SS詳細
ヴァンデッタ・アデバヨ。或いは、流砂教会のシスター…。
登場人物一覧
- エルス・ティーネの関係者
→ イラスト
名前:ヴァンデッタ・アデバヨ
種族:幻想種(ハーモニア)
性別:男性
年齢:20代前半(外見年齢)
一人称:私
二人称:貴方、貴様
口調:~です、ます、でしょう
特徴:男の娘、多重人格、嘘が上手
設定:
ラサの各地を移動する“流砂教会”のシスター。
シスターと名乗っているが、実際は男性である。また、当人は幻想種の特徴を衣服で隠し人間種(カオスシード)であると自称する。
そのように、彼の発する言葉と真実には大きな乖離が見られる。彼は日常的に嘘を口にするため、例えいかに真実味を帯びた発言だろうが完全に信用し切ることは出来ない。
もっとも“流砂教会”を利用する敬虔な信者や、商人たちのほとんどは、ヴァンデッタが“嘘つき”であることに、そもそも気付いていないため大きな問題はないと思われる。
かつて深緑に存在した小集落“アデバヨ”の出身。そして、最後の生き残りである。
彼がまだ幼いころにアデバヨは盗賊に襲われ壊滅した。炎に包まれた集落の中から、ヴァンデッタだけが逃げ延び、生き延びた。
以来、数十年にわたって彼は集落を襲った盗賊たちを探している。彼の名前“ヴァンデッタ”は「復讐者」を意味し、彼の姓“アデバヨ”は故郷の名である。つまり、ヴァンデッタ・アデバヨという姓名は、彼が生まれた際に親から祝福とともに与えられたものではない。
ラサへ渡り“流砂教会”を設立したのも、故郷を襲った盗賊団を探すために過ぎない。彼は1台の馬車に乗って砂漠を旅し、信者や商人たちの懺悔を聞いている。
そして、もし信者や商人たちの口にした懺悔の内容が盗賊働きの類であったのなら、彼はその場でその者たちを殺め、遺体をそこらに打ち捨てるだろう。もしも時間があるのなら、遺体が朽ちていく様を、野犬や蟲に貪られる様を、晴れやかな笑みで眺めて過ごすはずである。
ヴァンデッタ・アデバヨにとって「盗賊とはこの世から根絶やしにするべき極悪」である。そして「盗賊以外の悪人」には何の興味も抱いていない。時には悪事に手を染めた理由を親身に聞いて、涙を零すこともする。
“盗賊”だけが、故郷を焼いて、両親や仲間たちを殺した“盗賊”だけが、許されざる罪なのである。
かつてエルス・ティーネ (p3p007325)の領地にも立ち寄ったことがあるため、彼女とは既知の仲である。お互いがお互いを情報の提供者として利用し合う関係だが、時には“盗賊”の処遇を巡って争うこともあるようだ。
- ヴァンデッタ・アデバヨ。或いは、流砂教会のシスター…。完了
- GM名病み月
- 種別設定委託
- 納品日2023年09月04日
- ・エルス・ティーネ(p3p007325)
・エルス・ティーネの関係者
※ おまけSS『盗賊の処遇。或いは、復讐の掟…。』付き
おまけSS『盗賊の処遇。或いは、復讐の掟…。』
エルス・ティーネ (p3p007325)が溜め息を零す。
うんざりとした顔をして、重い金属の扉を開けた。
ひやりとした冷えた空気と、黴と埃の匂いが溢れる。
監獄である。
囚人たちも眠っているのか。しん、と静まり返った通路に、コツコツと微かな足音だけが聴こえている。それから、耳を澄ませば鼻歌らしきものも聴こえた。
「やっぱり……」
再び、エルスはため息を零した。
それから彼女は声を張り上げ、こう言った。
「止めなさい! ヴァンデッタ!!」
ピタリ、と鼻歌が止まる。
エルスの声に目を覚ましたのか、囚人たちが身じろぎする気配がした。
カンテラの明かりを灯し、エルスは暗い廊下を進む。暫く進むと、廊下の角に1人の女性が立っていた。修道服に身を包んだ、穏やかな顔をした女性だ。
もっとも、彼女が本職のシスターではないことも、そもそも女性ではないことも、エルス走っているわけだが。
「あら……御機嫌よう。こんな夜中に監獄へお越しになるなんて、一体どういう用向きでしょう」
いけしゃあしゃあと彼女……否、ヴァンデッタ・アデバヨは言った。
微笑みを称えたヴァンデッタの手には、よく磨かれた拳銃が握られている。
やはり、とエルスは眉間に皺を寄せた。
と、その時だ。
「あぁ? なんだ? 何事だってんだよ?」
騒ぎに気が付いたのか、近くの牢から掠れた男の声がした。ちょうど、ヴァンデッタが立っている位置のすぐ前にある牢獄だ。
たしか、旅の商人から馬を盗んだ罪で捕らわれているケチな盗賊であったはずだ。
「あら、やっとお目覚めですか。それは良かった。貴様には、恐怖し、苦しんで、泣き喚いた末に死んでもらわなければ」
そう言ってヴァンデッタは男の眉間に銃口を向けた。
引き金が引かれ、撃鉄が落ちる。
その、刹那。
「待ちなさい。彼は確かに罪人だけど、死罪になるほどのことはしていない」
エルスの展開した血の鎌が、鉛の弾丸を受け止める。
何が起きたか理解していない男は、目を白黒とさせて驚いているようだ。自分がギリギリのところで命を拾ったことにさえ、気が付いていないようである。
まぁ、どうでもいい。
男のことはどうでもいい。
「邪魔をするんですか?」
「うちの領地で勝手なことをしないでって言っているの」
エルスとヴァンデッタ、2人の視線が交差した。
エルスが鎌を持ち上げる。
ヴァンデッタは、拳銃に次の弾丸を込めた。
そうして、睨み合うこと数十秒ほど……肩を竦めて、ヴァンデッタが銃を懐へしまう。
「分かりました。あぁ、でも……彼が釈放される日だけは教えておいてくださいね」
にこりと笑って、ヴァンデッタはそう言った。
「えぇ、構わないわ」
出鱈目な日時を教えてやろう。
そんなことを思いながら、エルスは本日3度目の溜め息を零す。