多いものですが……それも要らぬ心配でしょうか。大切なアイ友情も多いご様子ですので。
 しかし、その手にアイがあるということは、その手からアイを失うことも有り得えます。出会いと別れは切り離せぬものですが……まあ、悲嘆するものでもないでしょうね。死ぬまでそのアイを放さなければいいだけですので。

●貴方の大切なもの
 貴方のアイについて感じたことですが。貴方が指揮棒を扱うことも考えると、特定の楽器よりは『楽曲』それ自体へのアイ執着が強いのでは、と。指揮棒もまた、それだけを識るのみでは扱えないもの。曲を奏でる楽器や奏者が、何をどうアイせる表せるかを把握してこその指揮者です。打楽器がお得意なら、尚のこと他の音を聞く必要がありますから。恐らく、そういった調和や、旋律の支えとなることを好まれるのではないでしょうか。
 それから……気になったのは信仰について、でしょうか。信仰心は薄いとのことですが、遂行者に関する依頼を見ても……『イライザ』の楽譜に直接関連のある遂行者だけでなく、他にも多く関わっておられますね。サクもそうですが、彼らの何が貴方をそこまで動かしたのでしょう。彼らの『間違った歴史を修正する』という主義を認められない、というのも理由の一つでしょうが、それだけではないように思えまして。
 神、というものについては……我もそこまで絶対的なものとは考えておりませんが。遂行者達の遂行の手段や、そこへ至る神へのアイ感情は様々であったように思います。
 信仰とはある種の呪いです。呪いとは毒にもなり得ます。自身と、他者へ向けた。これだけの期間、これだけの呪いや毒に寄り添い続けることは……貴方が折れない鋼であっても、無傷とはいかないでしょう。
 実際、過去にも呪いや病におかされていたご様子。信仰に寄り添うこととは全く種類が異なるものではありますが、こちらは盾として前に立つがゆえのもの、でしょうかね。
 調和を支え、指揮棒を持つ方は。いくら奏者との距離を保とうと、近寄らねばアイを聞くことも叶いません。聞こえないアイには、当然寄り添えません。貴方が貴方として、矜持と覚悟と共に生きるために、その鋼の強さは必要不可欠なのでしょうが。
 ……その『鋼』、どうか適度に休めてくださいね。
 無理を続ける方、我はアイしたくなりますので。我の身近にもおいでなのですよ、息をするように無理を続ける御方。……アイしても殺してもアイしても呪っても、その方は直りませんでしたが。

●貴方の愛
 イズマにとっての愛とは……考えることは大変愛おしい興味深いのですが、完全に我の妄想になってしまいますね。ご不快でしたら、いま暫くは虚言としてお聞き流しを。
 とはいえ、貴方は寄り添いはしても踏み込むことを好まれない方。それ以上は怖い、とありましたが。
 その恐怖こそが愛なのではないでしょうか。踏み込んでしまえば、保っていた距離がわからなくなって、進むことも戻ることもできなくなる。近すぎて、愛の対象が正しく見えなくなることもありますね。そうなってしまえば……貴方の『鋼』は、歪んでしまうことでしょう。歪んだ結果新たな形をなすこともありますが、折れやすくなってしまうかもしれない。愛とは、本当に恐ろしく罪深いものです。
 愛しても『鋼』が歪まないものであれば、恐怖もないのでは……と考えましたが。それは恐らく、貴方が音楽へ広く向ける愛になるのでしょうね。その執着もまた、正しく愛ですとも。
 踏み込むことが躊躇われる、のであれば。踏み込まれることについては、どのようなお考えで?
 『距離を保つ』という意味では、いずれにせよ避けたいものかもしれませんが。自分の足で踏み込むのとは異なる点で、受け入れられるという方もおられるので。
 しかし、踏み込むことはこちらの意思で決められますが、踏み込まれるのは突然ですからね。どちらが良い、というものでもないかもしれません。
 貴方が大きく変化する、ということを考えた時……踏み込む側ではなく、踏み込まれる側に立った時か、という気はいたしますね。嫉妬を恐れる貴方を想像できないもので、これはもう有り得ない虚像の域ではあるのですが。
 何方なのでしょうね。貴方の嫉妬を駆り立てるような、愛おしい羨ましい方は。
 貴方が、どうしても意識せずにはいられない程の。強烈で、鮮烈な、嫉妬の音は。

