ＳＳ詳細
＜親密イベント＞茶屋ヶ坂 戦神 秋奈
登場人物一覧
- 茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
ここは
その名も
主人公はある日突然、勇者へと覚醒。この世界へ召喚された多くの仲間を引連れ、悪を駆逐するべく日々走り回る。その仲間達には様々な性別・容姿・年齢・種族が連なっていた。
今回はその一人とのイベントである。
★0無 『戦神』
──親密度上限達成
親密イベントが発生しました。
●戦いへの衝動を持て余した神
長らく続いていた足場が悪く空気の薄い森を抜けると、目の前に飛び込んできた雲海が広がるこの場所は岩山の頂上。足が竦む程の高さで、この世界では空に一番近いとも言われている。そんな山の頂上にある神殿に勇者一行は修行の度で訪れていた。
その神殿の広間で他の仲間達は思い思いに休み始める。その旅の過酷さからぐったりしてる者から、次の準備をする者など様々な様子が見られている中、勇者も一休みと広間のソファーに腰を下ろしたところで
「勇者さーんっ！」
勇者をそう呼びながら仲間の一人である茶屋ヶ坂 戦神 秋奈がこちらへ向かって走ってきた。彼女は仲間の中でもトップを争う攻撃力と何事も抗う強さを持つ『戦神』と呼ばれる人間らしい。
あとは少し距離があるところからでも彼女だとわかるのはその……特徴的な服装。なんと言う服装なのかまでは勇者まだ聞いた事がない。
そんな彼女が自らこちらへ駆け寄ってきているという事は、勇者にとってなんとも珍しい光景であった。
──どうしたんだい？
「特にどうって事でもないんだけど……ほら、後で鍛錬に付き合って欲しいなぁって！」
──いいよ
「ふっふっふー！ そー来なくっちゃね！ ……それじゃ後で……裏庭で待ってるから！ ちゃーんと相手してよね！」
秋奈はそう楽しげに言いながら広間を後にする。流石『戦神』と言われるだけあって身体を鍛えるのは好きなように見える。仲間になってくれた当時は戦いの最中、秋奈が勇者達の危機を救いそのままの流れで仲間として着いてきてくれた様子ではあったが、今は少しは信頼してくれているのだろうか？と、勇者はそうぼんやりとしながら暫し旅の疲れを癒した。
●
「おっそい！！ ずーっと待ってたのに！！」
──ご、ごめん！！
勇者はうっかり寝過ごしたようで慌てて神殿の外の裏庭へ向かうと、そこには不機嫌そうに頬を膨らませ仁王立ちする秋奈が居た。
「……あなた、絶対寝過ごしたでしょ？？」
──え、なんでわかったの？！
「そんなの、あなたの顔が寝起きっぽいからに決まってるでしょ！」
──うっ、ご、ごめん！！
「ま、長旅で疲れてるからって言うのはわかるけどね。でも約束は守って？」
──はい……。
「よし、じゃあ始めましょ！ はい、これ木刀！」
頬を膨らませて怒っていたかと思えば切り替えは早く、秋奈は持っていた二振りの木刀のうち一振りを勇者へ投げつけた。
──わ、危ない！
「あなたならそのぐらい軽く受け取れるでしょ？ そんな事より早く始めましょ！ 早く鍛えたくて仕方がないの……！」
おっとっとと木刀を受け取る勇者を他所に、秋奈は気合い共に準備万端の様子で。勇者もこれは骨が折れそうだと思いながらも、寝過ごした分も彼女に付き合ってやらねばと木刀を構えた。
「それじゃ──、いくよッ！！」
秋奈はそう言って鉄砲玉のように勇者へ距離を詰め斬り込もうとする。が、勇者もその反射神経でその攻撃を受けきった。
「……いきなりの攻撃でも流石ね！ さぁ……どんどんいくよ！」
一旦距離を引いたかと思えば即座に勇者へ斬り込む。勇者は何とか秋奈についていきながら、彼女の隙を静かに見極める。
「守ってばかりじゃつまらない！ 早くそっちからも仕掛けてきて！」
彼女の重い一撃が勇者の反撃を阻んでいたが、漸く隙を見つけて
「あっ──」
秋奈の木刀をはらうように斬り込めば瞬間彼女が持っていた木刀が宙を舞い、勇者は彼女の首元まで木刀を差し向けた。
「もー！ あとちょっとだったのにぃ……」
──ほんと、秋奈は強いね
ふうとため息をついて、勇者は彼女に差し向けていた木刀を下ろす。
「……私は『戦神』だもの、これくらい出来て当然」
──そう言うもの？
「そう言うもの。だって戦えなきゃ戦神じゃない。平和な世界はもう飽き飽きよ」
──召喚される前にいた世界の話？
勇者の言葉に秋奈は軽く頷いて
「……そうね。でもこうして戦えるなら、私はこの世界であなたを助ける為に、力になってあげるのも構わないのよ？」
──それは心強い！
「ふふん！ まぁ見てなさい、これからどんどん強くなっていくわ！ あなたを打ち負かすくらいに、ね！」
勇者へ指を差したかと思えば、秋奈はそう得意げに笑って。戦いへの衝動を持て余した神にとって、この戦乱の世はまさに愉悦の楽園なのだろうと勇者は微笑みを返した。
