PandoraPartyProject

SS詳細

夢を見るなら止らない

登場人物一覧

しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き

「――後方支援って言ったじゃないですか! この嘘つき!」
 その日、『サンセットスイーパーズ』の拠点に一人の少女の声が木霊した。
 団員達にとっては日常となって終った大声は誰もが大して気に留めるものではない。テーブルを叩いたのは桃色の髪をした三代目団長の娘、しにゃこであった。
 今日はモンスターの討伐依頼がサンセットスイーパーズに舞い込んだ。様々な依頼がブッキングしたため、後方支援員が足りないと云う話にしにゃこが厭々駆り出されることになったのだ。
 勿論、戦闘経験は皆無に等しかったしにゃこは「ええー、無理ですって-」と母シーナに何度も断りを入れていたわけではあるが……。
 シーナからしてみればしにゃこは跡取り娘だ。サンセットスイーパーズの次期団長とも言える。のらりくらりと拒否をして戦闘経験を積む気も皆無であった娘に痺れを切らして後方支援員としてしにゃこを現場に連れ出したのだ。
 着いてみれば足りないのは前線の戦闘員。寧ろ、此処でしにゃこが戦わねば依頼が失敗という段階だ。「謀ったな、クソババアー!」と叫んだしにゃこはほうほうの体で何とか依頼を熟し帰還したのである。「よ、お帰り」程度の冷めた態度で返事をする母にしにゃこの堪忍袋の緒がプツンと切れたのは言わずもがな。
「私は、後方支援じゃなかったんですか!? あれが後方だってんなら、前はどこ!? 敵の胃袋です?」
「アタシがあんたくらいの年にはもうバリバリ前線出てたんだよ、文句言うな」
「文句! 言いますよー!」
 思わず爆発したしにゃこの文句にシーナは鼻をふん、と鳴らして「知らね-」と頬杖を付く。さも興味なさそうにしにゃこから逸らされた視線は「うるせえな」と物語っているかのようで。
「聞いてます!?」
「そ、そうだよ。ねえ? 
 そ、そうは言ってもシーナちゃん……しにゃこちゃんは色々違うし、パパはまだ早かったと思うかなぁ……」
 余りの娘の剣幕に割って入ってきたのはももいろぱるふぇ先生、しにゃこの父親である。本名は何処かに忘れてペンネームで生活してきて早ウン年。
 妻にまでももいろぱるふぇ先生として認識されている漫画家は愛おしい娘と妻の間を取り持つために助け船を出したつもりであったが――
「先生は黙ってろ」
 しゅん、とももいろぱるふぇ先生は肩を下ろした。ひらひらと手を振って取り合う島もないシーナにしにゃこはずいずいと詰め寄った。
「私が死んだらどうするつもりだったんですか!?」
「は? 死んだらそりゃそれまでだったって事だろ」
「しっ、死んだらそれまでって実の娘にその態度っておかしくないですか!?」
 ――そう、一応は親子なのだ。シーナにとっては一人娘。更に言えばももいろぱるふぇ先生からすれば目に入れても痛くない程の愛娘である。
「シーナちゃん」と慌てるももいろぱるふぇ先生にシーナは「傭兵なんてそんなもんだろ? いちいち悲しんでたら身が持たないっての」とぶっきらぼうに言って見せた。
 しにゃこからすれば、それは母親から突き放されたと同義である。だが、シーナからは立派な愛情だ。
 ラサの傭兵団の跡取り娘として生まれたからにはその道に進む可能性が非常に高い。蝶よ花よと可愛がって育てればさっさと砂漠で野垂れ死ぬのが良いところなのだ。
 しにゃこからは大きなお世話であるが、シーナからすれば限りなく娘の生存率を上げる為の教育である。
「私は傭兵になりたいなんて言ってないです」
「……じゃあ学も取り柄もないアンタがどうやって食ってくつもりなんだ?
 まさかアンタお気に入りのパパの絵本に出てきたお姫様になりたいとか言うつもりか?」
