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小さな思い出
小さな思い出
登場人物一覧
ペイトの村を出てからレオナは様々なものを見聞きした。
世界は想像していたよりも広く、闘争は絶えず何処かで起っている。
十の頃から亜竜狩りに身を投じていたレオナにとっては、狩り場が増えた程度のものだった。
覇竜領域で暮らしていたレオナにとって、人が集まる市場や街は気疲れを起こす。
常に危険と隣り合わせだったから、他人が不用意に近づいて来る街の狭さに辟易するのだ。
特に幻想国や海洋国あたりを歩いて居ると小さな子供が死角から飛び出してくるので危ない。
練達国はもっと狭いと聞くが、行けそうにないとレオナは首を振る。
ともあれレオナも『人』の枠に入る者である。食わねば生きては行けぬもの。
されど、料理に興味も無いから専ら倒した獣の肉を焼くぐらいしか出来ない。
だから時折、街に出ては凝った料理を買ってみるのだ。
レオナには複雑な味は余り分からない。
ジャガイモをふかして塩を振りかけたものを食んで美味いと思うし。
ブルストを焼いて食べても美味いと思う。
「ああ……でも少し焦げがあるほうが美味いな」
レオナは目の前にあるたき火でブルストを炙った。
じんわりと焦げ目が広がり皮が弾ける頃に上げて頬張れば肉汁が口の中に広がる。
「やっぱりこっちの方が美味い」とレオナは僅かに口の端を上げたのだ。