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一緒に甘いものを
一緒に甘いものを
登場人物一覧
その一報を知った時、遮那は今すぐにでも飛び立たんと取り乱したらしい。
鉄帝の大戦でタイムの生命に関わる情報が入ってきたからだ。
神使が負う宿命は命を賭すべき偉業なのかもしれない。
遮那とて家督を継いだのだから理解はしている。
しかし、それでも。
大切な人が居なくなってしまうのは嫌なのだ。
己の責務を放棄して戦いに駆けつける事が出来たら何れだけよかっただろう。
帝や晴明のように己も神使であればタイム達を手助けする事も出来ただろう。
大切な人達の隣に並び立つ事も出来ぬ身を歯がゆく思う。
だから、タイムが豊穣の地を訪れた時、遮那は一番に駆けつけた。
「タイム……!」
「遮那さん?」
いつもは天香邸に居る遮那を此岸ノ辺で見かけるなんてとタイムは驚く。
随分と大きくなった少年を見上げれば何時もとは違う表情をしていた。
不安げに揺れるその琥珀の瞳は。
初めて会った時のままで。
泣きそうな表情でタイムを見つめていたのだ。
そんな顔をさせてしまうほど、心配を掛けたのだとタイムは眉を下げる。
何か言わんとする遮那の肩を優しく叩いて。
「大丈夫、まだ生きてるわ」
いつも通りのタイムに安堵した遮那は、長い溜息を吐きながらその場にしゃがみ込んだ。
「……心配をしたのだぞ」
「ごめんなさいね」
立ち上がった遮那は気遣うように「甘味処へ寄っていくか」とタイムに手を差し出した。
きっとこれからも。
失う事は慣れなくて――