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愛の重さ
登場人物一覧
行方不明になっていたギルバートが帰還しユーディアがローゼンイスタフにやってきた頃。
ヘルムスデリーの騎士たちも故郷から遠征してきていた。
夜も更けた時間にヴィルヘルムはギルバートの部屋へ足を運ぶ。
「酒持って来た」
部屋に入ったヴィルヘルムは机の上に白い万年筆を見つけた。
繊細な花模様が入ったそれは『姫』が贈ったものだろう。ギルバートが選びそうもない。
しばらく談笑をしているとコンコンとドアが叩かれる。
顔を覗かせたのは『姫』ことジュリエットであった。
「あ、ヴィルヘルムさんがいらっしゃってたのですね。お邪魔でしたか?」
「いや、ギルバートがいかに『姫』を大切にしているかという話しをしていただけだ」
「おい止めろ。ジュリエットが困っているだろう」
普段見かけない、ギルバートの気兼ねの無い会話にジュリエットはふわりと笑う。
ギルバートの隣へ座ったジュリエットにヴィルヘルムは視線を上げた。
「こいつは、結構愛が重い」
「待て待て何の話しだヴィルヘルム」
「……はい」
真剣な表情でジュリエットも聞き入る。
「見ての通り好青年だから、帝都へ行けば声を掛けられる事も多い。俺もディムナもそうだ。3人で歩いてるとかなり声を掛けられる。以前、付き合ってた彼女とは最初は上手く行っていたが……ギルバートの愛が重くてな。結局、音信不通になり……ようやく連絡が来たと思ったら別れると言ってきた」
「そうなんですか」
「ああ。愛が重いからな……逃げるなら今の内だぞ『姫』さん。そして、俺はそろそろ退散する」
ヴィルヘルムの後ろにはギルバートの怒りの形相が見えた。
親友を追い出し振り返ったギルバートは少し頬を染めながらジュリエットの横へ座る。
「私は……逃げませんから」
左手の薬指に光る指輪に触れながらジュリエットは優しく微笑んだ。
大切な人だから、失いたくないと思ってしまう。
それ故の愛の重さ。