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SS詳細

悪に堕ちる。嘲笑のために。/Ghost-Laugh

登場人物一覧

クウハ(p3p010695)
あいいろのおもい

・配信動画って半分ラジオだよね
 
 「よぉ親愛なる暇人達よ〜。 今日もゲーム配信配信やっていくぞ〜」

 カメラは大丈夫かと画角を調整、無償分の愛想を振りまいたところで配信スタート。

>わこつ
>待ってた
>[今日のご飯代]LEGEND

「……あのよォ……」

 もはや恒例となった開幕虹スパチャに軽く頭を抱えるが、何度お金の大切さを説いたとしても止まないので礼だけは言って諦める。

>今日は何するんでい?
>乙ゲーはよ

「だからしねェよ。俺は男だぞ。で、今日すんのはこれだ」

 そう言ってクウハは暗い背景に男の横顔が浮かぶシンプルなパッケージを視聴者へと見せつける。

「過去作とか色々あるらしいが……コレからでいいのか?」

 [メタルマシン-フェムス〜ヘル・レセントメント〜]。一人で戦地に潜入してミッションを遂行する隠密アクションゲーム。これは過去作とは違ってオープンワールドの要素が盛り込まれており、プレイヤーによって潜入ルートを自由に選択できるのが大きな特徴だ。

>マップ広いんだよねえ
>あー、確かにクウハ好きそうね
>ダンボールで可愛く隠れて欲しい

「ケッ。隠れんのは哀れな敵さん達だっての」

 自称悪戯幽霊として悪行非道を山程しでかしてきたクウハにとって、"スニーキングミッション"なんて夜道を一人で歩く誰かから財布をカツアゲするのと同じ事。

>ガバって死にそう
>な
>[死亡ダイジェストはよ]REGULAR

「こんな古いゲームでやられねえよ。俺のことを誰だと思ってる」

 カッコいいだとかだろうなと軽く期待しながら聞いてみたクウハだったが、現実はそう甘くない。

>悪い子(笑)
>[ネコチャン]NOVICE
>オカン

 他諸々。実際には視聴者からは9:1程の比率でクウハは可愛い子扱いをされている。

「テメェら……」

>過去動画の自分を参照
>押せばいけそう
>殴れないからぐぬぬってるのほんとカワイイ

「るせェッ、おら、ゲーム開始だ。ってこりゃ……病院か」

『いいですか、落ち着いて聞いてください──』

 主人公は深い怪我を負っていた。それを療養するために辺境の病院に入院しており……数年の時を経て漸く目覚めたところからスタート。経緯や怪我のことを知るたび動揺する主人公だったが、鎮静剤で何とか抑え。暫く時間が経った後、主人公を殺すため病院が襲撃されてしまい、脱出しなければならないとなったのだが……

「……なァ、長くねェ〜?」

 ……寝たきりであった主人公の体は弱り切っており匍匐、中腰、歩きと移行するまでの過程をじわじわと進むしかない。

>チュートリアルも兼ねてるから
>後で好きなだけ暴れちまいな!
>"後で"←最大の懸念事項

「はァ〜……エレベーターは落ちるし他の奴は撃たれても助けねぇし、散々な退院だな」

>窓から落ちてもいいのよ
>もしかしたら話せばわかってくれるかも…

『走れ!』

「んな訳ねぇだろ…っと、やっと走れるのか。銃声怖えしスタコラサッサってな〜♪」

 案内人の掛け声に合わせ後ろから追いかけてくる敵兵達からクウハ逃げ出した。命がらがら階段にたどり着けたので扉を塞ぎ、追っ手を止めたところで小休止。

「さーて、階段まできたし後は入り口まで行って終わりだろ……そうだよな?」

>あと30分ぐらいある
>射撃もスニーキングもまだでしょ
>独り立ちもできてない分際で何をw

「嘘だろ!?ってやべえ、敵来てる置いていくなオイ!」


 

・荒野に一人、馬に乗って双眼鏡を眺めている男は誰でしょう?

 階段からもなんとかデスすることなくクウハは無事にチュートリアルミッションを終ええ、そのままシームレスに次のミッションへ。

「………なぁもしかしてだが」

 この流れはと嫌な予感がするクウハ。パッケージに書いてある"拠点開発"のきょも未だ見ていない。何かムービーを飛ばしたかと心配になるが。

>今ので半分な
>残念だったな!まだ続くよ!

