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ようこそモミジーヌの館へ
ようこそモミジーヌの館へ
登場人物一覧
「いらっしゃい。ここはモミジーヌの館。迷える子羊たちの安寧と休息の場所」
春の兆しが芽吹く季節、預安はモミジーヌ夫人の館へ訪れていた。
「初めまして標・預安だよ」
「ええ、初めまして……ふふ可愛らしい挨拶ね。緊張しているのかしら?」
豪奢なソファに案内された預安は、お尻が沈み込む感触に僅か驚く。
ローテーブルの上に置かれた紅茶からは花の香りが広がっていた。
「薔薇の香りを付けているの。お口に合うといいんだけど」
預安は一口紅茶を含み、口の中に広がる香りをかみしめる。
「そういえば、あなた……随分と可愛らしい恰好をしているのね」
「あ……これはっ」
恥ずかしげに頬を染める預安は令嬢風のドレスを身に纏っていた。
見た目は可憐で儚げな美少女である。
「とてもよく似合っているわよ」
ふんわりと微笑むモミジーヌ夫人に預安は一層顔を紅くする。
周りから見ても柔らかなドレープのドレスは似合っているのであろう。
だが、預安は『男の子』であった。
今は訳あってドレスを着ているが『男の子』である。
「その……依頼があって」
「ええ、ええ。お仕事ならば仕方ないものね」
モミジーヌ夫人が朗らかな笑みと共に「可愛いわ」と零した。
「……えと、その」
何だか今すぐ逃げ出したいような恥ずかしさが預安を襲う。
春の兆し降り注ぐその日。
預安は『男の子』である自分と、女装の意味を深く考える事となった。