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ペリドットの声
ペリドットの声
登場人物一覧
仄かに感じられる小さな声にシルキィは頭の触覚をピンと立てた。
肌身離さず着けているペリドットのペンダントから声が聞こえたからだ。
「……廻くん?」
「あ、シルキィさんですか? こんばんは。今、大丈夫ですか?」
「うん大丈夫だよぉ」
ペリドットのペンダントを通して聞こえてくる廻の声はまるで傍で彼が話しているように感じる。
「今夜は明煌さんお仕事で出かけてて」
「ふふ……寂しくなっちゃったんだね?」
長く廻と居ると、大人しい彼が結構さみしがり屋なのに気付く。
こうして寂しい時に声を聞きたいと頼りにしてくれるのはシルキィにとって嬉しいこと。
「シルキィさんは明日もお仕事ですか?」
「うん、平日だからねぇ。ローレットの依頼が無いときは保健室の先生なんだよぉ」
すぐ体調を崩す廻も在学中何度もお世話になった。
「また、学校行きたいですね……みんなどうしてるかな」
一線を引いていた廻も少なからず学友が居た。休学中に彼らは一学年先に行ってしまうだろう。
復学した時には知らないクラスメイト達の中に居ることになる。
「はっ、すみません。しんみりしてしまいました」
「ううん。私も廻くんと一緒に学生してみようかな……」
「え?」
「なんちゃって……学生服を着るのは、流石にねぇ」
「可愛いと思いますよ?」
希望ヶ浜の制服を着ているシルキィはとても可愛いだろうと廻は微笑む。
「良くなったら、お花見したいねぇ」
「そうですねぇ。もう桜も咲いてますしね」
左脚に続いて、右脚までも動かなくなったとは廻は言えなかった。
いま、この時だけは未来への希望を共に語りたいから。
シルキィの声を聞いていたいから――