 もちろんこれは仕様であり、クウハの心配は杞憂に過ぎない。そんな考えを推し量ることなくゲームの中の仲間は話をどんどん進めていく。

『相棒が捕らえられている。このままいけば余命は持って三日──』

「しかも時間制限付きかよ!」

 少し面食らったものの実際他と比べてみるとマップは広くないし、病院からの脱出で培った技術を使えばそう長くはかからないのでかなり余裕はある。

>簡単だから頑張って♡
>応援してるわよー

「ああそうかよ、さっさとクリアして進めてやるから覚悟しとけ」

 説明を終えた仲間が去っていき、クウハは遂に自由な操作が許された。早速乗っている馬を駆って、まずは坂道を降って輸送ルート途中の敵拠点を目指す。

「何もねえ荒野だなァ」

 岩を飛び、砂煙を後ろに散らす快適な馬の旅。1キロ程の道のりを加速連打で駆け抜ける。ダートもターフも走れるタフなバディの性能は、さすがゲームといったところか。
 
>鞭打ちすぎだろ
>オープンワールドなんてこんなもんよ
>このあと必死で駆けずり回るミッションあるからお楽しみに

「そりゃ楽しみだなっと、双眼鏡を覗いて偵察、敵の位置をマーキング。へェ、よく出来てるな」

 なんだかんだで素直なクウハは仲間のアドバイス通り大回りをして高台へ。棒立ちで立つ敵兵達を一人ずつ確認していく。

「川の手前に一人、奥に一人、あの家の前に一人か……」

>この村落は建物が多いから影にいることもあるよ
>バカ、言うなってw

「アドバイス助かる。確かにマップを見りゃあ敵の位置書いてんな……」

 渡された端末で開くマップの敵予測円を見てクウハはそう呟いた。

「でもま、まずはあの手前の敵からだな。驚かせてやるよ。ケケケッ♪」

 匍匐で近くの物陰まで移動し、しゃがむ。そのままさらに近づいてマガジンを遠くに投擲して物音を立てれば……

『なんだ?』

 敵無能兵はその物音にホイホイと釣られて確認に向かった。システムに逆らえないとはいえ可哀想な敵。無防備な背中から近づいてCQC、超簡単にテイクダウン。

「チョロいな」

>起こして銃突き付ければ脅せるよ
>尋問しようぜ

「へェ……♪」

 "脅す"。そんな言葉を見てはクウハのいたずらごころは高鳴って、サメのように笑ってしまう。

>怖っ
>楽しそうだなぁ…
> [Ψ( Φ罒Φ)Ψケケケッ]HIGH-QUALITY

「オイ起きろよオッサンよぉ、仲間の位置とかさっさと吐けよ、楽にしてやるからさぁ」

 気絶させた敵を蹴り起こし、背中に銃を突きければ尋問スタート。よわよわザコザコメンタルな敵無能兵は伏せの姿勢のままポロポロと情報を漏らしてしまう。

『縺薙%縺ォ縺ェ縺九∪……縺ゅ◎縺薙↓縺励£繧』

「ほうほ……いや何言ってるかわかんねえよ!」

『!?』

 ただしその情報は聞き取れないものとする。主人公は脳障害で英語以外が聞き取れなくなっているので、プレイヤーにも敵が何を言っているかはわからない。なので腹いせに背中を踏みつけたら再気絶。背中に機械を取り付ければ気球が現れて何処かへと飛ばしていった。

「これ、悪戯に使えそうだな」

>伝統的フルトン回収を悪戯になんて…
>ちょっと楽しそう
>いいぞもっとやれ

 しかし気球を飛ばす行為はよく目立つ。感づいた敵がクウハの方へと近寄ってくる。

>お?ガバか?
>見つかれ!見つかれ!

「いいや、敵の方からのこのこ近づいてきてくれるんだ、丁寧に出迎えてやろうぜ♪」

 確認に来るだろう道の死角にクウハは隠れ、息を潜める。そして何も知らない敵兵(年齢不詳)との距離が1mを切った瞬間、クウハは角から飛び出して敵兵を引っ張った。

「オラァッ!」

 後ろの壁にベシィンッ!と激しい音を立てながらぶつけられ、哀れな敵兵は気絶。ただしゲーム的には無音である。

>死ゾ
>気絶してるだけだからセーフ
>CQC(不殺)

「殺しはしてねェだろ?まだ死んでねぇんだからよ。んじゃ、警備も片付けたところで敵さんの情報でも頂くとしますかねェ♪」

 クウハはそのまま敵の情報局へと忍び込み、情報をゲット。次はこのミッションの本丸、仲間の救出場所へと向かう。



・見つからなければどうということはないし見つかっても逃げればセーフ

「おお、もう夜か。時間経つのは早えなぁ」

>ゲーム内だからね
>すぐ経つよ

 再び馬を駆って一千メートル。クウハは目的の地点まで到達。暗くて偵察しにくいが、それは敵の視界も同じこと。高くから偵察する影には気づかない。

「おーおー沢山だねェ。急ぎのミッションじゃなきゃ丁寧に一人ずつもてなしイジめてやったんだが」

 馬を降りてクウハは闇夜に隠れる。微かなライトと足音、それから丸見えの赤いマーカーを頼りにして敵の背後まで近づく。

『……?』

「ハロー!ここであったが百年目だぜ死ねぇ!」

 手の届く間合いに入った瞬間、クウハは決め台詞と共にその背中を掴んで地面に叩きつける。どう見ても聞いても骨がグキッといってるような気がするが、気絶で済んでいるので大丈夫。

