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パルス・パッションと『君』の一日

登場人物一覧

パルス・パッション(p3n000070)
アイドル闘士

 折角のオフがやって来た。天気は晴れ、ラド・バウを眺めに行くのもナンセンス。折角なら普段出来ない事がしたい。
 パルスはクローゼットから何着か取り出してから頭を悩ました。普段は闘士として動きやすい物ばかりを着用するが、今日はオフだ。戦う必要なんて無い。
 女の子らしいフリルいっぱいのワンピースで雑貨屋巡りか、それともスポーティーな格好で公園に行くか、それとも――
 其処まで考えてからパルスは思い立ったようにいそいそと桃色のジャンパースカートを着用しローレットへと向かった。
 ローレットの受付嬢は最初は驚いていたが「待っていて欲しいのです!」と直ぐに椅子から飛び降りた。座っているパルスに声を掛けてくれるイレギュラーズは皆、普段と違う装いのパルスに驚いているようでもある。
 アップにする事の多いヘアスタイルも今日は下ろした。少し高い位置で三つ編みにしたハーフアップにリボンを飾って普段とは違ったスタイルに纏め上げたのだ。
「ふふー、可愛い?」
 パルスは嬉しそうに頬を緩めた。今日はなんたって、特別なのだと秘密を共有するようにイレギュラーズ達へと囁く。
「今日はね、デートなんだ!」

 ――デート。
 呼ばれてやって来たのはパルスにとって一番の友人で自身を一番に応援してくれるファンだった。
 彼女の予定を確認出来ては居なかったけれど、もしも忙しければ一人で幻想の街をぶらぶらと散歩して帰ろうと思っていた。
 お忍びでやって来たラド・バウアイドルの姿に彼女は驚いてくれるだろうか。もしもビックリさせたらお詫びに食べ歩きをしながら雑誌取材で訪れた事のある店に向かうのも悪くはない。
 あの店は、確かローレットに近かった筈だ。ランチは美味しかった。ハンバーグプレートに載っていたサラダのドレッシングを気に入ってついつい自作した事もある位だ。どうしても再現できず、ビッツに泣きついたのも良い思い出である。あの味を彼女に味わって貰うのも良さそうだ。
「あ! こっちだよ!」
 手を振れば、驚いたような顔を彼女はしていた。何時もの明るい笑顔も、大きな声援もない。ぱちくりと瞬く眸が幼い子供の様で可愛らしい。
「今日はオフなんだ。だから、君だけのアイドルになりにきちゃった! ――なーんちゃって?」
 揶揄うように近寄れば叫び出したいと言った様子に唇が震えている。オーバーなリアクションを返してくれるから、何時だって君を喜ばせることが楽しくて、面白くて仕方が無い。
「あ、今日は忙しかった? 大丈夫だったら……もし、暇だったら一緒にどうかな?」
 顔を覗き込んでから了承を頷いた彼女の手を掴んで一気に走り出した。晴れた空の下をずんずんと進んでゆく。心地良い空気に、平穏そのものの石畳の街は絶好のデート日和だ。
「素敵なデートにしようね」
 名前を呼び掛けただけで「え!?」と叫んで目を白黒するのだから、何時までとっても彼女の中ではアイドルの自分が大きすぎるのが一寸だけ悔しいのだ。
 鉄帝での戦いでも一緒に危機を乗り越えた。パルスから見れば『アイドルとファン』と言うよりも、『大切なお友達』――いや、一番の親友でもあるのに。
 自分に嫉妬していることは最後の最後に教えてやろう。アイドルのパルスじゃなくてお友達のパルスを見てと言えば彼女は困ってしまうだろうか。それは、今日の様子を見てから考えよう。
「あのね、混沌ガイドブックに掲載されてたから知ってるかも知れないけれど。
 一寸前に取材で行った凄く美味しそうなクレープ屋さんが此の辺りにあるんだ。フルーツ盛り盛りで、とっても美味しそうな所!
 ミルフィーユ風のもよかったなあ。本当に美味しそうだからビッツを連れてきたのに、ビッツって『そんなの食べたら太るわよ』とか言うんだよ。酷いよね」
 手を引きながら揶揄うように見詰めれば、まだ戸惑っていた彼女が「クレープ屋さん? いいね」と笑ってくれた。太るから嫌だと唇を尖らせるビッツは一口食べてから「甘ったるいわねえ」と文句を言っていたけれど――
「よければ別の物を頼んでシェアしない? ホイップチョコレートも気になるけど、ストロベリーカスタードも気になっちゃうんだ。
 あ、勿論、美味しそうな物があれば選んでね? お腹いっぱいになっちゃったらどうしようか……この後ランチも行きたかったし、雑貨廻りもしたかったんだけどなあ」
 パルスは店舗を見付け、手を引きながらぶつぶつと呟いてから、思いついたように振り返る。
「あ、でも大丈夫か。またオフがあったらこうやって誘っても良い?
 ……一日貸し切りパルスちゃんだよ。その日だけはアイドルをお休みしてるからね。だから、行きたいところがあったら教えて欲しいな」
 君とは、友達だと思っているから。
 少し照れくさそうにそう言ってからパルスは「こっちだよ」と手を引いた。君となら何てこと無い一日を素晴らしい日に変えられる気がするんだ。

  • パルス・パッションと『君』の一日完了
  • GM名夏あかね
  • 種別SS
  • 納品日2023年05月15日
  • ・パルス・パッション(p3n000070
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