ＳＳ詳細
【Pan Tube】はじめての召喚！？
登場人物一覧
- キャロ・ル・ヴィリケンズ(p3p007903)
P Tuber『アリス』
（軽快な音楽が流れるのと同時、ポップな背景の前で銀色の髪と猫耳を揺らして少女が踊り始める。そしてウィンクしてお決まりの決めポーズをするのと同時に、『Alice in Wonderland』の題字と今回のテーマ、『はじめての召喚！？ ～私、イレギュラーズになる～』がカットインされた。
そんなタイトルムービーが終わったら『ワンダーランド』の本編だ……セリフを邪魔しない程度のテーマＢＧＭとともに、改めて少女の姿が映し出される）
「どもども始めましてにゃー、『アリス』です。私の配信シリーズ『ワンダーランド』へようこそ！
今夜は皆をしばらくの間、不思議な世界にご案内するにゃー！ 皆のフリータイムのお供、ちょっとした暇な時間を楽しく過ごせる配信を目指していくから、よろしくにゃー」
（「ようこそ！」と同時に手招きのジェスチャー。画面の下部にはこの配信のＭＣであるアリスの名前がひょこっと出ると、しばらく存在感をアピールした後に同じようにひょこっと消えていった……その直後。アリスはどこか勿体ぶったような表情を作って、ずいとカメラに向かって顔を近づけた）
「……と、その前にまずは、私のことを説明しておかないといけないにゃー？ もちろん、見てのとおりアリスはPan Tuber。でもでも実は……アリスにはひとつ、皆が驚く事実があるのにゃー！」
（一転、顔を離したら、得意気に胸を張ってみせた……瞬間、ちょっと背中を反らしすぎたせいか、ゴツンというノイズとともにアリスの動きが止まる。痛そうな音は実際には後から合成したものだが、一瞬だけ見せた真顔から察するに、本当にそれなりに痛かったのだろう）
「おっと、危なっ！？ 下がりすぎて家具に頭をぶつけたにゃ……気を取り直して続けるにゃ。
実は、私は……なんと、『
（どどーん、という効果音。
以下しばらく、アリスの説明と同時に、同一内容の解説文章が画面下半分の四角い枠の中に表示される）
「特異運命座標っていうのは、この『
（背景が黒一色で塗り潰されて、ガガーン、という効果音。オーバーリアクションで驚いて、アリスが絶望の表情でしばらく固まっている間、ＢＧＭも止まって効果音の余韻だけが響いていた……のも束の間。
背景はすぐに元通りになって、ＢＧＭも再び始まった。アリスは得意気な表情を取り戻し、再び説明の続きに入る）
「でもでも？ 私たち特異運命座標がいるからには、世界を滅ぼさせたりはしないにゃーーー！！！
……え？ どうやって世界を救うのにゃ、って？
実は特異運命座標には……『パンドラ』という“可能性”を集める力が備わってるにゃ。これが空中神殿の『神託の少女』ことざんげさんが持ってる『空操パンドラ』の中に溜まると、滅びのアークに対抗できるんだにゃ！
……いけないにゃ！ こんなに説明ばっかりだと、暇な時間を寝て過ごせる配信になってしまうにゃ！？」
（そこで画面は素早く横にワイプして、ひょいっと次のシーンに入れ替わった。ＢＧＭも行進曲を思わせる勇壮なものへと変わり、アリスよりも獣度の高い獣人や翼の生えた鳥人、時にはさっぱり正体の判らない謎の生き物さえ出入りする建物の入口が映し出される）
「そんなわけで今回は、ギルド『ローレット』に来てみたにゃ。私の説明なんかより、特異運命座標とは何なのか実際に見て知りたい……そういう人も多いと思うのにゃ。
……というわけで今回は、拠点であるローレットをうろうろして、特異運命座標について知っていきたいと思うのにゃー」
（画面は今度はアリスの顔の形に切り取られてワイプして、ローレットの内部へと切り替わった。ＢＧＭもここではゆったりとした落ち着いたものだ。画面の隅では例の謎生物が、何やら周囲の人々と談笑している……恐らく彼、あるいは彼女は、異世界より召喚された『
突然故郷から切り離されてしまった旅人たちの内心は、彼ら自身が語らぬ限り解らない。いや、旅人のみに限らず、元からのこの世界の住民たち――『純種』の中にも、召喚により今までの生活を失った者はいるだろう。アリスだってそんな中の一人であってもおかしくないが、画面の中の彼女は輝く瞳で部屋を隅から隅まで見渡すばかりで、悲哀など一切感じさせやしない）
