SS詳細
soldier stranger
登場人物一覧
これはある軍人の手記である。
『黄泉軍計画』
我が祖国凰圏において
困難な戦況を少数で打開しうる兵士を
生み出すべく進められていた計画。
その唯一生き残りにして未完の失敗作。
それが自分。 伊邪那美 甲式である。
計画は頓挫し、
機密保持の為資料等は破棄されたものの、
出来損ないだろうと使わない手はないと
前線送りにされた自分だが
別段その事において不満は無かった。
自分は兵士であり兵器だ。 その為に造られ、
兵士として鍛え上げられたのだから。
そして幸いにも出来損ないながら頑丈さ、
特に死ににくさにおいては突出していた自分は
敵の砲火を浴びながら単身前進し、
敵砲陣地に突破口を開いたり。
味方の撤退を支援する為、単身で殿をつとめるなど。
その不完全な不死性を活かし戦場を駆け回っていた。
しかし、一つだけ不満があるとするならば
食糧が乏しかったのだ……。
普段は少ない飯を漬物と一緒に湯漬けにしてかっこみ
それすらも無い時は木の根を齧ったり…………
たまの握り飯の日など心が躍ったものだ。
少量ながらも塩の効いたそれは
自分からしてみれば
戦場ではこの上無い贅沢だったのだ。
あとは敵を襲撃した際に
追い剥ぎして糧食を奪い取った事もあったが、
あれもなかなか美味かったな
(その後手記は暫く途切れている)
どうした事か全く理解が追い付かなかった。
いつものように出撃しようと目を覚ますと
全く知らない所に居たのだ混乱もする。
後々理解したのだがイレギュラーズとやらとして
召喚されてしまったらしい。
何の因果か、我が軍の同僚や上官まで居ようとは
本国では神隠し等と言われていそうだが、
何か目的を達成するまではどうやら
国には帰れない様だ。さて、困った……。
なんだこの国の食べ物は!
凄く美味い。 糧食等とは比べるべくもなく美味い。
そして地図を見た限り我らの祖国など
国力で踏み潰されそうな規模の
国家が多数存在するらしい。
どうやら自分達は井の中の蛙と言う奴だった様だ。
さて、食う為に仕方無くではあるが
イレギュラーズとしての仕事をこなすうちに
様々な物を見て、 様々な物にふれる機会があった。
戦の為に生まれ、それしか知らなかった自分には
それは新鮮であり、 稀有な体験だ。
祖国と戦場がこそが生きる全てだった自分を
受け入れてくれたローレットの面々。
その恩に報いる為にも暫くは
ここが自分の戦場となりそうだ。