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鳥籠の蓋は開いている
鳥籠の蓋は開いている
登場人物一覧
緑の葉が次第に黄色へと変わる秋の初め。
アルエットと四音は幻想国の王都で散歩をしていた。
ひらひらと目の前を通り過ぎる黄色の葉っぱを追いかけるアルエット。
地面につく寸前で手の中へ閉じ込めたのが嬉しくて少女は親友へと振り返る。
「ねえ、四音さん! 見て見て! 葉っぱ掴まえたわ!」
手にした葉っぱをくるくる回して、アルエットは四音の前で笑顔を零した。
「良かったですね」
「えへへ……!」
何がそんなに嬉しいのかと四音は思わなくもないが、アルエットが楽しそうならそれで良かった。
四音にとってアルエットとの時間は、ふわふわと優しい気持ちが広がる。
自分は粘菌であり、少女は愛でるべき対象である。自分と彼女らが対等であるとは思っていない。
けれど、アルエットと居る時は自分が人外であることがどうでもよくなるのだ。
これは、執着なのだろうか。
共に過ごした時間が長いから、自分の所有物として認識してしまったのだろうか。
そんなことは無いと四音は心の中で否定する。
仮にアルエットが自分の元を離れたとて、人間はそういうものだと手放せるはずだ。
「四音さん? どうしたの?」
無言になってしまった四音を見つめ、そっと手を握るアルエット。
その愛らしい翠の瞳が美しくて。手を握り返した四音。
「アルエットさんがどこかへ行ってしまうのを想像してしまって……」
「え、私はどこにも行かないよ。ずっと四音さんと一緒に遊ぶの!」
「そうですか。それなら良かったです」
何処かへ行ってしまうなら、翼をもいで鳥籠に繋がなければならなかった。
簡単に手放せる。それは偽りようも無い。
けれど、実際に手放すとは限らないと、四音はアルエットに微笑んだ。