PandoraPartyProject

SS詳細

黒化

登場人物一覧

幽火(p3p010931)
君の為の舞台

 塔――神の怒りに触れた、ヒトサマが崩壊していくサマ。人形遊びに飽きたオコサマが彼等をひっくり返したかの如く、繰り返し、繰り返し、サラダドレッシングを搾りだす。散りばめられた貝殻の塵芥で「普通の人間」を構築する。ダメだ。謂う事を聞かない糞尿の袋など、要らないのだ。細工に細工を重ねて静電気をそそぐ。
 刹那的な混沌、無秩序な逆立ち。
 夢の中に棲んでいた怪物が、ゆらり、愛おしそうな格好で、まどろむ奈落を模倣していた。詐欺師めいた言動を繰り返しながら、されど、騙す相手も、騙される相手もなく、只管に世界だけを対象としていく。それ即ち自らを滅ぼす魔法、魔術の類で在り、何者でも可能な、容易な摩耗の沙汰とも謂えた。進行すれば進行するほどに、何れ、進行は信仰へと到達し、新たな仮面舞踏会の参加者を手招きする。此処が何処なのか、なんて、僕に訊いたところで返事は「はい」か「イエス」のみ。神曲のはじまりからさいごまでを混沌と、淡々と、リズムに乗せられて過ごす。また随分と世の中は「楽しい」もので「愉しませて」くれる。そろそろ日が暮れる頃合いではないか。街灯の真下で外套を剥ぎつつ種と仕掛けを積み重ねる。やあ、お客さん。しばらく待っていてくれないかい? 化粧の「のり」が宜しくないんだよ。ごしごしと、何度も何度も、三月のウサギのように、己の顔面をこすり奪って魅せる。こう謂うのってだいたい強そうな「キャラ」付けが多いと思わないかい? コントロール出来なくなった感情が贋作となって、糞尿の隣人と成り果てて、腐敗したかの如くにこぼれる。それにしても、伽藍洞なオツムに焦がれていたと謂うのに、思考、深くまでも炭化していた。ニグレド、浄化、本質的なカードは悪魔だと理解していての渇望か。混じりっ気のないオマエなど、最早、色欲の罪ではない。故に――逃れる術は無いと頷いていたのだ。さあ、舞台は整った。苔むした歯車に腰を下ろして滅茶苦茶な旋回に身を委ねるとしよう。そうして吐き散らかしたトランプ。最初の数字は何だったのかって? 地面に落ちた時点で消失している。白紙、白紙、白紙白紙白紙……毒蛇が林檎を運んでいる、罠だと気が付かなかった。
 今日の大道芸は想像していた以上に「巧く」成せている。お客さんもいつも以上だ。いや、それにしては『異常』が過ぎている。群がる人影、たかる人影、かたまり、波打つ人の貌。こんなにも人の貌で塗れた事は一度もなかった、と、歯車の上で星のカタチが歪んでいく。目玉だ。この、星のカタチには確かに、目玉が描かれていたと謂うのに、雑に消えていた。まるで何者かが汚れた消しゴムで殺したかの如く。シャープ・ペンシルの頭か尻で、ぐりぐり、ごしごし、美しい詩を冒し、嘲笑うかの如く。僕は軽薄な人間を嫌っているのだろうか、しかし同時に、狡いと思っていたのではないか。彼等、彼女等は、軽薄『そう』な面構えで僕を観てくれている。視ている、見ているんだ、微動だにせず、ゴルゴ―に捕まれた犠牲者のように――鈍くなったものだね、そんな、心にもない科白が脳味噌を掻き乱した。脈動している、呼吸するのが難しい、されど、身体は勝手に披露している……。
 イカレタポジティブ野郎ではないか。筆舌に尽くし難いものに囲まれ、投げられたGOLDの山なんぞ如何でもいいと精神が昂揚している。こんなにも「楽しい」事が在るだなんて知る由もなかった。痴ら々らしい悪魔の輪郭が遭遇と化して時計の針をへし折ってしまう。成程、つまり僕は止まる術を、留まる所以を、意図を失くして終ったと謂うワケかい。回収する事が不可能になった地面のトランプ様が下へ下へと潜っていく。カードこそが夢の世界に棲んでいる怪物の肉片なのだと、ぼんやり、複製する……コピー。僕は阻害されていたのかもしれない。それとも、ヴェールを持ち去られた所為で阻害を落としたのかもしれない。ジャグリングを背景として幾つかのマラカスがこつん、こつん、と、脳天を台無しにしてくれた。如何して、如何して、そんなにも、意図が「ない」フリをするのが大得意なのか。絡み付かれたシナプスがはじけ飛んで数秒、永劫とも想えた真実の証明の為に、僕は、髪の毛をくちゃくちゃにしてみせた――繋がっている。糸で、繋がっている。少女も青年も母親も老紳士も、ありとあらゆる人物の蓋が、糸で「ピン」と伸ばされていた。
 涌いたのは恐怖と好奇心、このふたつはきっと兄弟なのだろう。強大な感情に支配されるが儘、懐から取り出したのは『はさみ』。これで最後の『芸』にしよう、そんな気持ちを舌には載せず、堂々、ホンモノの道化師は宙を断ち切った――墜落するのは宙か、それとも僕達か。がらり、がらりと白い薔薇、造花が、生きていたかの如くに枯れていく。戻れないを以てして御伽噺はおしまいなのかい? それは、それは、残念だね。
 獣の尾を踏んづけた――!

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