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豊穣の友よ
登場人物一覧
名前:鹿ノ子
一人称:僕
二人称:~さん
口調:~ッス、~ッスか?、~ッス!
特徴:神使、英雄殿。神威神楽で努力を重ねる淑女。天香遮那を懇意にする強き乙女
設定:
またも逢いに来てくれたのだな。久方振りに戦果を報告しに来てくれたと聞いている。
貴殿には驚かされるばかりだ。貴殿の活躍はこの耳にもしかと届いておる。さて、前回同様だ。堅苦しいことはこの際なしにしようか。
俺も堅苦しいことは余り好きでは無いのだ。それに、鹿ノ子殿程、豊穣に尽くしてくれておるのだ。もう友と呼んでも良いのではなかろうか?
はは、それは戯言だ。
さて、昔話を聞いてくれるか? 俺は昔、杯を交した友を喪っている。嘆くことはあるが、悔むことはしない。
己が行いを主君が悔んでは誰も喜ばぬであろうからな。その友と違えた切欠が彼が妻君を亡くしたことであったのだ。
無論、俺から見れば彼の敷いてきた此れまでの
それを是と為てきたのは紛れもなく友であった彼奴だったのだ。故、……素直なことを言えば因果応報であったと、そう思う事はあるよ。帝の立場として、だ。
だが、友としては彼の妻君とも会ったことがある。穏やかで、それでいて確りとした娘であった。迷えば手を引き、時に寄り添うような温かな娘であったさ。
俺から見れば、あの太陽のような娘と彼は余り相性という点では良くないように思えたのだが、噛み合っていたようだな。
屹度、あの陽だまりに照らされればあの男の心も解かされたのだろう。
……っと、済まない。無駄なことを話してしまっただろうか。
兎も角、人とは支え合わねば生きては行けぬ。この豊穣を支えてくれているのは紛れもなく鹿ノ子殿、貴殿であると切に思うよ。
貴殿が豊穣に棲まうことを選ぶのならば俺は歓迎しよう。御所にもたまに遊びに来てくれ。
ああ、俺はこの様な立場ではあるが、普通の旅人の男なのだ。友人として気兼ねなく尋ねてくれて構わない。
……豊穣の美しさを、貴殿が見てきたこの国を時折教えて欲しいのだ。
鹿ノ子殿は何を見た? この国のどの様なところが好ましく思えただろうか。
それを聞けるだけで俺は満足なのだ。
これからも、幾久しく。我らが英雄 鹿ノ子殿。貴殿の努力と、そして純愛に感謝を――