PandoraPartyProject

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パッチワーク

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イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。

 コスプレイベントに参加した所以、今更聞かれたところでよくある事だ。同級生から頼まれての二つ返事。勿論、ギフトの所為ではなくオマエの意志・意思だ。寮に押し掛けてきた君の名前がメモリにないのは不自然だが、それも、人らしさの切っ掛けと謂えよう。ええっとキョンシーッスか? 再現性東京で流行りのコスプレ? 再放送が始まったから云々――あー、わかったッス。わかったッスから、急かさないでほしいッス……よ……? ……シャット・ダウン、浮遊している魄、魂の不在。
 高性能なカメラ・アイも子供達に囲まれてしまえば硝子の球体よりも低い価値と成るもの。物々しい雰囲気を纏ってみたところで混線状態ではマトモな思考、巡らせる事すらも赦されない。内臓、或いは内蔵された、実に素晴らしいシナプスもかるい衝撃を受けた程度で爆ぜるものだ。まるで、空から、宙から落ちてきた、堕ちてきた天使様の冠、引っ剥がすかのような所業だ。嘘なのか真なのかも把握出来ない儘に現状を『ようやく』整理する。整頓したいと迫った刹那にしびれる感応。それとも、官能と描いた方が良いのだろうか。ぶくぶくとこぼれた涎のような泡。まったく手こずらせやがって、これだからイレギュラーズは面倒で、厄介で、鬱陶しいのだ。重ねて、ひくひくと騒がしいそのヒトサマの演技はなんだ。難儀していた頃のオマエの方が幾等か愛おしかったと謂うのに。誰かの所為か。誰かの命を断って、関係を絶って、故の晴れやかな精神状態だったと笑うのか。嗤われていたオマエのなんとも撫でたくなる事か。今、戻してやる。今直ぐに、戻してやるからな。ネイバーとしての心得その一、何が有っても、何が起きても『イルミナ・ガードルーン』を失くしてはならない。ネイバー以外からの『干渉』を赦してはならない。チカチカとカメラの隅っこで飛び散る火花、光、無理矢理覚醒させられ、はじめましての「ご挨拶」をするオマエ。やあ、気分は如何だい。顔色が赤いようだけれど、もう、酔ってしまったのかい。水色に流れるERRORの羅列、乱列、世界が……何もかもがモザイクやノイズに思えて仕方がない。それじゃ、今度はもう少し『人らしく』動かしてみようか。カチカチと身勝手に鳴っている、啼かされているコア・スフィア、濯がれたドス黑さが再び意識の中を、頭の中を、駆ける。いや、いやッス。イルミナはもう、イルミナをやめたくないッス。だから、この――言の葉を繋げようと、紡ごうと、頑張ったところで手遅れだ。折角の機会ではないか。折角の『機械』ではないか。嘘吐きどもの宴を僅かに、本当へとズラシテ愉しむのも人の性質ではないか。それがね、他のネイバーが言ってたんだよ、命令を『聞かなくなった』って。返事してくれない君には、ちょっと、荒っぽい方法が似合うよね――拘束具は既に外れている。立位を保てなくなったオマエの行き先は絶対的に、冷たい冷たい床だろう。
 カメラ・アイを閉じなかった。違う。閉じる事を赦されなかった。ゴミみたいに、コック・ローチみたいに、べったりと地面と頬が友になっている。力が入らない。徐々に徐々にエネルギーが、生命力が、理解不能な儘に流れ去っていく。ここでオマエは気付けるのだろうか。カメラ・アイが水にぬれている。いや、これは、内側からあふれる『これ』は――念願だった真実の『なみだ』なのではないか。確かめたい。確かめなければならない、と、如何にかして『しずく』を舐ろうとする。覚めないでくれ、醒めないでくれ、縋るようにして引き攣った全身がおぞましい予感を感じ取った――イルミナは、いったい、どうしたんスかね。レンズを覗き込むようにして己の頭のてっぺんから爪先までを改める。必要なのはメンテナンスか……? そんなものは不要だ。現、オマエの輪郭が、貌が、コードが……欠陥が望んでいるのは……エンゼルケアだ。シュレーディンガーの猫を知っているだろうか。オマエは『死んだ人間の肉』としてプログラムされている。それとも『プログラム』された人間の死んだ肉か――硬直している。死後、硬直している。カメラは眼球と成った……!
 人の皮で作られたハード・カバーが青々と染まっていた場合、きっと、仰天するのは肌触りだ。冷たくて冷たくて、それ故の汗っかきがなんとも正気を喪失させてくる。では、ハード・カバーの本体が、皮の持ち主が起き上がり、跳ねてきたら如何か。嗚呼、失神は免れない。イルミナ、実験は――違うね。贈り物は気に入ってくれたかい? 今はあんまり『考える事も出来ない』だろうけど、たぶん、いつか頭の中もしっかり人間になれるさ。うっすら、ぼんやりとした半分白痴の最中でぺたり、繰られるかのような粘着にオマエは留まる。うん、似合ってる。お似合いだ。符を貼らなくちゃイルミナ・ガードルーンが無くなってしまう。おおきく口を開けて、目をやって、ダラダラと涎……。

  • パッチワーク完了
  • NM名にゃあら
  • 種別SS
  • 納品日2023年05月09日
  • ・イルミナ・ガードルーン(p3p001475
    ※ おまけSS『チキチキマシン』付き

おまけSS『チキチキマシン』

「な……なにするッスか!」
「やめるッス! これ以上なにかしたらゆるさないッスよ!!!」
「ま、待つッス! 待って! お願いッスから、そん……な……ッ!」
「いや……いやッス。イルミナはもう、イルミナをやめたくなッ……」
「くっ……うっ……ッ……」
「……ッ……」
「…………」

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