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共にあればこそ
登場人物一覧
名前:秦・花明(しん・ふぁみん)
種族:亜竜種
年齢:52歳
性別:男性
一人称:私
二人称:お前、~殿
口調:だ、だろ、だろうな
特徴:秦家当主、亜竜集落フリアノン出身
設定:
亜竜集落フリアノンの秦家の当主。秦・鈴花の父。亡き里長である珱・珠珀の幼馴染み。
現里長の珱・琉珂の両親である珠珀と琉維とは幼少期からの付き合いであり、特に琉維の生家とは交流が深かったため何かと世話を焼いていた。
琉維にとっては「優しくて世話をして焼いてくれる良いお兄ちゃん」であった。珠珀にも「花兄」と呼ばれ親しまれていた。
だが、珠珀が里長、琉維がその妻となった時に一定の距離を置いたため親しかったことは娘である鈴花にも告げて居ない。
それでも鈴花と琉珂が仲良くしている様子を見ると昔の自身達を重ねずに居られないのだが。
右目が見えて居らず、基本的な生活は左目と妻に頼り切っている。
鈴花には「食物庫で物品管理ばっかしてるから目が悪くなった」と説明しているが、右目の上に走った傷を考えれば信じろというのも無理な相談だ。
……と、言うのも鈴花とて11歳の頃の話しだ。詳細は分からずとも何となくでも『何かが起った』事は分かって居た。
花明の妻(鈴花の母)は花明が怪我を負ったその日を克明に覚えて居る。彼が頑なに口を開かなかったことも、共に出掛けたはずの珠珀と琉維が帰らなかったことも。
だが、花明は他言を赦さなかった。口にしてしまうことも悍ましいことであったからだろう。
鈴花が琉珂と共にピュニシオンの森へと向かうと告げた時、父は酷く狼狽することだろう。
あの日、珠珀達と共にピュニシオンの森に視察に出掛けた事を。食物の確認のために同行した花明はあの日――……
「鈴花、お前が琉珂に着いて森に行く事になるとは思って居なかった。
……まるであの日の私は珠珀のようだ。琉維は勢いよく走っていくから静かにするように促すのも骨が折れた」
「私はこの目だ。森に立ち入ることは恐ろしくて出来やしない。
だが、鈴花――あの人に……『里おじさま』に逢ったなら、伝えて欲しいことがある。貴方一人が背負うモノではない、と」
鈴花にとっては理解出来ない伝言に首を傾げることになるだろう。
花明は『あの日』から後悔している。ずっと、ずっと。誰にも話せぬあの夕暮れの出来事を。