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ヴァインカル・シフォー。或いは、ピアニストという名の蛮族…。

登場人物一覧

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

名前:ヴァインカル・シフォー
一人称:私
二人称:貴方
口調:~だわ、~ね、~よ
特徴:白い髪、白い肌、蒼い瞳、やせ型、精神的蛮族
設定:
シラホシ・フィルハーモニー管弦楽団に所属するピアニスト。
年齢は20代の半ばほど。
私服は白や青のワンピース、ステージ衣装としては黒を基調としたドレスを好む。
シラホシ・フィルハーモニー管弦楽団に所属してはいるが、彼女の本質は孤独な蛮族……ピアニストである。楽団の仲間たちに親しみこそ感じているものの、心の奥底では「真の戦友」にはなり得ないし、それでいいとも思っている。
彼女に必要なのは、ステージという果て無き戦場と、コンサートという“偉大なる戦争”だけであり、シラホシ・フィルハーモニー管弦楽団に所属しているのも、常にピアニストとしてより過酷な戦場に身を置きたいという想いからである。
ヴァインカルには、これといった夢や野望というものが存在しない。ただ、心ゆくまでピアノを奏で、その後にピアノを弾きながら命を落とせればそれでヴァインカルは満足なのだ。

近年は「ベロニカ・ブルー」という未完成の楽譜を手に入れ、それに魅入られたことで「楽譜の完成」に執心しており、最終的には寝食さえ惜しみ作曲に勤しむようになっていた。すっかり衰弱し、死にかけていたがイレギュラーズの活躍により強制的に「ベロニカ・ブルー」の楽譜を奪われ、正気を取り戻した。
現在は、海洋のとある港町にて療養中。心身の衰弱が癒えたら、シラホシ・フィルハーモニー管弦楽団に合流するつもりのようだ。

海洋の寂れた港町で生まれ、物心ついたころから壊れかけの玩具のピアノで遊んでいた。
最初に鳴らした“ド”の音が、ヴァインカルという孤独な蛮族の原点である。
楽しそうにピアノを鳴らす彼女のことを、両親は応援してくれた。両親の応援に応え、ヴァインカルは「いつかピアニストになって、2人をコンサートに招待する」ことを約束した。
残念ながら、ヴァインカルが10歳の時に、流行り病により両親は他界。ヴァインカルの約束が果たされることは永遠になくなった。
ヴァインカルは万雷の拍手にも、会場が震えるほどの歓声にも興味はない。彼女が本当に欲しいのは「よく頑張った」「上手になった」という両親からの言葉だけだ。
しかし、それは叶わない願いだ。
ゆえにヴァインカルは、生涯、その命が尽きる瞬間まで「孤独な蛮族」であり続けるしか道が無い。

  • ヴァインカル・シフォー。或いは、ピアニストという名の蛮族…。完了
  • GM名病み月
  • 種別設定委託
  • 納品日2023年10月13日
  • ・イズマ・トーティス(p3p009471
    ※ おまけSS『 潮騒と鍵盤。或いは、あるピアニストの叶わぬ望み…。』付き

おまけSS『 潮騒と鍵盤。或いは、あるピアニストの叶わぬ望み…。』

 鍵盤を撫でる。
 白と黒に塗り分けられた鍵盤を、枯れ木のような細い指で押し込んだ。
 ピアノという巨大な楽器は、その見た目からはあまり想像できないが実のところ本質的には弦楽器である。本体内部に張り巡らされたおよそ220~230本の弦を、ハンマーが叩くことによって複雑な音を響かせる。
 鍵盤を弱い力で叩けば、まるで朝の霞のように儚い音を。
 鍵盤を強い力で叩けば、まるで豪雨のように激しい音を。
 奏者の感情や技術は、音の波となって響く。演奏を聴くすべての者の鼓膜から、或いは、身体そのものに音を介して感情を叩きつけるのが、ピアノと言う楽器の特徴だ。
「……まだ、戻らない」
 指先に力が入らない。
 鍵盤を叩く指は、すっかり力を失っている。思った通りにピアノを弾けないというのはつまり、剣士が自分の剣を上手く扱えないのと同義であった。
 とてもじゃないが、人の前で演奏できる状態じゃなかった。ヴァインカルがピアニストとして復帰できるのは、まだしばらくは先のことになるだろう。
 その事実を自覚し、ヴァインカルは思わず笑った。
 思い通りにピアノを弾けないなんて、一体、いつ以来だろうか。ともすれば、子供の頃に壊れかけの玩具のピアノを弾いていた時分以来じゃないか。
「そう思えば、まぁ、悲観するほどのこともないわね」
 楽譜も読めない、満足に音も鳴らせない。そんな子供が、今や一端の戦士に成りあがったのだ。かつて歩んだ道を再び歩くのだと思えば、暫くの間、思った通りの音が鳴らせない程度、なんの苦痛も無いではないか。
「……たしか」
 記憶に残る「ベロニカ・ブルー」を弾いてみた。
 音も、感情も、情緒も足りない未完成の楽曲である。きっと、1000人の人間がいたとして、この曲に“魅了”される者など1人ぐらいしかいないだろう。
 その1人は、つまり“音楽”に傾倒している者である。
 「ベロニカ・ブルー」という未完成の名曲を、自分の手で完成させたいと願う者である。
 願わくば、自分が「ベロニカ・ブルー」を完成させたかったが……。
「今の私に……以前の私にも、きっとそれは叶わなかった」
 「ベロニカ・ブルー」を完成させるにあたって、ヴァインカルには何かが足りない。
 足りないものが何なのか、ヴァインカルには終ぞ理解できなかった。
 そのことだけが、今も悔しい。

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