>数年なんだよなぁ…
>もう死ねって言ってんじゃん
>だが不殺だ 

「安心しろ峰打ちだ。さーてと、路地裏まで運んでと……オラァ!」

『──!』

「場所は?宝は?あぁそうだ聞こえないんだったなぁ、ハハッ!」

 闇討ちして、路地裏に運んで、蹴り起こして、話を聞かず、また蹴って。ストリートのチンピラのような所業がなんとも板についている。

>知ってるか……ここ、戦場なんだぜ……
>死にかけの仲間を放っておいて敵で遊ぶプレイヤーの鏡にしてボスの屑

「ハッ、それならお望み通りさっさと助けてやるよ。武器が麻酔銃だけじゃつまらねえ。さっさと進めてロケランとか作るかね」

>えぇ……
>仁義なきロケラン
>ホントに死ぬが???

「背を見せた方が悪いだろ。で、あいつ邪魔だな……眠っとけ」

 暗い中ドラム缶焚き火で暖をとっていた兵士が火の中に突っ込むように眠り、見張りがいなくなった牢屋へとノーアラートでクウハは忍び込んだ。
 
『遅かったじゃないか?』

「急かしといて何だその言い方は……蹴っていいか?」

>ダメだよ
>やめろやめろ

「冗談だよ冗談、後はヘリに向かうだけか」

 大切な仲間を確保したクウハは裏口からこっそりと脱出。無理な戦闘は避けてヘリとの合流地点へと闇の中を一直線に走り抜けた。

「俺このゲーム得意かもなぁ、これならクリアも簡単かァ……っておい、ヘリがどっか行ったぞ」

 しかし天候が悪くなりヘリコプターは移動。背中の仲間は『俺が襲われた時と同じだ』と言い出した。

「イヤーな予感が……」

 そしてさらにムービーが入り、瞬間移動が如きという速さで化け物の姿をした兵士が現れた。

「待て待て何だその武器はかっこいいな俺にも寄越せ!」

>ストーリー進めろ
>使えんことはないぞ

『その霧を抜けてくれ!』

 男の子なクウハ君はそんな化け物兵士に心惹かれるが、どう見ても今の装備で勝てる相手ではない。どうにか逃げられないかと道を探すが。

「……後ろの道は空いてるよな、そっち行くか」

『その先はミッション圏外だ』

「何でだよ!居ない方に進ませろよ!」

 このゲームの仕様上絶対にいる方向へと進まなければならないらしい。ご丁寧に立って並んでクウハを出迎える準備は万端だ。

>馬に乗って逃げろ♡
>大丈夫!逃げときゃ死にはしないから!

「ああもう、死んだらテメェらのせいだからな!」

 馬の後ろに仲間を乗せて、クウハは鞍に跨った。手に汗握るコントローラーのボタンを連打して真正面から突破を狙う……が発見されたところでゆっくりと何もない場所から武器を取り出して馬に乗る二人を狙うムービーが入り一旦ストップ。ヘリまでの徒競走にはヨーイドンがよく似合う。

「うぉぉぉ!!!???」

『GGGGGG!!!』

 馬の全速力に化け物兵士共は銃を乱射しながら追いついてくる。もし止まったらどうなることか。

「クソッ被弾した、本当に逃げられるんだろうな!?」

>まだ死なない
>人間には215本も骨があるのよ
>流れてるのは血だゾ

「走れ走れ走れぇ!こんな奴らと戦ってられるか!」

『GG!GGGG!!』

 来た道を直走り。中国大返しもかくやという見事な遁走劇は、フラグが折れる形で終結した。

『霧が晴れた……』

「よっし、何とか逃げられたな。ヘリ降りてこい」

>チッ
>死んだら面白かったのに

「残念だったな、俺を殺したいなら戦車でも何でも持ってこいよォ♪」

 そう言い残してクウハはヘリへ搭乗。はじめてのミッションは無事、成功に終わったのだった。


  • 悪に堕ちる。嘲笑のために。/Ghost-Laugh完了
  • NM名わけ わかめ
  • 種別SS
  • 納品日2023年04月14日
  • ・クウハ(p3p010695

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