 お気に入りのパパの絵本と呼ばれて思わずにんまりと笑ったももいろぱるふぇ先生。今笑っている場合ではないと気を取り直して頭を振った。娘が気に入ってくれている事と、この険悪なムードは切り分けておかねばならない。
「ッ――べ、別に夢見たっていいじゃないですか!」
 夢を見てくれる愛娘可愛い。ももいろぱるふぇ先生の頬が思わず緩んだ。シーナが舌を打つ。今死んでも良いとでも言うほどに幸せそうに笑ったからだ。
「しにゃこちゃん、パパ的には可愛くて戦える傭兵魔法少女みたいなのもいいと思うけどなぁ……」
 ぐいぐいと身を乗り出して見せたももいろぱるふぇ先生の顔面を勢い良く押さえ付けてから「パパは黙ってて!!!」としにゃこは叫んだ。
 がっくりと肩を下ろしたももいろぱるふぇ先生に「先生も適当なこと言うのやめとけよ」とシーナが呆れている。
 ももいろぱるふぇ先生は寧ろ『可愛いけもみみ女の子が頑張ってる姿』が好きなのだ。
 実は猫耳じゃ無かった上に、傭兵団だと死地へ平気で赴いてしまう妻のことも世界一可愛いと認識している。そんな妻が産んだマイエンジェルしにゃこちゃんにだって可愛らしい人生が合ったっていいじゃないか。可愛くて戦えて傭兵魔法少女で、パパの中ではプリティなお姫様なのだが――どうやら今はパパの意見は必要は無い。
「ポンコツもいい年なんだから、いい加減夢見るのもやめとけ。そろそろ将来を考えろ。戦えなかったらどうすんだ。死ぬのか?」
 母の言葉には『お前はバカだから、傭兵になるしかない』と含まれている気がしてしにゃこの我慢は限界が来た。
「うっさいバーカ! いい年なのはどっちですか! 妖怪コスプレババア!」
「ハァ!? オイ! ぶっ飛ばしてやる! ちょっと待てコラァ!」
 可愛らしいポシェット(父作)だけ手にしてしにゃこは勢い良く飛び出した。サンセットスイーパーズの団員達も「はいはい、家出(どうせ三日で帰ってくる)」と言った視線を送っている。
 だが、妖怪コスプレババアという団長への呼び名には流石に何人か吹き出した。可愛らしい外見をしているがシーナは紛れもなくしにゃこの母親で其れなりの年齢だからだ。
「誰だァッ!? 笑った奴!」
 ぎろりと睨め付けるシーナに幾人かの団員が視線を逸らす。その犯人を突き止めている暇はない。しにゃこは勢い良く砂漠を走って行く。
「待ちませーん! もうこんな家、一生帰ってきません! さようなら!!」
「ゴラァッ!? 言葉を撤回しろ!」
 待てとは言わずに拳を振り上げたシーナ。しにゃこは『あっかんべえ』をして走り出す。
「あぁっ、し、しにゃこちゃーん!!」
「先生は追うなって! どうせあんなのが家出した所で野垂れ死ぬのがオチだし。どうせ2日もしない内に帰ってくるだろ」
 団員達より短い『帰還予測』をしてからシーナは「飯にしようぜ」とぶすったれた儘、団員達へと声を掛けた。

 ――余談ではあるが、しにゃこは行く当てもなく一先ずはネフェルストを目指すことにした。
 運悪く奴隷商人と出会い「こんな所を歩いてるガキなら居なくなっても問題は無いだろう」と目を付けられ、声を掛けられた。
 怪しさを察して逃げ出せばモンスターの猟犬を放って追い回して来たのだ。
 あと一歩の所で捕まりかけたがシーナの教育の成果か、何となく撃退する事が叶ったのだ。
 大人は子供を平気で騙す上に絶対に信用してはならないと認識した。ネフェルストにまで連れて行ってあげるなんて甘い言葉は信用ならない。
 ぐったりとしたまま、しにゃこは『パパの漫画』で描かれた憧れの練達へと向かうのであった。
 其の儘長い家出をする事になったが居場所は『パパ』に直ぐに察知されていたのであった。

  • 夢を見るなら止らない完了
  • GM名夏あかね
  • 種別SS
  • 納品日2023年06月12日
  • ・しにゃこ(p3p008456

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