「……いけないにゃ。思わず見とれすぎて放送事故になるところだったにゃ」
（アリスは頭を掻いて笑っていたが、ふとカメラに背を向けて、奥のカウンターへと手を振った。奥からは
「なんと……ローレットに足を踏み入れた取材班が見たものは、情報屋兼看板娘、ユーリカ・ユリカさんだったのにゃ！」
「『ユーリカ』じゃなくて『ユリーカ』なのです。間違えたらこうなのです」
（『ユーリカ』のテロップが現れた後、ユリーカが赤茶けたバールを振り上げると慌てて×がついて『ユリーカ』に訂正された。それから画面は暗転し、『しばらくお待ち下さい』の文字とドゲシドゲシという効果音。
再び画面が元に戻ると、アリスの頭の位置には大きな絆創膏の画像が合成されていた……まあ、画面の中のアリスは平然としてるので、実際に殴られたわけではないのだろうが）
「……以上、ユ
（そこで突然、どんがらがっしゃーんという凄い音。どうやら後付けの効果音ではないらしく、アリスが本気でビクッとしたのが判る。
次に、誰かの「おいやめろ強欲の魔種！」という叫び。おほほほほという高笑いが遠くから近付いてきて、画面に細長い耳をしたシスター服の女が飛び込んでくる！）
「はいわたくし、れっきとした
「デ……魔種っていうのは何なのにゃ？」
（半ば画面から押し出されそうになりながら、どうにか軌道修正しようとするアリス。だが闖入者はのべつ幕なしに喋り続けて、最後に厚かましい要求をしてから去ってゆく）
「魔種――特異運命座標とは逆に、活動するだけで『滅びのアーク』を溜めて世界を滅亡に導く絶対悪！ 彼らの『
ローレットの扱う困難な依頼の中には、魔種の討伐もありますの……無理に参加してくれとは申しませんけれど、簡単な依頼からでも構いませんので少しずつ実力をつけて、いつしか皆様が彼らに引けを取らない勇者になって下さることをわたくしは願って止みませんわ！
はい
（映像はそこで唐突に途切れて、画面にはしばらく魔種に関するまとめ文章だけが表示されていた。
それから何事もなかったかのように再び画面が明るくなると、ローレット内にてひとりの壮年男性とアリスの対談が始まった。男の姿に重なって、彼の名前が表示される）
「ここからは、ローレットの創始者にしてオーナー、レオン・ドナーツ・バルトロメイ氏に話を聞いてみることにするにゃ。オーナー、特異運命座標の皆は、いつもどんな風に過ごしてるにゃ？」
（アリスが会釈して尋ねれば、レオンも軽く会釈を返した。画面が彼にズームインする）
「見ての通り、いろいろだね。酒を片手に世間話するヤツもいる、部屋に篭もって研究三昧のヤツもいる。
元々、『召喚された』以外の共通点なんてなかったんだ、中には思いも寄らないことをするヤツだっているワケさ……例えば、動画を撮影するとかね」
「に゙ゃっ！？」
「仕事ぶりだって三者三様だよ。強敵と戦いたいヤツ、人を救いたいヤツ、金のためなら何でもするヤツ……何だっていい。『
（画面は再びオープニングトークと同じものに戻り、ＢＧＭもテーマ曲が流れ始めた。アリスは微笑んで両手を振って、ぴくりぴくりと猫耳を揺らす）
「なるほどー。つまり皆、自分に合った依頼を選びつつ、自由にやればいいってことにゃ？
……というわけで、今回は、特異運命座標の拠点、ローレットをご案内しました！ 楽しんでくれたかにゃー？
今日は少ししか紹介できなかったけど、どうやらローレットには、まだまだ面白い人たちがいっぱいいるみたいにゃ！ 次回になるか次々回以降になるかはわかりませんが、『ワンダーランド』では後々そんな人たちのご紹介もしていきたいと思ってるにゃぁ。
もし皆が今回の動画をいいと思ったら、是非とも高評価・チャンネル登録をお願いしたいにゃ。次回『ワンダーランド』もよろしくにゃっ！」
（底抜けに明るいエンディングＢＧＭがフェードイン。アリスがもう一度手を振った後、画面はチャンネル名やＳＮＳアカウント名の載ったものに切り替わる。
そのままＢＧＭが終わりを迎えると、動画も終わり、画面には『もう一度再生』ボタンと関連動画へのリンクが表示された）