●万愛器のアイする貴方
 イレギュラーズ全体として見れば、貴方自身のイレギュラーズとしての歴史はそこまで長くはない……ようですが。それを補って余りある依頼経験の多さが、貴方を一線級の戦力としているのでしょう。同道する依頼でも、頼もしく思っていますよ。その折れない心からか、あまり悩まれる様子も見えませんからね。
 依頼の傾向としては……音楽が絡むものは勿論ですが、各地域の動きに広くご興味をお持ちの様子。我が何かを提案するまでも無いのですが、敢えて言うなら『一方的な掃討』よりは『主義の衝突』の方が指揮棒の振るい甲斐があるか、とは思いましたね。『掃討』も、できない貴方ではないとは思いますが。如何でしょう?
 盾として、幅広い人助けも行えるでしょう。戦闘が絡まない依頼に於いても、貴方の音楽やご趣味が活かされることが多いのでは、と感じています。
 ……逆に、貴方が意識して避ける依頼とは何でしょう? 死を恐れる……というわけでも無さそうですし……。良くも悪くも、『貴方が著しく変わってしまう』ような依頼でしょうか? 我もその類いのものは好んでご案内したくはありませんが……。
 あとは、過去を回顧するもの、ですとか。語って頂くことは難しそうに思われましたね。非常に残念です……現在の貴方をより深くアイする知る機会を得られないとは。
 無理にとは申しませんが。少しでも気が向かれましたら、『再現性京都』にてお待ちしておりますよ。

 おや、もうこのような時間ですか。
 店内も混んで参りましたし、そろそろ解散と致しましょうか。
 今日はありがとうございました。我にとっては、大変愛しい有意義な時間でしたよ。
 貴方の音楽について、直接アイする楽しむ機会があることを願うばかりです。
 明くる年も、貴方の鋼が失われることの無いように。

  • とある万愛器と青なる貴方完了
  • GM名旭吉
  • 種別SS
  • 納品日2023年12月29日
  • ・イズマ・トーティス(p3p009471
    ※ おまけSS『と■る終■■見■■青』付き

おまけSS『と■る終■■見■■青』

●道ゆく時の狭間にて
 ……なんだ。どういう理屈で繋がってんだこれ?
 あんたも消えた……わけ、ないか。

 どうも『ここ』は、時間が滅茶苦茶らしい。
 オレが消えた一秒後かもしれねえし、十年経ってもこのままかもしれねえし。
 引き伸ばされた一瞬……? とかなんとか、あいつ言ってたけど。その辺はよくわんねえ。

 で?
 話すことも、戦うこともやりきって、もう何もねえと思うんだけど。
 思い残したことがないか、って言われたら……まあ、無くはねえけど。オレにはもう、どうにもできねえから。あとは、信じるしか。

 ちなみに現実はどうなって……、…………そ、っか。消えたのか、神様。世界は、滅びなかった。
 ……変だな。もう、自分が死んでるからかもしれねえけど。今度こそ本物だって信じてた神様が消えても、そこまでショックじゃねえっつか。どっか、安心してる。ガキどもも、トキも、生きてていいんだもんな。……苦しいのは、続くんだろうけど。…………。
 そういや、生き残った遂行者がいるって? 遂行者じゃなくなったんだったか? あるんだな、そんなことも。
 他の遂行者のことはあんま詳しくねえけど、あの女は何か特別っぽいのは聞いてたし。……ま、いいんじゃねえの。

 は? オレから見たあんたがどうだったか?

 ……おだてる理由もねえから正直に言うけど。
 初めは結構いけ好かねえ、腹立つ野郎だと思ってたよ、あんたのこと。イレギュラーズは色々声かけてきたけど、あんたとだけは話が通じねえって思ってた。考え方が頭から違う。
 トキが撃たれた時もそうだ。大人が何の責任を取れるってんだよ。オレ達はオレ達で助け合うしかなかった。今でも大人ってのはよくわからねえし、頼っていいもんだとも思ってねえ。……一番近くで、それなりに信じられた大人があいつだから、ってのもあるだろうけど。
 何より……オレには捨てられない信仰があるけど、あんたには多分、そういうのほとんど無いだろ。オレがどう思うかは関係なくて、運命も善悪も絶対に決まってるってやつ。
 今更わかれなんて言わねえよ。あんたは信仰がなくても、こうやって生き残ってんだし。信仰があったって、こうやってオレ達は消えてくんだし。

 話逸れた。
 まあ、信仰とか大人とか、イレギュラーズとかってのは、抜きにして。ちゃんと戦ってくれたのは、有り難かったって思ってる。レンの名前広められたのは……オレのうっかりだけど。レンだけでも戻してやれたのはよかった。
 狡い手、使われることもあったけど。戦ってる時のあんたはそんなに嫌いじゃなかったと思う。何回か戦う内に、そう感じるようになったっつか。何でだろうな。
 ……結局、今のオレにとって好きか嫌いかで言えば……、……嫌い、ってほど屑野郎ではねえけど。好き……ってほど、手放しになるのも……抵抗あるし……『嫌いじゃない』、ってとこか?
 自分でも煮え切らねえ答えだと思ってるけど仕方ねえだろ、他に言いようがねえんだから。
 もっと時間でもあれば……、いや。時間があっても戦うだけだったと思うな、あんたとは。そっちのが話しやすいって意味で。

 ……姿、あんま見えなくなってきたか。
 もう戻れよ、あんたの時間に。こんな滅茶苦茶なとこ、生きてる奴がいつまでも覗くもんじゃねえ。
 それで、できたら――■■のこ 、あいつ、多分泣■■■か 、 くなっ■、 たえ■■れ――――。

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