笑顔を求めて

登場人物一覧

　雪と共にあった雪莉にとって、それを厭う人々は当たり前だった。
　只でさえ地底という場所での生活を余儀なくされた覇竜の人々にとって寒さは疎まれた。
　僅かな植物を凍えさせてしまうからだ。
　雪莉達の一族は敢えて雪を降らせるようなことはしなかったが、それでも倦厭されたのは事実だろう。

　だから、イレギュラーズとなって世界に羽ばたいた時、雪莉はこの能力を恐れられるのではないかと不安になった。
　世界が広がっても、一人で在らねばならないかもしれないと。
　されど、雪莉が思っていたほど世界は冷たくなかった。
　冷たくなかったというと表現が異なるかもしれないが、雪莉をさほど気にする様子はなかった。
　雪莉にとってそれは心地よい驚きだった。

　疎まれることも、嫌われることもない。
　興味がある子供なんかは目を輝かせ近づいて来るのだ。
　だから、雪莉は子供の頭上に雪を降らせてやる。
　すると子供は満面の笑顔で「すごい！」とはしゃぐのだ。

　雪莉にとってその笑顔は何より求めていたものだった。
　独りぼっちになった雪莉は屈託の無い笑顔と対話を欲していたのだろう。
　だからこれからは積極的に関わっていこう。
　まだ少し怖いけれど、あの笑顔が見られるなら。

　きっと、前へ進めるから。
　こうして雪莉は世界中を旅するようになったのだ。